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株式市場の取り引きが強制中断される「サーキットブレーカー」とは一体何なのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大による混乱により、世界各国の株式市場は下落が続いています。アメリカ株式市場でも、2020年3月9日と12日には代表的な株価指数であるS&P 500が急落した結果、「サーキットブレーカー」というシステムが発動して株式市場の取り引きが一時的に中断されました。近ごろ耳にするようになったものの、依然として馴染みのない言葉であるサーキットブレーカーとは何なのか、投資家向けニュースサイトのInvestopediaが解説しています。

Circuit Breaker Definition
https://www.investopedia.com/terms/c/circuitbreaker.asp

新型コロナウイルス感染症に対する懸念から、各国では企業がオフィスや工場の稼働を停止したり、業界のカンファレンスや展示会が中止されたりするといった経済活動への影響が出ており、中には旅行客の減少などから倒産に追い込まれる企業も現れています。また、イタリアでは全土封鎖が実施され、アメリカはヨーロッパからの入国を一時停止するなど、人の移動を制限する動きもみられます。

「新型コロナウイルスが景気後退の引き金となる可能性」についても指摘されるなど、企業や株式トレーダーにも懸念が広まっていました。

新型コロナウイルスが景気後退の引き金となる危険性はあるのか? - GIGAZINE


そして2020年3月9日の朝、S&P 500の下落が取り引き開始時から7%に達したため、自動的な取引停止システムであるサーキットブレーカーが発動。およそ15分間にわたって全ての株式売買が停止されました。

NYダウ一時2000ドル超安 寄り付き直後に売買停止措置発動 (写真=AP) :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56593930Z00C20A3MM8000/


さらに、同じ週の3月12日にも再びサーキットブレーカーが発動しました。ダウ平均株価の下落は9.99%に達し、世界規模の金融危機を引き起こしたリーマン・ショック時の2008年10月15日に記録した7.87%を上回ったとのこと。

NYダウ2352ドル安、過去最大の下げ幅 米入国制限警戒 (写真=ロイター) :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56743620T10C20A3000000/


今回発動したサーキットブレーカーとは、アメリカの証券取引所でのパニック売りを抑制するためのセキュリティシステムであり、S&P 500を含めた幅広い株価指数だけでなく、個別の株式についても適用されるものです。Investopediaは、「株価の変動が事前に定義された範囲を超えた場合、サーキットブレーカーは取り引きを一時的に停止することで機能します」と述べています。

サーキットブレーカーが制定されたきっかけとなったのが、1987年10月19日に発生した「ブラックマンデー」です。この際にダウ平均株価の下落幅が22.61%に達するなど、あまりにも行き過ぎた株価の下落が発生したため、「パニックが発生した際の過剰な株式売買を抑制する必要がある」と考えた規制当局がサーキットブレーカーを導入しました。

さらに2010年5月6日、「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる瞬間的な株価の暴落が発生し、わずか10分ほどでダウ平均株価が9%以上も下落。この際にサーキットブレーカーが発動しなかったことから、2013年から新しいサーキットブレーカー発動の基準が設けられ、現在に至るとのこと。3月9日のサーキットブレーカー発動は2013年の新ルール適用から初の出来事でしたが、そのすぐ後に2度目のサーキットブレーカーが発動したことになります。


記事作成時点で、サーキットブレーカーは全体的な株価指数と個別の株式の両方に適用されていますが、それぞれで発動の基準が異なります。2020年3月にサーキットブレーカーが発動したのは、株価指数のS&P 500が下落したことによるものであり、全体的な株価指数に関する発動基準を満たしたものです。

サーキットブレーカーを発動させる全体的な株価指数の下落は、以下の3段階に分かれています。

◆レベル1:株価指数が前日の終値より7%下落する
◆レベル2:株価指数が前日の終値より13%下落する
◆レベル3:株価指数が前日の終値より20%下落する

レベル1またはレベル2の基準を満たした場合、サーキットブレーカーの発動によって全ての株式売買が15分間停止されます。一方、レベル3の基準を満たした場合は、取引時間が終了する16時まで全ての売買が停止されるとのこと。なお、上場投資信託(ETF)については全体的な株価指数とみなされず、個別の株式としてサーキットブレーカーの対象になるとInvestopediaは指摘しています。


個別の株式に関する基準はより複雑であり、株式の格や価格によってさまざまな基準があり、全体的な株価指数の場合と違って値上がりについても基準が設けられています。株式の分類やサーキットブレーカー発動の基準は以下の通り。

◆1:S&P 500およびラッセル1000の構成株式、前日の終値が1株3ドル(約320円)を超える一部の株式
株式市場が開いた直後(9時30分~45分)および閉まる直前(15時35分~16時)は、基準価格から上下10%を超える場合。9時45分~15時35分は、基準価格から上下5%を超える場合。

◆2:前日の終値が1株3ドルを超えるが、「◆1」に含まれない株式
株式市場が開いた直後(9時30分~45分)および閉まる直前(15時35分~16時)は、基準価格から上下20%を超える場合。9時45分~15時35分は、基準価格から上下10%を超える場合。

◆3:前日の終値が1株0.75ドル(約80円)以上3ドル未満の株式
株式市場が開いた直後(9時30分~45分)および閉まる直前(15時35分~16時)は、基準価格から上下40%を超える場合。9時45分~15時35分は、基準価格から上下20%を超える場合。

◆4:0.75ドル未満の株式
株式市場が開いた直後(9時30分~45分)および閉まる直前(15時35分~16時)は、基準価格から上下75%を超える場合または0.15ドル(約15円)を超える場合。9時45分~15時35分は、基準価格から上下150%または0.3ドル(約30円)を超える場合。

以上の発動条件における「基準価格」は、個々の株式における「過去5分間の平均価格」となっており、条件を満たす価格帯での売買が15秒以上にわたって継続した場合、サーキットブレーカーが発動します。一次停止の時間は全体的な株価指数による発動よりも短く、最大でも10分間だとInvestopediaは述べました。


なお、日本の株式市場において「サーキットブレーカー」という名称の制度が導入されているのは、一部の先物・オプション市場にのみとなっています。その一方で、制度上サーキットブレーカーに近い「特別気配制度」「連続約定気配制度」という制度が存在しており、いずれも各銘柄ごとに独立に約定成立が保留される制度とのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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