「オオカミから犬への進化途中の種」かもしれないミイラが良好な状態で永久凍土から見つかる
シベリアの永久凍土から出土した子犬のミイラをDNA鑑定したところ、約1万8000年に生後2カ月未満で死亡したことと、犬だともオオカミだとも特定できない動物であることが判明しました。専門家はこの子犬について、犬の進化の過程に新たな光を投げかけてくれる可能性があるとしています。
Amazingly preserved puppy with whiskers, eyelashes, hair and velvety nose intact puzzle scientists
https://siberiantimes.com/science/others/news/amazingly-preserved-puppy-with-its-whiskers-eyelashes-hair-and-velvety-nose-intact-puzzle-scientists/
18,000-year-old frozen puppy leaves scientists baffled | CNN Travel
https://edition.cnn.com/travel/article/frozen-puppy-intl-scli-scn/index.html
この子犬のミイラは、ロシア・ヤクーツク北東に位置するインディギルカ川近郊の永久凍土の中から発見されました。保存状態は非常に良好で、全身や鼻、口、歯だけでなく、ひげやまつげに至るまで残存していました。実際の写真が以下。
頭部の状態は特に良好で、口元に限れば生きているようにすら見えます。
スウェーデン古遺伝学センター(CPG)がこの子犬のミイラのDNA鑑定を行ったところ、1万8000年前に死亡したことと、「犬なのかオオカミなのかを特定できない」ことがわかりました。
CPGはヨーロッパでも最大級の「犬のDNAバンク」を有しており、通常ならば1回の試行で犬の種を特定できる見込みでした。CPGに所属する研究者のデビッド・スタントン氏は、「通常ならば犬なのかオオカミなのかはすぐにわかります」とコメントし、犬とオオカミの判別が容易であると語りましたが、DNA鑑定の結果は想定を覆しました。
犬はオオカミの亜種が家畜化されてオオカミから分岐した種だと考えられていますが、具体的にどの地域に生息していたどの亜種から分岐したかについては定説が存在しません。2017年にNature Communicationsに掲載された研究は、現代の犬は「約2万年から約4万年前のオオカミのあるグループから派生した種」という説を唱えています。
Ancient European dog genomes reveal continuity since the Early Neolithic | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/ncomms16082
一方で、2016年にScienceに掲載された研究は、「オオカミがアジアで家畜化された種とヨーロッパで家畜化された種のそれぞれ2種が現代の犬の先祖である」という立場を取っています。
Genomic and archaeological evidence suggest a dual origin of domestic dogs | Science
https://science.sciencemag.org/content/352/6290/1228
研究グループは、今回発見された子犬が「オオカミから犬に進化する過程の種」だと考察しており、研究を続けることで「オオカミが家畜化された時期」に関して多くの情報が得られる可能性を示唆しています。
また、ゲノム解析の結果、子犬はオスだということと、所見の結果、死因は不明であるものの死亡時に苦痛を感じていなかったこともわかっています。研究者一同は協議の結果、子犬が発見された地域の言語であるヤクート語で「友人」を意味する「ドゴール(Dogor)」という名前を子犬に贈っています。
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