宇宙飛行士から学ぶ「自己隔離中の睡眠の質を高める方法」とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行しているため、「1日外に出ない」という人が増加しており、通常とは違う生活サイクルに「夜眠れない」という人が増えています。自己隔離中の睡眠について、「宇宙船という外出不可能な環境で長期にわたってミッションを続ける宇宙飛行士のような睡眠を取るべき」と睡眠の専門家である心理学者のジェイド・ウー氏が解説しています。
Mars 520-d mission simulation reveals protracted crew hypokinesis and alterations of sleep duration and timing | PNAS
https://www.pnas.org/content/110/7/2635.short
Want to Sleep Well During Quarantine? Do It Like an Astronaut | Savvy Psychologist
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/mental-health/sleep-astronaut
ウー氏によると、多くの人が自己隔離中の社会的孤立と身体的制限による緊張を感じており、睡眠障害を患っているとのこと。ウー氏の同僚の睡眠治療の専門家は、過去最高の相談数を記録したと語っているそうです。
このような長期にわたる自己隔離の中の睡眠に関する研究は今まで行われていませんでしたが、宇宙飛行士の睡眠に関する研究が参考になるとウー氏は説明。ロシア科学アカデミーの生物医学問題研究所が行った、「多様な国籍と文化的背景を持つ宇宙飛行士6人を宇宙船内部を模した環境に520日間閉じ込める」という実験を挙げました。520日という数字は火星への往復にかかる時間であり、生物医学問題研究所は期間内に外に出ることができない宇宙飛行士の体調や心理にどのような変化が生じるかを調査しました。
この調査に「睡眠状況の変化」も含まれており、実験開始時には健康だった宇宙飛行士6人の大半がある程度の睡眠障害を経験したことがわかっています。宇宙飛行士に関する調査の結果から導かれた「自己隔離中の睡眠を改善するための方法」は、以下の通り。
◆1:規則正しいスケジュールを維持する
自己隔離中は、朝に子どもを送り迎えしたり、昼休みに同僚とおしゃべりしたり、仕事終わりにスポーツジムに行ったりというような日々のルーティンが存在しません。ウー氏によると、一貫した社会的なリズムを持てない環境下では、我々のバイオリズムが不調になり、不眠症・睡眠不足・疲労になってしまうとのこと。
そのため、自己隔離中でもいつものようなスケジュールで1日を過ごすことをウー氏は推奨しました。具体的には、以下のように1日を過ごすべきだそうです。
・毎日同じ時間に起きる
・朝起きたらパジャマを着替える
・決まった時間に休憩をとる
・決まった時間に食事をとる
・毎日同じ時間に寝る
以上のように行動することによって、体内時計が整って質の高い睡眠と日中の覚醒が維持できるとのことです。
◆2:努力して運動する
自己隔離中は外出できないため、どうしても座りがちになります。520日間の隔離実験では、時間の経過とともに被験者が座りがちになったという調査結果が得られたとのこと。
ウー氏は運動によってエネルギーを発散しない場合、睡眠が悪化して疲労が濃くなると指摘。以下のように運動を意識して続けることを勧めました。
・他の人との距離を十分にとって散歩やジョギングをする
・自宅でヨガをする
・ビデオ会議の合間に腕立て伏せをする
・ビデオチャットを使って友だちと一緒にワークアウトを行う
◆3:日光に当たる
520日間の隔離実験では、被験者が浴びる光量の低下が認められました。ウー氏によると、日光は体内時計をリセットするのにとても効果的なので、実験中に日光を十分に浴びられなかった被験者の睡眠状態が悪化したのも不思議ではないとのこと。
自己隔離中は外に出て日光を浴びられないため、実験中の宇宙飛行士と同じ状態に陥っているとウー氏は指摘。さらに日没後もモニターやテレビから放たれる人工光を浴びることで、体内時計がよりいっそう混乱すると解説しました。ウー氏は体内時計を正常化するため、以下を推奨しています。
・日中はなるべくサングラスを装着せずに外に出る
・外に出られない場合は明るい窓際に座って、顔で直射日光を浴びる
・日没後には画面を暗くして、顔を近づけすぎないようにする
◆4:眠ろうと意識するのをやめる
520日間の隔離実験中に、本格的に不眠症になった被験者は6人中1人でした。これは自己隔離を続けても必ずしも不眠症にはならないということを示しています。
しかし、ウー氏は寝付けなかったり中途覚醒したりという症状が常態化しないように睡眠に気をつけるべきだと主張して、「眠ろうとするのをやめる」ように促しました。ウー氏によると、眠ろうと努力すると眠気がむしろなくなってしまうので、眠気が来るようにしたい場合は以下のようにすべきとのこと。
・寝返りを打つ代わりにベッドから出る
・本を読んだり、光量を下げたテレビを見る
・熱中しすぎないような活動で「眠ろうとする」ことを忘れる
・朝はいつも通りの時間に起きる
ウー氏は「眠るときの環境」と「起きているときの環境」を分けることをアドバイスしました。自己隔離中はベッドの上で電話したり仕事したりといったことが魅力的に見えてきますが、ウー氏は「ベッドの上で眠ること以外のことをすると、脳が『ベッドの上は起きている場所』と覚えます」と言及。起きているときはベッドからできる限り離れた場所で活動するように促しました。
自己隔離中の睡眠について、ウー氏は「睡眠の質が良くなくても、正常です」とコメント。上記のアドバイスに従うことと、睡眠について心配しないことを勧めました。
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