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人はなぜ「ボタンを押す」という行為をやめられないのか?

by Eelke

電灯のスイッチやテレビのリモコンなど、ボタンに一切触れない生活はあり得ないといえるほど、ボタンは現代人の生活に深く浸透しています。また、手慰みにボタンを押すだけのアイテムが発売されたり、ボタンを押すだけのゲームがリリースされたりと、「ボタンを押す」という行為自体も目的を問わず広く愛されています。インディアナ大学映画メディア研究科で助教授を務めるRachel Plotnick氏が、自身が7年以上にわたって研究してきた「押しボタンの文化」について解説しています。

I studied buttons for 7 years and learned these 5 lessons about how and why people push them
https://theconversation.com/i-studied-buttons-for-7-years-and-learned-these-5-lessons-about-how-and-why-people-push-them-110084


19世紀後半にコダックが「You Press the Button. We Do the Rest.(あなたはボタンを押すだけです。あとは私たちにお任せあれ)」というキャッチコピーでカメラ市場に参入し、「カメラを使うのは難しいことではない」と顧客の裾野を広げるイメージ戦略を行いました。


しかし、「実際にはボタン操作が簡単で有用だとは限りません」とPlotnick氏は主張しています。例えば、旅客機のコックピットやDJが使うターンテーブルには大量にボタンがついていますが、パイロットやDJ以外には理解ができないほど複雑な操作が要求されます。ボタンを押す動作は簡単でも、世の中にあるボタンのほとんどは「いつどのように押すべきなのか」を理解するために一定以上の訓練が必要になります。

by Naddsy

また、エレベーターに乗ってドアを閉じる時に閉ボタンを押しますが、ドアが早く閉まると体が不自由な人の乗り降りに支障がでることから、アメリカのほとんどのエレベーターでは稼働しないようになっているとのこと。Plotnick氏によると、横断歩道用信号機の押しボタンの中にも、設置されているにも関わらず機能していないものがあるそうです。

それでもボタンが設置されているのは、「ボタンを押す」という行為が利用者の精神衛生に対してプラスに働くからだそうです。ハーバード大学の心理学教授であるEllen Langer氏は「ボタンを押す行為は認知制御として働き、ストレスを軽減し、幸福感を増します」と説明しています。また、ドレクセル大学の心理学教授であるJohn Kounios氏は「エレベーターの閉ボタンを押すことが無駄だと知っていても、人はボタンを押したがるものです。なぜなら、エレベーターのドアが閉まるという報酬は最終的に必ず発生するからです」と述べています。

by Martin Alonso

そして、Plotnick氏は「ボタンこそが資本主義経済を大きくしました」と主張しています。19世紀に登場した最初期の「電気式押しボタン」は電灯をつけるためのスイッチ、あるいは富裕層が使用人を呼び出すためのチャイムとして登場しました。やがてボタンは自動販売機に使われるようになり、20世紀になるとさまざまなサービスが「ボタン1つで手に入る」ように改良されました。

その最たる例がAmazonのDash Button。物理ボタンをぽんと押すだけでトイレットペーパーや洗剤、インスタントコーヒーをAmazonから購入できます。なお、「注文時に支払う金額を顧客に知らせない」という理由で、ドイツでは2019年1月にDash Buttonが消費者保護法に違反しているという判決が下されました。


生活を便利にして社会を豊かにすると考えられたボタンですが、Plotnick氏が行ったアンケート調査によると、「押すだけでなんでもできてしまう」という単純さ故に「子どもが手にしたらどうなるか」という不安を抱いている人が多かったとのこと。Plotnick氏によるとこの悩みは1世紀以上も存在するもので、ボタンが登場した19世紀後半には既に「目に映るボタンを子どもが押しまくる」という事例が報告されていたそうです。

by Nikki McLeod

また、悪人の手によって社会的に望ましくない方法に用いられるのではないかという懸念を抱く人も多かったとのこと。実際に、セクハラで解雇され問題になったアメリカの名物司会者Matt Lauerは、オフィスの机に設置された「ドアを閉めて電磁ロックをかけるボタン」を悪用していたと報じられています

とりわけ、ボタンに対する懸念の最たるものに「ボタンを1回押すだけで世界が戦火に包まれる」というイメージがあります。この懸念は第二次世界大戦後の東西冷戦で顕著となり、ついには「押すだけで核ミサイルが敵国へ向かって発射されるボタン」の存在がウワサされるようになりました。実際には、核ミサイル発射への特別なプロセスはあるものの、ボタン1つで核ミサイルを打ち込むことはできません。

それでも、核ミサイルの発射ボタンへの信仰は強いようで、2018年1月にアメリカのドナルド・トランプ大統領は「私も核ボタンを持っているが、北朝鮮総書記の金正恩が持つものより大きくて強力で、ちゃんと作動する」とTwitterで発言しています。

North Korean Leader Kim Jong Un just stated that the “Nuclear Button is on his desk at all times.” Will someone from his depleted and food starved regime please inform him that I too have a Nuclear Button, but it is a much bigger & more powerful one than his, and my Button works!

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump)


ボタンの形や構造は長年にわたって変化はなく、人々がボタンに対して抱いてきた不安や不満も変わっていません。一方で、本来簡単な操作を期待されていたはずのボタンによって、機械のユーザーインターフェースはより複雑なものとなり、不必要な操作を求められることも増えています。

by SparkFun Electronics

Plotnick氏は、ボタンに関する終わりのない議論を解決するためには、日常生活の中でボタンを押す行為にもっと意識を向けるべきだと主張。「誰が、どんな状況で、どんな条件のもとで、何のためにボタンを押すのかを調べると、ボタンの複雑さと重要性を理解できるようになるかもしれません」とPlotnick氏は述べていました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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