新型コロナウイルスの流行による旅客便削減で「航空貨物の運賃」が高騰している
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、世界各国で渡航制限や都市封鎖など人々の移動を抑制する措置が執られています。これに伴って航空機を利用する観光客やビジネスマンが大幅に減少していますが、一方で航空貨物の運賃が急激に上昇していると報じられました。
Air freight rates skyrocket amid passenger flight cuts, Chinese factory restarts - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-airlines-freight/air-freight-rates-skyrocket-amid-passenger-flight-cuts-chinese-factory-restarts-idUSKBN20Y062
Air freight prices jump ‘by more than a third’ as airlines use passenger space to carry cargo - The Institute of Export and International Trade
https://www.export.org.uk/news/498048/Air-freight-prices-jump-by-more-than-a-third-as-airlines-use-passenger-space-to-carry-cargo.htm
‘Absolutely Crazy’ Air Cargo Fees Highlight Supply-Chain Squeeze - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-03-30/-absolutely-crazy-air-cargo-fees-highlight-supply-chain-squeeze
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う海外渡航の自粛や禁止により、航空各社はアメリカ同時多発テロ事件(9.11)より大きな損害を受けていると伝えられています。渡航需要の減少から航空便の数は大幅に削減され、一時的に多くの従業員を解雇する決断を下す航空会社も現れているとのこと。
「航空業界にとって新型コロナウイルスによる損害は9.11よりもひどい」として各国が航空業界への支援を表明 - GIGAZINE
渡航客減少に伴う航空便の減少は、航空貨物の輸送にも大きな影響を及ぼしているとのこと。全世界における航空貨物の半分は専用の貨物便ではなく、旅客機の荷物室に積載されて世界中に運ばれています。しかし、旅客機の運行が減少したことによって、旅客機と共に輸送できる航空貨物の量が大幅に少なくなってしまいました。運送会社のAgility Logisticsは、2月に発生した旅客便の減少に伴って、中国の航空貨物を輸送する能力は39%も減ったと述べています。
輸送能力の減少に伴って、航空各社は本来であれば乗客が座っているスペースにも貨物を積載し、貨物の輸送能力を増やすといった努力を行っています。エールフランス-KLM-マーティンエアーカーゴ、ルフトハンザドイツ航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、キャセイパシフィック航空などの航空各社は、医療用品を含む優先貨物を客席や収納スペースに積載して、最大限の貨物を輸送しているそうです。
しかし、航空各社による努力にもかかわらず、輸送可能な容量の減少は貨物運賃の値上げを引き起こしています。国際航空貨物の価格情報を提供するTAC Indexによると、上海浦東国際空港からロンドン・ヒースロー空港への航空貨物輸送価格は、2020年3月下旬の1週間で35.2%も上昇したとのこと。
旅客需要の崩壊に伴う航空貨物運賃の上昇はこれまでに経験したことがないほどだそうで、もはや1時間ごとに航空運賃が激しく変化する状況だとのこと。TAC Indexのデータを基に作成された以下のグラフでは、2019年10月7日の時点を基準にして航空貨物運賃の上下幅(%)を示しており、青色の線が上海から北アメリカ、緑色が上海からヨーロッパ、赤色が香港から北アメリカ、黒色が香港からヨーロッパへの航空貨物運賃となっています。グラフからは、2019年10月7日から11月ごろまで航空貨物運賃が上昇し、2月下旬にかけて緩やかに下落していることが読み取れます。しかし、世界中で新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、旅客便が減少し始めた2月末から急激に運賃が上昇。中でも上海からアメリカやヨーロッパへ向かう便は、2019年10月7日の時点と比較して60%以上も航空貨物運賃が上昇していることがわかります。
また、通常の貨物便だけでなく、航空貨物を輸送するチャーター機の価格も大幅に上昇しています。物流企業のPacific Airで会長を務めるAnthony Lau氏は3月27日のインタビューで、「チャーター機の価格は4~6週間前まで30万ドル(約3200万円)未満でしたが、過去数日では60万ドル(約6500万円)~80万ドル(約8600万円)まで上昇しました」とコメント。「これは絶対にクレイジーです」と、Lau氏は急激な価格上昇について苦言を呈しています。
・関連記事
「航空業界にとって新型コロナウイルスによる損害は9.11よりもひどい」として各国が航空業界への支援を表明 - GIGAZINE
新型コロナウイルス流行で「航空券の変更手数料無料」と広告しつつもユナイテッド航空は倍額のチケットを表示しているという指摘 - GIGAZINE
新型コロナウイルスの流行を空港での検査がどれほど防ぎ遅らせることができるかを可視化するとこうなる - GIGAZINE
新型コロナウイルスを防ぐための渡航制限は見直す時期に来ている - GIGAZINE
新型コロナウイルスの影響で自転車に乗る人が急増したことが判明 - GIGAZINE
トランプ大統領が新型コロナウイルス対策のため「ヨーロッパからの渡航を30日間停止する」と発表、株価は大きく下落 - GIGAZINE
新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが「家庭内暴力の増加」を招くという指摘 - GIGAZINE
・関連コンテンツ