サイエンス

人間は冬になると夏よりも必要な睡眠時間が長くなるかもしれないという研究結果


冬の朝はどうしてもベッドから出る気力が湧いてこず、寝坊しがちになってしまうもの。「これは自分が怠け者なせいだ」と考えている人も多いかもしれませんが、科学誌のFrontiers in Neuroscienceに掲載された研究で、人間は夏よりも冬により多くの睡眠時間が必要になる可能性があると示されました。

Frontiers | Seasonality of human sleep: Polysomnographic data of a neuropsychiatric sleep clinic
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2023.1105233/full


Humans ‘may need more sleep in winter’, study finds | Sleep | The Guardian
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2023/feb/17/humans-may-need-more-sleep-in-winter-study-finds

Do Humans Hibernate? No, but We Still Need More Winter Sleep
https://scitechdaily.com/do-humans-hibernate-no-but-we-still-need-more-winter-sleep/

New Study Suggests “Hibernating” During the Winter Might Be Good For Your Health
https://www.inverse.com/health/sleep-longer-hibernate-during-winter-human-health

多くの動物は季節によって行動を大きく変化させており、一部のほ乳類は冬になると冬眠を行っています。その一方で、人間は比較的季節による行動変化が少なく、仕事や学校などの社会活動も冬と夏でほとんど変わりません。ドイツ・ベルリンの聖ヘドウィグ病院で睡眠について研究するDieter Kunz博士は、「人類の進化における最も貴重な成果の1つは、行動レベルでは季節性がほとんど見られないことかもしれません」と述べています。


米国睡眠医学会が2020年に実施した調査では、アメリカに住む成人の34%が「冬になると睡眠時間が長くなる」と回答している一方、36%が「夏になると睡眠時間が短くなる」と回答しており、睡眠には季節性の変化が生じている可能性も示唆されています。睡眠時間の変化は概日リズムを調整する日光を浴びる量の変化によって説明できますが、概日リズムに影響を与えるのは自然光だけでなく、屋内照明や電子機器のスクリーンの光なども概日リズムを乱す可能性があるため、季節が睡眠に与える影響は曖昧です。

そこで、Kunz氏らの研究チームは、都市環境に住む人々において睡眠の季節性が見られるかどうかを確かめるため、聖ヘドウィグ病院で3泊にわたる睡眠ポリグラフ検査を受けた患者を対象にした調査を行いました。

睡眠ポリグラフ検査とは、患者が眠っている時の脳波や呼吸、眼球運動、心電図、酸素飽和度などを測定して睡眠の長さや質を確かめる検査です。聖ヘドウィグ病院では、目覚まし時計を置かずに被験者が自然に睡眠できる実験室を使用し、睡眠障害を抱えている患者に対して定期的に睡眠ポリグラフ検査を実施しているとのこと。


研究チームは2019年に聖ヘドウィグ病院で睡眠ポリグラフ検査を受けた292人の患者から、睡眠に関連する薬を服用している患者や浅い眠りであるレム睡眠の時間が120分以上の患者を除外して、188人のデータを抽出しました。患者の内訳は男性が90人、女性が98人で、いずれも自然光への露出が少なく、光害の程度が大きいベルリンの都市部に住んでいました。睡眠障害の診断には季節性のパターンがほとんど見られなかったものの、不眠症は年末にかけて多く診断される傾向がありました。

以下のグラフは、横軸がデータの収集時期(2019年1月~12月)を示し、縦軸が被験者の総睡眠時間(TST)・レム睡眠時間(REM)・ノンレム睡眠時間(SWS)を示したもの。総睡眠時間を見ると5月~6月頃は冬のピーク時と比べて最大60分ほど少なくなっているほか、冬は夏よりもレム睡眠の時間が長くなり、秋になると記憶や免疫機能にとって重要なノンレム睡眠の時間が減少していることがわかります。研究チームによると、季節による総睡眠時間の変化は統計的に有意ではなかったものの、レム睡眠時間の変化は統計的に有意だったとのことです。


Kunz博士は、「冬になると人間の生理機能は低下し、2月や3月には空回りしているような感覚を覚えます。概して、社会は季節に合わせて睡眠時間やタイミングを調整したり、学校や仕事のスケジュールを季節に睡眠ニーズに合わせて調整したりする必要があると言えます」と述べました。

なお、今回の研究結果はあくまで睡眠障害を経験している小規模な集団で行われたものであり、今後はより大規模な集団で実験を再現する必要があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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