ゲーム

打ち捨てられたレトロなアーケードゲームの救出に魂を燃やす男たちの物語


廃虚と化したレジャー施設や倉庫の奥に眠るアーケードゲームの筐体(きょうたい)は、持ち主にとってはただのガラクタでもレトロなアーケードゲームマニアたちにとっては宝の山。そんなマニアたちがアーケードゲームを発掘する「アーケードレイド」について、イギリスのアーケードゲーム専門サイトThe Arcade Bloggerがまとめています。

The Arcade Blogger By Tony Temple
https://arcadeblogger.com/

◆老アーケードゲーマーの遺品
スコットランドのアバディーンシャーに住む元石油採掘エンジニアのピート・デイヴィス氏は、アーケードゲームに特化したフォーラムUKVACの最初期のメンバーで、フォーラムでは「Invadar」とのハンドルネームで活動していました。アーケードゲームの技術面に造詣が深いデイヴィス氏は、生き字引として尊敬を集めていたとのこと。


そのため、2015年にデイヴィス氏が亡くなったという知らせを受けて、UKVACのメンバーは深く悲しみました。そして、それと同時に持ち上がったのが、デイヴィス氏のコレクションがどうなるかという問題です。デイヴィス氏の息子がアーケードゲームをオークションに出品していることに気づいたフォーラムのメンバーは、すぐさまデイヴィス氏の家族に連絡をするとともに、「どうすれば故人の遺志を最大限に尊重することができるのか?」について協議しました。

その結果、デイヴィス氏のコレクションは、「長年デイヴィス氏が懇意にしていたアーケードゲームコミュニティが公正な価格で引き取る」という方向で話がまとまったとのこと。そこで、まず2人の先遣隊がデイヴィス氏の家を訪問してコレクションをリストアップ。その後、10人のメンバーがバンやトラックを運転してコレクションの回収に向かいました。


ユニバーサルのコスミックエイリアンや……


タイトーのズンズンブロックなどが発掘されました。


筐体の一部は劣化がひどかったものの……


全体としては素晴らしい状態だったとのこと。


こうして、老アーケードゲーマーが愛したコレクションが、無事アーケードゲームコミュニティに還元されました。回収に向かったメンバーには、デイヴィス氏の家族から無尽蔵の紅茶と大量のフィッシュ&チップスが振る舞われたとのことです。


この時のアーケード・レイドで発掘された筐体や部品は、合計で63点でした。クリックすると、大きな画像でリストを見ることができます。


◆豪華客船デューク・オブ・ランカスター号からの救出
豪華客船デューク・オブ・ランカスター号が北アイルランドの首府ベルファストで建造されたのは、1955年のこと。多くの持ち主を転々とし、旅客船や自動車運搬船として活躍したデューク・オブ・ランカスター号は、1979年8月に退役。その後は陸に固定され、レジャー施設「The Fun Ship」として人々を楽しませました。


その後、法的な問題により施設が閉鎖されると、デューク・オブ・ランカスター号は解体されることもなく放置されました。そんな老朽船が再び脚光を浴びることになったのは、2009年に廃虚愛好家のコミュニティ28DaysLaterにアップロードされた船内の写真がきっかけです。


レジャー施設時代に運び込まれたアーケードゲームが、手つかずのまま残されていることに気づいたUKVACのOliver Moazzezi氏は、デューク・オブ・ランカスター号が眠る港街Llanerch-Y-Morの郵便局や地元の地方議会に連絡を取り、所有者を探しました。しかし、所有者のジョン・ローリー氏と連絡が取れたのは、捜索を開始してから8カ月後の2011年1月のことでした。

2011年2月に2人の仲間と共にデューク・オブ・ランカスター号を訪れたMoazzezi氏は、その時のことを「これだけのゲームが30年間も人目につかずに存在していたなんて、とても信じられませんでした。そこにあったゲームたちは、自分たちの運命も知らず、いつまたプレーしてもらえるのかと自問しながら、来る日も来る日もここでじっとしていたわけです」と述懐しています。


さっそく商談に入ったMoazzezi氏ですが、他の利害関係者が貴重なコレクションの存在を嗅ぎつけていた上に、売り手が法外な価格を提示したため、8カ月にも及ぶ交渉の末断念。しかし、結局買い手が見つからなかったらしく、交渉決裂から4カ月たってからMoazzezi氏のもとに「売り手が市場で買い手を募っている」という情報が届きます。Moazzezi氏は半ば脊髄反射で売り手に電話して、商談をまとめました。Moazzezi氏に直接連絡が来なかったのは、売り手がMoazzezi氏の連絡先をなくしてしまったからだとのことです。

デューク・オブ・ランカスター号がメンテナンス作業を控えていたため、売り手がMoazzezi氏に与えた期間はわずか10日間。Moazzezi氏は急いで運搬用のバンや搬出作業用のクレーンを手配して、15人の仲間とともにデューク・オブ・ランカスター号に集結しました。


誰かが船の窓枠を盗んでいたため、一部の筐体が水浸しになるというトラブルに見舞われたものの……


搬出作業は順調に進みました。


こうして、遺棄された船の中で30年近くほこりをかぶっていたアーケードゲームは、再び日の目を見ることが出来ました。


今回のアーケード・レイドで救出された筐体は、50点以上にも及びます。


◆海を越えて片道1000kmを踏破したアーケード・レイド
イギリスに住むアーケードゲームコレクターのトニー・テンプル氏が、「良くも悪くも記憶に残るアーケード・レイド」だと語るのは、2017年9月の出来事です。きっかけは、イギリス人女性から「フランス西部にある元商業施設を購入したのですが……」と相談を受けたことでした。フランスに出向いて物件を見学した女性は、そこにアーケードゲームの筐体がぎっしりと保管されているのを目の当たりにして、テンプル氏にその回収を依頼しました。

さすがにドーバー海峡を越えるのには尻込みしたテンプル氏ですが、女性からアーケードゲームの写真を見せられると「行くしかない」と決意したとこと。


テンプル氏ら10人のコレクターと5台のトラックは、英仏海峡トンネルをくぐり一路フランスへ。


現場に到着してみると、そこにあった建物は当初聞かされていたよりはるかに状態が悪く、倒壊寸前でした。上を見上げると、屋根の穴から空が見えたほどだとのことです。


2階の床は崩落し吹き抜け状態になっています。


25年以上放置されたサン電子のスピーク&レスキューの隣には、フランスのゲーム会社JeutelのGrand Crashという、フランスならではのレア筐体がありました。手前の赤い柱は崩壊した柱の代わりに取り付けられた物ですが、ビール箱の上に設置されているので用をなしていません。


そのため、2階には一度に1人しか立ち入らないようにして、慎重に搬出作業を行いました。


テンプル氏が注目した筐体の1つがAtariのBattlezoneです。コントロールパネルには別のアーケードゲームAsteroidsのものらしいボタンが取り付けられており、何らかの改造が施されている模様だとのこと。


約30年前のものとは思えない程の美品のVideo Pinballや……


Midway GamesのM-4


セガのスペースシップもゲット。


しかし、この日の発見の中で最もテンプル氏を喜ばせたのが、セガのジェットロケットです。テンプル氏にとっては思い入れのあるゲームなようで、後で実際に稼働することが確認できたときの喜びはひとしおだったとのことです。


時間不足や安全のため、運び出せなかった物もありましたが、全体としては実り多いアーケード・レイドになりました。


◆日本でのアーケード・レイド
海外のアーケードゲームの筐体は、木材で作られていることがほとんどですが、1980年代の日本で流行したプラスチック製の筐体は、海外のコレクターから「キャンディ」と呼ばれています。


日本でアーケード・レイドを行ったのは、アメリカ人のアレックス・マイヤーズ氏。ガールフレンドの祖母が台湾で不動産を営んでいるというマイヤーズ氏は、ガールフレンドから千葉県のとある古いアミューズメント施設についての話を聞かされます。さっそく現地を訪れたマイヤーズ氏を待っていたのが、セガの汎用筐体エアロシティ49台とアストロシティ6台、ナムコの筐体6台、ジャレコのポニーマーク2が1台の、合計62台でした。


歓楽街の中心にあったアミューズメント施設だけあって、麻雀ゲームや……


成人向けゲームが多く発見されたとのこと。


ストリートファイターZERO2など、普通の格闘ゲームもありました。


施設内にあった筐体をまるごと引き取ったマイヤーズ氏は、筐体を売ったお金をガールフレンドとその家族と山分けにしたとのことです。


◆チェコ共和国でのアーケード・レイド
イギリスから遠く離れたチェコ共和国でのアーケード・レイドについて情報を寄せたのは、プラハから西に20kmの街ウンホストにあるアーケード博物館の館長Jan Orna氏。Orna氏は、古い銀鉱山の町プシーブラムにレトロなアーケードゲームが眠っているという情報を聞きつけて、4人の仲間とともに現地に赴きました。

発見されたのは、コナミのジャイラス、任天堂のドンキーコング3、ナムコのディグダグに……


スーパーマリオブラザーズなどなど。


筐体はどれも分厚いほこりにまみれていましたが……


Orna氏の手によって見事に復元され、博物館に並びました。


The Arcade Bloggerのアーケード・レイドのページには、ほかにも多くのアーケード・レイドの記事が掲載されているので、気になった人はチェックしてみて下さい。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
無料でアーケードゲームがプレイできるウェブサービス「Internet Arcade」に新たに1100種類以上のゲームが追加される - GIGAZINE

1970~90年代のレトロなアーケードゲームがブラウザでプレイし放題な「The Internet Arcade」 - GIGAZINE

懐かしのレトロゲームを手のひらサイズのアーケードゲームで楽しめる体験会レポート - GIGAZINE

無料で2500本以上ものMS-DOSの名作ゲームがブラウザからプレイ可能に、インターネットアーカイブが公開 - GIGAZINE

月600円で追加課金なし・プレイし放題な「Apple Arcade」のゲームタイトル一覧まとめ - GIGAZINE

3万円台で購入できる高さ1.2メートルの家庭用アーケードゲーム機「Arcade1Up」 - GIGAZINE

Nintendo Switchを使って実際にプレイ可能なミニアーケードゲーム機を作成した猛者が登場 - GIGAZINE

社会主義時代の旧ソ連でプレイされていた軍隊開発のアーケードゲームたち - GIGAZINE

無料で241種類ものPCゲームのソースコードを見ることができる「Game Source Code Collection」 - GIGAZINE

in ゲーム, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.