サイエンス

「光を浴びた量」から就寝時間を予測できる、夏より冬の方が就寝時間が遅くなる理由も判明


人間の睡眠習慣はさまざまな要因によって左右されており、特に「光」を浴びることが睡眠に影響することがわかっています。500人を超える大学生の睡眠パターンを2015年~2018年にかけて追跡した新たな研究では、人間の睡眠パターンは季節によって変動し、「日中に光を浴びるほど就寝時間が早くなる」という傾向が明らかになりました。

Daytime light exposure is a strong predictor of seasonal variation in sleep and circadian timing of university students - Dunster - Journal of Pineal Research - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1111/jpi.12843

Trouble falling asleep at night? Chase that daytime light, study shows | UW News
https://www.washington.edu/news/2022/12/12/winter-sleep-study/

Exposure to Daylight Predicts When You'll Fall Asleep, Study Shows : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/exposure-to-daylight-predicts-when-youll-fall-asleep-study-shows

アメリカ・ワシントン大学の研究チームは、507人の学部生にリストモニターを装着してもらい、2015年~2018年にかけて睡眠パターンを追跡する研究を行いました。ワシントン大学があるシアトルは高緯度の都市であり、1年で最も日が長い夏至は早朝の5時頃~21時頃まで16時間近く太陽が出ている一方、冬至には8時頃~16時頃の8時間ほどしか太陽が出ていないという特徴があります。


論文の共著者であるHoracio de la Iglesia教授は、「夏には利用できる光の量が多いので、学生たちが夜遅くまで起きていると予想していました」と述べています。

実際にデータを分析した結果、学生たちの睡眠時間は季節に関係なく毎晩ほぼ同じであることがわかりました。ところが、就寝時間は「夏の方が遅くなるだろう」という予想に反して冬の方が平均して35分遅く、起床時間も冬は27分遅くなることが判明。意外なことに、日光の少ない時期の方が就寝時間が遅くなるという傾向がみられました。

また、研究に参加した大学生の概日リズムは、夏と比較して冬に最大40分遅れていることも示されたことから、研究チームは冬に存在する何らかの要因が学生の概日リズムを押し戻していると考えました。


概日リズムの遅れをもたらす原因として研究チームが指摘しているのが、夏と冬の日照時間の違いです。データを分析したところ、昼間に1時間の光を浴びると概日リズムが約30分早くなり、夕暮れ後に照明やコンピューターなどの光を1時間浴びると概日リズムが約15分遅くなるという関係が判明しました。なお、シアトルの冬は曇りが多いものの、曇りでも屋内よりは明るいため冬でもこの効果は存在したとのこと。

de la Iglesia教授は、「日中、特に朝に光を浴びると体内時計が進み、夕方には眠くなりますが、夕暮れや夜に光を浴びると体内時計が遅れ、眠くなる時間も遅くなります。結局のところ眠りに落ちる時間は、1日のさまざまな時間帯に光を浴びることによる、この相反する効果で押し引きされた結果だと言えます」とコメントしています。

今回の研究結果は、現代社会において夜間の光が当たり前になった状況下でも、季節による日照時間の変化が概日リズムに影響することを示唆しています。de la Iglesia教授は、「多くの人々は人工的な光が多い都市や街で暮らし、日中は室内にいるライフスタイルを送っています。この研究が示すのは、少しの時間でも、特に朝は外に出て自然光を浴びることが必要だということです。また、夜はスクリーンを見る時間や照明を減らすことで、眠りにつくのを助けることができます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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