世界中の人間が菜食主義者・ベジタリアンになると何が起きるのか?
by Gustavo Peres
健康・道徳・宗教的などの理由から肉を食べない菜食主義の人が増えてきていますが、「もし世界中の人々が菜食主義者・ベジタリアンになったら、どんな変化が起こるのか?」ということを解説したムービーが「What If The World Went Vegetarian?」です。人が「肉を食べない」という選択をすることで地球規模の大きな変化が起こることがよくわかるムービーとなっています。
What If The World Went Vegetarian? - YouTube
もし地球上の人間がみんなベジタリアンになったら、地球にはどんな影響があるでしょうか?
ベジタリアンの割合は人口全体から見るととても少なく、アメリカとカナダでは4~5%ほどにとどまります。一方で、宗教を理由に肉食を避けることが多いインドは人口の30%がベジタリアンです。
地球上に存在する多くの人は肉を食べるため、現在、家畜として200億羽の鶏、15億頭の牛、10億以上の羊、10億近くの豚が存在します。
もし地球上の人間がみんなベジタリアンになったら、これらの家畜は消えます。では、家畜が消えると何が起こるでしょうか?
家畜を育てるためには多くの土地が必要。現在はアフリカ大陸の大きさに等しい、3300万平方キロメートルという広大な土地が家畜を育てるための牧草地として利用されており……
さらに、家畜の飼料となる穀物を育てるための土地も存在します。
家畜が世界から消えると、今ある牧草地は作物を育てるのに向いていないので放っておくと砂漠化する可能性があります。
ただし、人間が土を豊かにしてやることによって森や草原に変えることも可能です。
家畜のために使われていた土地に森ができると、地球環境が変化します。牧畜は地球温暖化の理由の1つだと考えられていますが、木は二酸化炭素を吸収するため、木が増えると地球上の二酸化炭素が減少して地球温暖化の進行を抑えることが可能。
また、牛など反芻動物の出すげっぷやおならに含まれるメタンガスは、二酸化炭素の25倍も温室効果があると言われています。この点、家畜が世界から消えるとメタンガスの発生量も減少。
森林の増加やメタンガスの減少を総合してみると、家畜がいなくなれば15%も温室効果ガスを削減できるそうです。これは地球上から飛行機・電車・車をなくすよりも大きな効果で、科学者の中には温暖化に歯止めをかけるための戦略として「肉食を減らす」という方法を提唱している人も多くいます。
また、地球全体における水の消費のうち70%が農業に利用されています。例えば牛肉1kgのために使われる水の量は1万5000リットル。
豚肉の場合は6000リットル。
鶏肉の場合は4000リットルです。
植物になると利用される水の量はぐんと減り、シリアルに使われる穀物は1600リットル。
果物の場合は900リットル。
葉物野菜について言えば1kgあたり300リットルの水の消費ですみます。
1キロカロリーあたりの水の比率に置き換えると、お肉1kgに含まれる水の量は果物5kg、野菜7kg、穀物20kgに相当するとのこと。
では、地球上の人々がベジタリアンになることで生まれるデメリットは何でしょうか。
まず、家畜の副産物であったレザーや動物の脂を使った化粧品などは、これまでのように安価でなくなります。
さらに大豆などより多くの作物が必要になってくるので、作物を育てる土地が必要です。そのため、家畜がいなくなって生まれる土地は自然状態に戻るのではなく、多くが農耕に使われるはず。
また、家畜によって生計を立てている農家は現在10億人いると言われており、多くは発展途上国の農家や小規模農家です。これらの人々は家畜がいなくなることで農耕に転向したり、牛乳や卵の出荷に専念したりなど、変化を余儀なくされます。
各国では徐々にベジタリアンが増加していますが、一方で、実は世界では全く逆の動きも起こっています。インドや中国など人口の多い国が裕福になることで、肉の消費が増えてきているのです。そのため、他の国で肉の消費が減っても、地球全体で見ると肉の消費は増えているのが現状となっています。
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