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「次の景気後退は1年以内」との予言

by choreograph

2019年8月14日にアメリカとイギリスの国債における長短金利が逆転したことについて、経済紙Bloombergは「世界金融危機以降で最も顕著にリセッション(景気後退)入りが示唆されている」と報道しました。しかし、Bloombergの報道に先駆けること約半年前にこの事態を予測していた経済学者がいました。

The Fourth Horseman of the Next Recession Approaches | Duke's Fuqua School of Business
https://www.fuqua.duke.edu/duke-fuqua-insights/harvey-yield-curve-2019

世界屈指の名門大学であるデューク大学で財政学教授を務めるキャンベル・ハーベイ氏は2019年3月12日年に掲載されたコラムで「2019年3月7日以降、5年物のアメリカ国債の利回りが3カ月物よりも低くなっています」と指摘。2019年3月から数えて「12~14カ月以内に世界経済はリセッション入りする」と予想しています。

ハーベイ氏はリセッションのリスクとなる要因として、キリスト教において終末に到来するとされているヨハネの黙示録の四騎士になぞらえて、次の4つを挙げています。

by Viktor Vasnetsov

◆1:イールドカーブの逆転
イールドカーブとは、債券の利回りの変化を線グラフにしたもの。銀行の定期預金と同様に、投資家は債券の償還期限が長ければ長いほどそれに見合った利回りを求めるため、通常は緩やかな右肩上がりを示します。

以下の画像は2018年5月13日時点のアメリカ国債のイールドカーブです。グラフの縦軸は利率を、横軸は償還期限の長さを表しており、折れ線グラフが右肩上がりになっていることから、長期債ほど利回りが高いことが分かります。

by Ldecola

2019年3月には前述のとおり長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」と呼ばれる現象が発生しました。逆イールドは投資家が将来的に景気が低迷すると見込んでいるタイミングで発生するため、景気の先行きを占う上で重要な指標だとされています。ハーベイ氏は「3カ月以上逆イールドが続くようなら、リセッション入りはより鮮明になります」と述べています。

◆2:CFOサーベイ
デューク大学が企業の最高財務責任者(CFO)を対象に行った調査によると、CFOの半数が2019年末または2020年前半にリセッションが発生すると予想しているとのこと。また、遅くとも2020年末までにはリセッション入りすると答えたCFOが全体の82%にものぼることからも、企業の経営陣が近い将来のリセッション入りを確実視している様子が分かります。

◆3:保護主義の台頭
1930年に制定されたスムート・ホーリー関税法により、アメリカ政府が輸入品に記録的な高さの関税をかけた結果、アメリカ経済は保護されるどころか大不況に陥り、後の世界恐慌の引き金となりました。ハーベイ氏はこの事例と同じことが起きると予想していますが、ハーベイ氏によると「最大の脅威」は米中貿易摩擦ではなく、イギリスのEU離脱(Brexit)だとのこと。

◆4:金融市場のボラティリティの高さ
ボラリティとは「資産価格の変動の大きさ」を表す数値で、ボラティリティが高いほど価格が乱高下していることを表しています。アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」のボラリティは特に恐怖指数とも呼ばれており、世界経済をけん引するアメリカ経済の安定度を見定める上で重要なポイントです。

ただし、ボラリティが高ければリセッション入りが近いかというと、必ずしもそうではありません。例えば、1987年のブラックマンデーでは、世界的な株価大暴落が発生し、ボラリティも急上昇しましたが、実際には世界景気はリセッション入りしませんでした。しかし、ハーベイ氏は「だからこそ4頭目の馬がダークホースになりかねません」と話しています。

ハーベイ氏は「一般的に、不況が終わってから次の不況が訪れるまでの平均的な期間は58カ月ですが、全米経済研究所が2009年6月に不況の終わりを告げてから既に120カ月近く過ぎています」と指摘し、長期にわたる好景気の反動が大きなものになると示唆しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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