メモ

学校の開始時間を遅らせると学生のパフォーマンスは上がり車両事故は減る


15歳の子ども12万人を対象とした調査で、睡眠不足が10代の子どもの幸福の強力な予測因子になることが示されました。人の健康と幸福にとって重要な睡眠が、学校の始業時間が早すぎることで阻害されているとして、「始業時間を遅らせる」という試みが注目されるようになっています。最新の研究では「学校の始業時間を遅くすると、10代のドライバーによる事故が減る」ということまで示されているとのことです。

Sleepmore in Seattle: Later school start times are associated with more sleep and better performance in high school students | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/4/12/eaau6200

Later School Start Times Make for Better Grades, Study Finds - Pacific Standard
https://psmag.com/education/the-benefits-of-letting-students-sleep-in

The One Change That Boosts a High School's Academic Performance - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/the-one-change-that-boosts-a-high-schools-academic-performance/


人にとって睡眠は必要不可欠なものであり、これまでに行われた研究の中には「6時間睡眠を続けると自分で気づかないうちに徹夜した人並に認識能力が落ちている」ということを主張するものもあります

特に10代の子どもたちが最高のパフォーマンスを発揮するには1日8~10時間の睡眠をとる必要があるとアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表していますが、実際に8時間30分は寝ているとアンケートで答えた子どもは全体の15%のみだったとする研究も存在します。思春期の子どもは生物学的に体の変化が大きいため、概日リズムに影響が出て、体内時計が後方にずれてしまいがちです。近年は体内時計のずれと早い始業時間の組みあわせにより、子どもたちが必要な睡眠をとることができていない点が問題として上がっていました。

ワシントン大学のギデオン・ダンスター氏とオラシオ・デ・ラ・イグレシア氏は、学校の始業時間を遅らせることが学生の睡眠時間に影響することを客観的に示すべく、調査を実施。この結果は2018年12月のScience Advancesで発表されました。

イグレシア氏はかねてから「7時30分に10代の若者を起こすことは、大人に対して5時30分に起床することを求めるようなもの」と指摘してきました。研究者からの懸念の声を受けてシアトルのある学区は2016年の秋から高校の始業時間を7時50分から8時45分に変更したのですが、この機会を利用し研究者は2つの高校の2年生の生徒を対象に、生物学の授業の一環として実験を行ってもらいました。被験者となった高校生たちは2016年春・2017年春に、それぞれ6週間にわたって腕時計型の活動モニターを着用したとのこと。被験者たちは眠る前と起きた時に、モニターのボタンを押して睡眠を記録しました。また、研究者は被験者に対し、睡眠日記を書くことや、日中の眠気についてのアンケート調査も実施しました。


この実験の結果、2017年の春には平均して被験者の睡眠が1日34分も長くなっていることが示されたとのこと。これにより学生たちの睡眠時間は理想に近づいたと研究者は報告しています。そして、生物学コースの生徒の成績の中央値は、前年のクラスより4.5%高くなったことも示されました。成績の上昇が睡眠時間が長くなったことと関係しているかは不明ですが、「休息をしっかり取り、注意力の高い生徒の学業成績がより高くなるのは、合理的なことです」とダンスター氏は述べています。

さらに、実験に参加した高校の1つで、より経済的に不遇な生徒が多い高校では、「2016年に比べて2017年は明らかに遅刻や欠席が少なかった」ということも示されました。これは、裕福な家庭の子どもが多く通う学校には見られない傾向とのこと。もちろん、学生の睡眠時間は学校の始業時間だけでなく、スマートフォンの利用を始めとする多くの要素が関係していますが、この研究は「始業時間を遅くすることが学生の役立つ」ことをはっきりと示したといえます。


ダンスター氏やイグレシア氏が発表した研究結果は、2014年に発表された別の(PDFファイル)調査結果とも一致します。またドイツで同様の実験が行われたところ、1時間始業時間を遅らせると生徒の睡眠時間は平均して1.1時間長くなり、推奨される睡眠時間を得られる学生は18%から52%に上昇したことが示されました

このような調査結果を受けて、2019年10月にはカリフォルニア州では公立中学校と公立高校の始業時間を、それぞれ8時と8時半以前に設けることを禁止する法案が可決されました。

生徒の睡眠時間を確保するため「朝8時以前の始業を禁じる」法案がカリフォルニア州で可決 - GIGAZINE


また2020年1月に発表された論文で、研究者は「始業時間を遅くすることが、10代のドライバーが関係する車両事故の大幅な減少と関連している」と発表しています。

School Start Time Change and Motor Vehicles Crashes in Adolescent Drivers | Journal of Clinical Sleep Medicine
https://jcsm.aasm.org/doi/10.5664/jcsm.8208

Study suggests later school start times reduce car crashes
https://aasm.org/study-suggests-later-school-start-times-reduce-car-crashes-improve-teen-safety

この論文の中でハーバード大学の神経学教授であるジュディス・オーウェンズ氏は「独立したデータソースから、学校の始業時間の変更後、生徒たちはより多くの睡眠を取るようになったと示されています。これは個人だけではなく、より大きな経済的意味合いでも、複数のメリットにつながります」「睡眠を多く取った10代の少年少女は、『シートベルトをしない』『注意散漫に運転する』といった誤った決断を下しにくい傾向があります」と述べました。オーウェン氏は「学校の開始時間と運動選手の負傷率」や「自動車事故以外の安全性」についても調査が行われることを期待しています。

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in メモ, Posted by logq_fa

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