2008年以降の株式市場の動きの93%は政府が原因
by shehan peruma
2008年から2015年にわたってアメリカの株式市場は基本的に上昇傾向にあり、好調な市場環境でした。しかし、この原因の93%は2008年から行われてきた量的緩和政策によって説明されるとして、経済学者のブライアン・バルニエ氏がグラフで説明しています。
The Fed caused 93% of the entire stock market's move since 2008: Analysis
https://beta.finance.yahoo.com/news/the-fed-caused-93--of-the-entire-stock-market-s-move-since-2008--analysis-194426366.html
2008年にリーマンショックが起こった時にはアメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)がQE1(量的緩和第1弾)・QE2(量的緩和第2弾)・QE3(量的緩和第3弾)と呼ばれる大規模な金融緩和政策を実施することで、アメリカはデフレ懸念から脱しました。特に2012年に発表されたQE3では、連邦準備銀行が月額400億ドルベースで住宅ローン担保証券の購入することに加え、米長期国債も月間450億ドル購入するという施策が採られています。
この時、株価指数であるS&P 500を見てみると、2008年11月から2014年10月にかけて数値が2倍以上に跳ね上がっていますが、同時にFRBのバランスシート規模は2.1兆ドルから4.5兆ドルへと拡大しています。経済学者のブライアン・バルニエ氏によると、両者は疑似相関の関係にあるのではなく、株価指数の上昇は量的緩和を原因とするものであるとのこと。
実際のところ、過去における株式市場の上昇傾向は、その時期に発生した「たった1つの要因」に左右されているとして、バルニエ氏はチャートを公開しています。1950年から現在に至るまでに、株式市場に影響を与えると思われる経済的要因は多く存在しますが、バルニエ氏はその中から株式価値の増減と同じ比率を示しているものを取捨選択。その結果、主に「将来5年にわたるGDPの予想データ」「家計・非営利団体の負債」「一般市場商業手形」「FRBの取り組み」という4つの要因が株式市場の動きを左右してきたことが判明しています。
さらに、バルニエ氏が株式市場における「時代」別にそれぞれの経済的要因をチャートに表したところ、以下のようなことが判明しました。
(1)第二次世界大戦から1970年代中頃に至るまで、将来5年におけるGDPの展望は株式市場の動きを90%説明している、というのがバルニエ氏の見解。
(2)GDP成長の伸び悩みは、クレジットカードと消費者負債の数が増え出す1970年代初頭ごろから見られます。一般家計の負債はまずクレジットカードの普及によってもたらされ、住宅ローンによる負債がこれに続きました。この流れは、不動産バブルが弾ける1990年代前半まで続きます。この時代の市場全体の動きの95%は家計負債によって説明できるとのこと。
(3)1990年代半ば~後半から2000年にはテクノロジーバブルが起こり、スタートアップや若い企業が資金を求めました。この時代は短期金融商品を扱うCP市場も活発化しており、バルニエ氏はこの現象がテクノロジーバブルを原因とするものと見ています。
(4)テクノロジーバブルの後に、再び住宅ローンを背景とする住宅バブルが到来します。今世紀初頭の数年における市場の動きはこの現象によるもの。
(5)2008年のリーマンショックによる金融危機が起こるとFRBは債権の購入などによって金融市場にドルをつぎ込みだします。QE1を開始してから現在までの市場の動きの93%以上はFRBにあるとバルニエ氏は説明しており、2013年前半には市場全体の成長を引き起こしているとのこと。一方で、債券利回りが債権そのものの価格とは反対に下がり始めたという傾向があるのもこの時代の特徴です。
FRBが債権の購入を2014年後期に停止してから、S&P 500の対前年増減率は伸び悩んでおり、FRBの債券購入がなくなった今、市場のてこ入れを行う次なる要素が必要だとして専門家らは案じています。
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