アーケードゲームのフォントデザインをプロのフォントデザイナーが解説するムービーが公開中

「スペースインベーダー」や「パックマン」など、古いアーケードゲームは容量節約のため、8×8マスのグリッド上に表現されたビットマップフォントが使用されていました。アーケードゲームのフォントがどのようにデザインされていたのかを、Monotypeのフォントデザイナーである大曲都市氏が解説するムービーが公開されています。
The 8-bit arcade font, deconstructed - YouTube

フォントのデザインは、曲線などによって個性が出され、読みやすさを最優先にデザインされています。

しかし、1970年~1990年代のアーケードゲームで使用されていたフォントは勝手が違っていました。

データの量を節約するため、8×8マス以内にデザインしなければならないという制約だけでなく、読みやすさ、独創性も考慮する必要があったとのこと。

ムービー中でフォントを解説している大曲都市氏は、数多くのアーケードゲーム用フォントを手掛けたデザイナーです。

過去には「タイムパイロット'84」などのゲームで使用されたフォントを作成しました。

また、大曲氏がアーケードゲームのフォントデザインを収集、考察した著書「アーケードゲーム・タイポグラフィ ビットマップ書体の世界」も出版されています。

本の中身はこんな感じ。

また、1970年~1990年代のアーケードゲームでは、8×8マスでデザインされていたのはフォントだけでなく……

車やエイリアン、宇宙船、ロボットなども8×8マス上にデザインされていました。

アーケードゲームのフォントは数多くありますが、中でも1976年に登場したSprint2などに使用されていたフォントはかなり初期のアーケードゲーム用フォントです。

Sprint2のフォントは、同年に登場した「Quiz Show」というアーケードゲームで使用されたフォントと同じもの。クイズショーはクイズを出題するゲームだったので、アルファベット26文字と数字10文字がすべて作成されていました。

Quiz ShowやSprint2などで使われたフォントは、文字ごとの幅が同じモノスペースフォントと呼ばれるフォントです。

また、Quiz Showのフォントは、それぞれの文字に間隔を設けるため、上側と右側に1マス分空きを設けてデザインされました。

さらに、文字の1画あたりの横幅は2マス。

縦幅は1マスになるようデザインされています。

また、Quiz Showのフォントでは、8のデザインにある工夫がされています。1画あたりの横幅が2マス、縦幅が1マスのルールで8をデザインすると、以下のようなデザインになりますが……

カリグラフィーを意識し、以下の青い部分が太く見えるよう8がデザインされたとのこと。

結果、8のフォントは以下のデザインが採用されました。

また、O(オー)と0(ゼロ)の描き分けにも注意が払われています。左側のO(オー)は線対称かつ点対称なデザイン、右側の0(ゼロ)は点対称なデザインが採用されています。

アルファベットの小文字フォントのデザインは、1983年に登場したゲーム、フォゾンや……

同年に登場したロックンロープなどから作成され始めました。

なお、大曲氏によると、ロックンロープのゲーム中では小文字のフォントは使用されておらず、未使用の内部データとして小文字フォントが存在していたとのこと。

しかも、ロックンロープ内に残っていたフォントのデザインには少々問題があると大曲氏は述べています。例えばb・dはa・c・eに比べて文字が小さく見え、サイズのバランスが悪くなっています。

大曲氏はg・i・tにも問題があると指摘。

g・i・tは、アセンダーとディセンダーがうまく表現できておらず……

例えばgは、他の文字と比較すると、位置がやや上寄りになってしまっているとのこと。

小文字のデザインにおいては、マーブルマッドネスで使用されたフォントのデザインが優れていると大曲氏は述べています。

1980年代以降は、アーケードゲームの性能も徐々に進化し、表現方法が増えていくにつれ、複数の色が使用されたフォントや、影、枠などの特徴が加えられたフォントが増えていきました。

数あるフォントの中でも大曲氏が「お気に入り」だと述べるのが、Sky Foxで使用されたフォント。Sky Foxは日本ではエクセライザーというタイトルで登場しています。

Sky Foxでは筆記体のような特徴のあるフォントが使用されていました。

大曲氏は「グレーの使い方が素晴らしい」とコメントしており、グレーを使うことで、文字がより細く見えるよう工夫されているとのこと。

1970年~1990年代のアーケードゲームには、技術的な制約があったからこそ、8×8マスのグリッドで多種多様なフォントがデザインされてきました。

「非常に小さなグリッドですが、可能性は無限大です」と大曲氏は語っています。

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