廃棄された資源ゴミを掘り返して「新たな資源」として再利用する研究が進行中
人々の日々の生活や、企業などの経済活動から生み出されるゴミのうち、焼却やリサイクルなどで処分できないものは陸地や海中に投棄することで処分されています。そのようなゴミはもう二度と使われることはないというのがこれまでの実態でしたが、スウェーデンのリンネ大学では捨てられたガラスなどの廃棄物を資源として再利用し、さらにはそこに含まれる重金属類を取り除くための研究が進められています。
Landfills – a future source of raw materials | Lnu.se
https://lnu.se/en/meet-linnaeus-university/current/news/2018/landfills--a-future-source-of-raw-materials/
Landfills and glass dumpsites as future bank accounts of resources – waste characterization and trace elements extraction
この研究は、リンネ大学のDepartment of Biology and Environmental ScienceとFaculty of Health and Life Sciencesに在籍して博士課程にあるYahya Jani氏が進めているもの。廃棄済みのごみを掘り返して利用する「Landfill mining」に関する研究を進めるJani氏は、廃棄物を再利用して別の産業における原料として活用する方法を研究しています。
進めてきた研究結果をもとにJani氏は「埋め立て地やごみ捨て場の汚染を除去することは、財政的にも環境的にも有益です」と述べています。環境汚染や健康上の脅威、そして原材料や水、食糧、エネルギーの不足は、現在世界が直面している最大の課題です。世界では、温室効果ガスや汚染物質による水源汚染などの影響が大きく取り上げられているにもかかわらず、ごみの埋め立ては依然として世界的な廃棄物の主要な選択肢として存在し続けています。
Jani氏は、そのようなごみの中からガラスや金属を新たな方法で取り出すことで、資源として再び消費のサイクルにのせるための方法を研究しています。リンネ大学があるスウェーデンのスモーランド地方は、ガラスの工芸品が有名な地域でもあり、Jani氏が見いだす方法によってリサイクルされたガラス原料は、この地域の芸術創作に役立てられることになる可能性を秘めています。
By Maria Eklind
Jani氏は、スウェーデン南部の街・プカベルグにあるガラス工場で投棄されたガラス廃棄物から、そこに含まれる99%の金属を抽出する方法を開発しています。Jani氏が研究を進めている方法は、土壌と混ざってしまった大きさが2mm以下のガラス廃棄物を化学的抽出法を用いることで分離する方法です。またこの際には、古くなったガラス廃棄物に化学物質を混合し、ガラス廃棄物の融点を低下させた状態で加熱し、そこに含まれる金属を抽出することも可能になるそうです。
この「還元溶融法」と呼ばれる手法は、3種のキレート剤「EDTA(エチレンジアミン四酢酸 )」「DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)」「NTA(ニトリロ三酢酸)」を用いることで、古くに作られた工芸ガラス製品に含まれる鉛やカドミウム、ヒ素などの成分を99%以上回収することが可能になるとのこと。
By EHRENBERG Kommunikation
Jani氏は、「スモーランド地方にあるガラス廃棄物から金属を抽出するために私が開発した方法は、古いテレビやコンピュータのガラスなど、あらゆるタイプのガラスから金属を抽出するのに使用できます。その結果、この手法は工業施設においてガラスと金属を高い純度でリサイクルすることを可能にします。また、この手法により安価な原材料を提供することで、スモーランドのガラス産業を再生することにもつながるのに加え、地域の環境への影響や健康に対する脅威を減らすことが可能になります」と述べています。
欧州委員会の2017年の発表によると、EUに住む5億人の住民から排出される廃棄物の60%にあたる18億トンのごみが最終処分場に送られています。Jani氏は論文の中で、この廃棄物から貴重な材料を抽出することで、地球上の天然資源の過度の使用を削減し、水資源の汚染を引き起こす二酸化炭素や汚染された浸出液などの温室効果ガスの排出を削減できることを示しています。廃棄物を二次資源として再利用する方法を確立することで、廃棄物を将来に対する負担ではなく、資源を引き出すことが可能な「将来のための銀行口座」として活用するための方法の研究が進められているというわけです。
・関連記事
徳島県の小さな町でごみを減らすために行われている取り組み「ゼロ・ウェイスト運動」が今や世界中から注目を集めている - GIGAZINE
再利用・リサイクルが前提で新しく物を作るのは最終手段という「循環経済」で良好な環境とより多くの雇用が生まれる - GIGAZINE
「モッタイナイ精神」で廃棄物から巨額の利益を生み出す「TerraCycle」とは? - GIGAZINE
Appleは最終的には製品を再生資源だけで作り上げることを目指す - GIGAZINE
「ゴミがただのゴミで終わるか資源になるかは分別が決める」、果物から石けんを作る会社・Lushのゴミが資源に変わるまで - GIGAZINE
Appleが古いiPhoneをリサイクルして約1トンの「金」をゲットしたことが明らかに - GIGAZINE
・関連コンテンツ