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アメリカによる「通常の3倍の利上げ」の意味や影響について知っておくべき5つのポイント


アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は2022年6月15日の会合で、政策金利を0.75%引き上げることを発表しました。FRBの利上げは0.25%ずつ行われることが多いため、0.75%の利上げ幅は「通常の3倍」と報じられています。もともと1%以下だった政策金利が0.75%引き上げられたことが一体なぜそんなに大きく受け止められているのかや、それが経済にどんな影響を与えるのかについて、財政学の専門家が解説しました。

5 things to know about the Fed's biggest interest rate increase since 1994 and how it will affect you
https://theconversation.com/5-things-to-know-about-the-feds-biggest-interest-rate-increase-since-1994-and-how-it-will-affect-you-185008

◆1:FRBはなぜ利上げしたのか?
ミシシッピ州立大学で財政学を研究しているブライアン・ブランク氏によると、今回の会合の直前までは「FRBの利上げは0.5%」と予想されていたとのこと。しかし、アメリカの労働省が6月10日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)が予想より大幅に高く、インフレが鮮明になったことが示されたため、投資家や金融市場のエコノミストは利上げの想定を0.75%に引き上げました。

利上げは経済を引き締めるため、金融市場は景気が冷え込みすぎることを警戒しており、各種株価指数もCPIが発表されてから大きく下落しています。そうまでしてFRBが大幅な利上げを決めた理由について、ブランク氏は「インフレを放置すれば、消費者や企業に深刻な問題がもたらされます。2022年4~5月にかけて実施された世論調査でも、アメリカ人が現在直面していると考える最大の問題はインフレだということが分かりました」と述べて、大幅な物価の上昇に対する警戒がハイペースな利上げにつながったとの見方を示しました。


◆2:FRBの目標は?
FRBがかじ取りをしている連邦準備制度は、「物価を安定させつつ雇用を最大化する」ことを使命としています。そのため、経済が低調で物価も上がらない時には、FRBは投資を刺激するために金利を下げようとします。逆に、経済が好調な時は失業率も低めなので、FRBはインフレ抑制のために金利を上げます。

これまでのところ、アメリカの経済は非常に好調で失業率も低いので、FRBが短期金利を引き上げる下地は十分整っていたと言えます。一方インフレ率も非常に高いため、これに対処するために1994年以来の大幅な利上げが必要となりました。

ここで問題になるのが、景気を減速させすぎて不景気になってしまうのではないかという懸念です。そこで、FRBはいわゆる「ソフトランディング」を目指していると、ブランク氏は指摘しました。


◆3:FRBが目指す「ソフトランディング」とは?
軟着陸という意味の言葉が使われている通り、ソフトランディングとは景気後退を招くことなくインフレ、ひいては経済成長を減速させることを指しています。FRBは2022年に入って、今回の利上げを含めて合計1.5パーセントポイントの利上げを行っていますが、あまり利上げを急ぐと景気が悪化し雇用も打撃を受けるおそれがあります。

こうした懸念に対し、FRBのジェローム・パウエル議長は「前回大きなインフレ対策を行った1980年代以来、中央銀行の政策ツールはより効果的になっており、今回はうまく着陸できる」と主張しています。一方、エコノミストの中には、状況は依然として不確実だと述べている人もいます。シカゴ大学やFinancial Timesが6月上旬に行った調査によると、調査対象となった専門家の3分の2が「2023年に景気後退が発生する可能性が高い」と答えていたとのこと。

実際にそうなるかについて、ブランク氏は「経済はまだ比較的堅調なので、2023年に景気後退が始まるかどうかの予想は、まだ五分五分でしょう」と述べました。


◆4:FRBが次に何をするか知る方法は?
FRBが中心となって今後の金融政策の方針を決める連邦公開市場委員会(FOMC)は、金融市場が急な政策の発表で混乱しないように、今後どうするのかを逐次発表しています。

FOMCが将来について発表するガイダンスの1つに、政策金利の見通しを点の分布で表した「ドットチャート」があります。FOMCが2022年3月に発表した(PDFファイル)ドットチャートでは、「年内に2%まで金利を引き上げ、2023年末には3%付近にする」ことが示されていましたが、今回のFOMCで発表された(PDFファイル)ドットチャートでは「年末までに3.5%近くにすること」が示唆されています。

これについて、ブランク氏は「年内にまだ数回の大幅な利上げが控えており、2023年には約4%になった後2024年に低下させる流れになると考えられます」と分析しました。一部の投資家の中には、2022年末には金利が4%近くになると予測する人もいるとのことです。


◆5:利上げが一般の消費者に与える影響は?
FRBによる金利の誘導は主に短期金利に影響し、それが長期金利に波及します。例えば、FRBが短期金利の目標を引き上げると銀行の借り入れコストが上昇し、銀行はその上昇分を住宅ローンや自動車ローンといった長期ローンの金利を上げるという形で消費者や企業に転嫁します。

2022年に入り、アメリカの住宅市場が急速に減速し始めたにもかかわらず、住宅ローンの支払いが前年比36%増と急増しているのには、このような背景があるとのこと。

また、利上げの影響はアメリカだけにとどまりません。アメリカが利上げするということは、ドルの価値が高まるということなので、ドル高になってアメリカ製品が高くなったり世界各国の借り入れコストが増加したりします。ただし、世界経済の動向を決めるのはFRBだけではないので、今後どうなるかの予測は困難とのこと。

ブランク氏は今後の経済の成り行きについて、「利上げが最終的に消費者にどのような影響をもたらすかは、FRBの予測通りにインフレのペースが遅くなるか、逆に速くなるかにかかっています」とコメントしました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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