サイエンス

音楽が呼び起こす「13の感情」が分類される

By Chalabala

聞いているだけでハッピーな気分になる曲もあれば、ジョーズのテーマ曲のように「危険が迫っている」と本能に訴えかける曲もあります。アメリカのカリフォルニア大学バークレー校やオランダのアムステルダム大学の共同研究チームが、それぞれの曲が呼び起こす感情を調査によって決定し、マッピングしました。

Ooh là là! Music evokes at least 13 emotions. Scientists have mapped them | Berkeley News
https://news.berkeley.edu/2020/01/06/music-evokes-13-emotions/

研究チームはオンラインギグエコノミープラットフォームのアマゾンメカニカルタークで集められたアメリカと中国の被験者約2000人に、あらかじめ選定された音楽40曲を聞いてもらい、それぞれの曲によって呼び起こされた「感情」「ポジティブ/ネガティブな気分の度合い」「興奮度」など28種類の項目について評価してもらいました。

研究チームは、統計分析によりそれぞれの評価結果を13のカテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーを「憂鬱(ゆううつ)」「夢見ごこち」といった、文化によって変化することのない13の感情に対応させました。また、研究チームは被験者約1000人による追試験で、これらの13の感情カテゴリーを検証。追試験の結果は、それぞれの感情カテゴリーが有効だと示したとのことです。


以下のリンクから、音楽によって呼び起こされる感情を可視化したマップを見ることが可能です。

ocf.berkeley.edu/~acowen/music.html
https://www.ocf.berkeley.edu/~acowen/music.html


マップの中央部を中心として無数に配置されたアルファベットが、それぞれの音楽を聞いた被験者の評価。それぞれの評価は、「Amusing(楽しみ)」「Energizing,pump-up(活気づいている)」などの13の感情に分類され、AからMまでの13個のアルファベットが割り当てられています。「Amusing(楽しみ)」と「Joyful,cheerful(喜び)」といった似通った感情はマップ上で近い位置に配置されており、「Amusing(楽しみ)」と「Anxious,tense(不安)」といった対極の感情はマップ上で離れた位置に置かれます。


各アルファベットにカーソルを合わせると、その評価の詳細な内訳が上部に、分析結果が右上のレーダーチャートに表示されます。本研究は、「各感情がどの程度呼び起こされているのか」を調査結果ごとに数値化して、それぞれをマップ上に配置しています。


調査によると、アメリカ国歌の「星条旗」は「誇り」の感情を呼び起こし、エド・シーランの「The Shape of You」は「喜び」を呼び起こすとのこと。

Ed Sheeran - Shape of You [Official Video] - YouTube


実験にはクラシックやヘビーメタルなどのさまざまな曲が使われました。クラシックにおける名曲の1つ、ヴィヴァルディの「四季」や、パンク・ロックバンドのザ・クラッシュの「ロック・ザ・カスバ」は「活気づいている」感情を刺激し、アメリカのソウルシンガー、アル・グリーンの「Let's Stay Together」は「官能的」な感情を呼び起こしました。

Al Green - Let's Stay Together - YouTube


否定的な感情を呼び起こした音楽は、1960年に公開されたクラシックホラー映画「サイコ」のシャワーシーンに使われたBGMなど。

以下のムービーの57秒ごろからかかるBGMは、「恐怖」を呼び起こします。

The Shower - Psycho (5/12) Movie CLIP (1960) HD - YouTube


これらの曲は、「『その曲を聞いた状況』を脳が連想するために特定の感情を呼び起こす」という可能性が残されています。つまり、ホラー映画の曲を聞くと、「ホラー映画を見たときの気分」が呼び起こされて、特定の感情が想起させられるという可能性があるわけです。しかし、研究チームは、アメリカの被験者が中国の伝統的な民俗音楽を聞いた時の感情なども調査することによって、「曲が特定の記憶を呼び起こす」という要因を排除しようと努めています。

本研究には、アメリカと中国の2カ国の被験者が参加しており、多くの曲についてこの2国の被験者の感情は共通していたという結果が得られました。その一方で、ジョーズのBGMのように、「恐怖」がかき立てられるという点では共通していましたが、その恐怖が「ポジティブ」なのか「ネガティブ」なのかという判定が文化によって異なった曲も存在したとのことです。

本論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学バークレー校のアラン・コーウェン氏は、「音楽は普遍的な言語ですが、人間は『音楽が何を言っているか』について常に注意を払っているわけではありません」「音楽がいかに多くの微妙な感情を引き起こしているかという謎を解き明かそうと思っています」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「音楽は世界共通の言葉」という通説が間違っていた可能性 - GIGAZINE

1300曲以上の人気曲を分析して判明した「人気曲に共通するパターン」とは? - GIGAZINE

脳は0.3秒以内にお気に入りの音楽を聞き分けることができることが判明 - GIGAZINE

今まで未解明だった「音楽」が脳で処理されるメカニズムが明らかに - GIGAZINE

「音楽で感動できるタイプ」かどうかは脳内部位の連携の活発さに左右されていることが判明 - GIGAZINE

音楽を聴くと創造力が損なわれるという研究結果 - GIGAZINE

脳が音楽から「意味」を感じ取っている様子がLSDを使った検証で明らかに - GIGAZINE

なぜ年を取ると新しい音楽を受け入れられなくなるのか? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.