TVや電気のつけっぱなしで夜の睡眠中に光を浴びることが体重増加を引き起こす可能性
by Victoria Heath
夜は明かりをつけたままじゃないと眠れないという人や、TVをつけっぱなしにしておかないと眠れないという人がいますが、そういった夜の睡眠時に人体が浴びる人工光は、睡眠を妨げる以上の効果を持つ可能性が示唆されています。最新の研究によると、夜の睡眠中に人工光を浴びることは、女性の体重増加および肥満リスクの拡大につながる可能性があるようです。
Association of Exposure to Artificial Light at Night While Sleeping With Risk of Obesity in Women | Lifestyle Behaviors | JAMA Internal Medicine | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2735446
Keeping Your TV on at Night May Lead to Weight Gain
https://www.livescience.com/65681-light-night-weight-gain.html
これまでにも夜間に光を浴びることが健康に悪いことを示唆する研究は存在しました。動物を対象とした過去の研究では、夜間に光を浴びることが「睡眠の質を低下させ、概日リズム(体内時計)を乱し、摂食行動を増やし、体重増加を促す」と示唆されています。
そして、2019年6月10日に学術誌のJAMA Internal Medicine上で公開されたばかりの最新の研究論文から、夜間に電子機器などの光にさらされた女性は、人工光にさらされていない人と比べて体重を増加させやすいこと明らかになっています。つまり、夜の睡眠時に人工光を浴びている人は、肥満になる可能性が高いということです。なお、論文では「夜間の睡眠中に人工光にさらされる機会を減らすことは、肥満を予防する有用な戦略である」と記されています。
by Joanes Andueza
これまでの研究でも夜間に人工光を浴びることの効果を測定する研究は存在しました。しかし、従来の研究は夜間に高レベルの光に暴露する夜勤労働者を対象としたものが多く、調査結果が多くの一般人にも同じように当てはまるのかは疑問でした。また、一般の被験者を対象に行われる調査の場合、ある時点で収集したデータのみを用いるため、継続して「夜の睡眠時に人工光を浴びる人」の体重増加がどのように変化するのかについては明らかになっていませんでした。
そこで、最新の調査ではアメリカ全土から35~74歳までの約4万4000人の女性被験者を集め、平均5.7年間の追跡調査を実施しています。被験者にはアンケート形式で「寝室の明かり」や「TVの光」、「ほかの部屋からの光」など詳細に睡眠時に浴びる可能性のある人工光について答えてもらうことで、被験者がどの程度の人工光を睡眠時に浴びているかを測定したそうです。
調査の結果、研究開始時には肥満でなかった女性であっても、夜間に人工光を浴びていると答えた被験者はそうでない被験者と比べて、研究の追跡調査期間中に肥満になる可能性が約20%も高くなったそうです。加えて、TVをつけっぱなしで眠っていた女性や部屋の明かりをつけたまま寝ている女性は、夜間に人工光を浴びないグループと比べ、約5kgの体重増加を経験する可能性が17%も高くなっている模様。なお、これらの傾向は被験者の暮らす地域や家計収入、カフェインやアルコールの摂取量、うつ病やストレスといった他の要因を考慮した場合であっても同じようにみられるそうです。
by Kinga Cichewicz
ただし、研究者たちはあくまでも「睡眠時に人工光にさらされること」と「女性の体重増加」の間の関連性を見つけ出した段階にすぎず、夜間に浴びる光が体重増加や肥満を引き起こす直接的な原因であることが明らかになったというわけではありません。体重増加には「不健康な摂食行動」や「低レベルの身体活動」などさまざまな要因が考えられますが、「睡眠不足」や「睡眠時の人工光への暴露」がこれらとどのように関連しているのかについては、まだ完全には説明できていない状況です。
今回の調査結果は決定的な結果を示したものではないものの、夜間に人工光を浴びる機会を減らすこと自体は悪い考えではありません。「明かりをつけて眠らないようにと忠告することは理にかなっています」と、論文の著者のひとりであり、アメリカ国立環境衛生科学研究所の疫学部門の責任者でもあるDale Sandler氏は語っています。
夜間に人工光を浴びることで睡眠時間は短くなり、これが間接的に肥満リスクに影響し、食欲ホルモンを乱し、食事の量を増加させる可能性があります。そして、睡眠時間が少ないことが、身体活動の低下につながる可能性もあるとSandler氏は語っています。あるいは、夜間に人工光を浴びることがより直接的に肥満に影響を与える可能性も示唆されており、睡眠ホルモンやストレスホルモンを乱し、直接代謝に影響している可能性もあるとのこと。
今回の研究ではスマートフォンやタブレット、コンピューターといったデジタル機器の画面から発せられる人工光については特に集計しておらず、その影響までは評価されていません。しかし、過去の研究ではデジタル機器から発せられるブルーライトが睡眠不足や日中の眠気を引き起こすことが示唆されています。そのため、研究チームは今後、夜間の睡眠時に浴びるブルーライトが肥満とどのように関係しているのかについても調べる必要があるとしています。
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