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「航空業界にとって新型コロナウイルスによる損害は9.11よりもひどい」として各国が航空業界への支援を表明


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に広まるにつれて、各国では海外への渡航を自粛したり規制したりする動きが強まっています。こうした渡航の減少によって航空会社は大きな損害を受けており、各国政府は航空会社に対する支援を表明しています。

White House seeks to pass coronavirus aid, including for airlines and Boeing, 'very quickly'
https://www.cnbc.com/2020/03/17/us-airlines-rally-after-mnuchin-seeks-to-pass-coronavirus-aid-very-quickly.html

'Worse than 9/11': Coronavirus threatens global airline industry
https://techxplore.com/news/2020-03-worse-coronavirus-threatens-global-airline.html


アメリカ政府は新型コロナウイルス感染症による景気失速を受けた経済対策として、8500億ドル(約91兆円)規模の予算を議会に求めていると報じられています。この動きに関連して、一連の自粛によって大きな損害を受けている航空業界は、政府に対して500億ドル(約5兆4000億円)規模の支援を求めているとのこと。

トランプ政権でアメリカ合衆国財務長官を務めるスティーブン・ムニューシン氏は、「新型コロナウイルス感染症による被害はアメリカ同時多発テロ事件(9.11)よりひどいものです。航空業界はほとんど停止状態です」と述べています。

新型コロナウイルスの感染拡大により大きな損害が出ているアメリカの航空産業に対し、トランプ大統領は「私たちは航空会社を100%支援するつもりです。今回の被害は彼らのせいではありません」「これは誰かの失敗というわけではなく、私たちは航空会社を支援する立場にあります」とトランプ大統領はコメントしています。トランプ大統領は資金繰りの懸念から株価が急落しているボーイングについても援助を表明し、「私たちはボーイングを守らねばなりません」と訴えました。

by Liam Allport

新型コロナウイルスの感染拡大が続くヨーロッパでも航空業界へのダメージは深刻であり、ベルギーに拠点を置くブリュッセル航空は3月17日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要減少を受けて、3月21日から4月19日までの約1カ月にわたって全路線の運行を取り止めることを決定。また、ブリュッセル航空の親会社であるルフトハンザドイツ航空も、長距離便の90%と近距離便の80%を運航停止するなど、経営へのダメージを最小限に抑える対策に乗り出しています。

スカンジナビア航空は「フライトの需要は事実上存在しなくなった」と述べて、3月16日以降に予定されていたフライトの大部分を運航しないことを決定しました。一時的な措置として、全従業員の90%に当たる最大1万人の従業員の削減を余儀なくされているとのこと。この動きに対し、スカンジナビア航空の大株主であるスウェーデンとデンマークは、総額2億7500万ユーロ(約320億円)の資金を貸し付けることを発表。デンマークのNicolas Wammen財務大臣は、「スカンジナビア航空はスカンジナビア半島とデンマークの両方のアクセシビリティにとって、非常に重要です。また、雇用・ビジネス・経済全体にも影響が拡張しています」とコメントしました。

ロシアでは連邦航空輸送局(RosAviation)のAlexander Neradko局長が、中国へのフライトが停止されたことで航空会社が打撃を受けていると指摘し、「厳しい財政状況にある航空会社は破産のリスクが高まっています」とコメント。ロシア政府の広報担当者であるDmitry Peskov氏は、「政府は航空会社を支援する方法を積極的に議論しています」と述べました。


さらに、ヨーロッパから遠く離れたオーストラリアも、自国民を含む全ての入国者に対して14日間の自己隔離措置を義務づけることを決定し、海外への全ての渡航に関して警戒レベルを最大の「渡航禁止」に引き上げるなど、積極的な閉鎖措置を実施。これを受けてオーストラリアの大手航空会社であるカンタス航空は、国際線の輸送能力を90%削減することを発表しています。

豪カンタス、国際線9割削減 新型コロナで(写真=ロイター) :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56894990X10C20A3FFE000/


国際航空運送協会(IATA)のエコノミストであるブライアン・ピアース氏は、3月上旬にIATAが行った「新型コロナウイルスによる航空業界への損害額は1130億ドル(約12兆円)」という試算について、低く見積もりすぎていたと考えています。「私たちが調査した航空会社のうち75%は、固定費を支払うための現金資産が3カ月分しかありません」と述べており、フライトの需要減が続くほど航空会社が倒産するリスクは高まるとのこと。

IATAのアレクサンドル・ドジュニアック事務局長は、「接続性は非常に重要です」と語り、国際社会にとって航空産業がなくてはならないものであると強調。「世界は新型コロナウイルスの危機を乗り越えるでしょう。世界が再び機能する時には、航空輸送部門も機能している必要があります」と述べ、世界が落ち着きを取り戻す時まで航空網を維持し続けなくてはならないと訴えています。

また、航空会社だけでなく各国の空港も危機に瀕しているとのことで、国際空港評議会(ACI)ヨーロッパは、空港が多くの収益を失いつつも高額な固定費を支払う必要があると述べています。ACIヨーロッパのJost Lammers会長はEUに対して緊急の財政支援を求める書面を提出し、「緊急資金は航空会社に対して検討されている資金と同様の条件下で利用できる必要があります」と主張しました。

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in 乗り物, Posted by log1h_ik

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