「ゴミがただのゴミで終わるか資源になるかは分別が決める」、果物から石けんを作る会社・Lushのゴミが資源に変わるまで
せっけんやシャンプーを果物・野菜などを使って「シェフ」が「キッチン」で作る会社・Lushは、化粧品のための動物実験反対・倫理的な原材料の調達・LGBT支援宣言などの社会活動を多方面にわたって行っています。「余分なパッケージを省く」という取り組みでは、容器が不要になるように固形シャンプーや、メロン果実を使った「ソープペーパー」を使うことでごみゼロを目指したクリームソープ「ルーラード」などを開発しているほか、ゴミを資源として生まれ変わらせるためのリサイクルにも力を入れています。ということで、実際にラッシュでどのように「ゴミ」が「資源」に生まれ変わっているのか、中の様子を見てくると共に、実際に「アースケアチーム」と呼ばれるチームのスタッフにお話を聞いてきました。
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まず、ラッシュで「シェフ」の手によって果物・野菜などから入浴剤や化粧品が作られていく様子は以下の記事から読むことができます。
3分クッキングのように石けんやシャンプーを「シェフ」が「キッチン」で作る不思議な会社・Lushの「ラッシュキッチン」潜入レポ-ト
ということで、再びラッシュキッチンのオフィス階。
ここに設置されているウッディなスペースは休憩用のカウンターなどではなく……
細かく分別されたゴミ箱。「クリアボトル」「ブラックポット」というのはラッシュの製品に使われている容器のことで、社員は家で使ったラッシュ製品が空になったら会社に持って来てこの分別ゴミ箱に入れる仕組みです。
ゴミ箱の上には「ここに集まるものはすべて新しい資源として生まれ変わります」の文字。
その他、会社で出るゴミは「カン」「ペットボトル」「ペットボトルキャップ」「廃プラ」「シュレッダー」などに分けられています。
「ビン・ガラス」「乾電池・シリカゲル」などの場所もあり。さらに、ゴミ箱の横には何かの芯のような別のゴミが分けられて置かれていました。
そして、ラッシュがユーザーから回収した空容器や、会社で出たゴミは1階の倉庫スペースへと移動させられます。
倉庫の中にはこんな感じの棚がズラリと並んでいました。
小柄な人の胸ぐらいの高さはある巨大な袋を前に、スタッフが作業中。
何かを段ボール箱から取り出しています。
巨大な袋の中を見てみると、ラッシュの製品に使われているブラックポットやクリアボトルがぎっしり入っていました。ラッシュでは使用後の空容器を100%リサイクルしており、ユーザーは空容器5個をラッシュに持っていくとフレッシュフェイスマスクを1個ゲット可能です。2016年現在の回収率は約25%で、約4分の1の空容器がリサイクルに成功しています。回収された容器はまずここで仕分けをされるわけです。
さらに、スプレーボトルの上の部分だけがどっさり入った入れ物もありました。
一部の店舗を除いて、ラッシュのせっけんは小分けされた状態でお店に並んでいるのではなく、巨大なせっけんの固まりをお客さんの欲しい量に応じて量り売りするという形です。以下の写真に写っているのが、その巨大な石けんを固めるのに使ったケース。ケースの中には洗って再利用されるものもありますが、匂いがついているため1度使用したら洗浄後に資源として再利用されるものも存在するとのこと。
倉庫の奥の方に「洗い場」と書かれた札が貼ってあるスペースを発見。
ここは学食の厨房……ではなく、使用後のケースなどを洗浄する場所。ちょうどスタッフさんがホースで洗浄を行っているところでした。
洗い場の前には、青いケースが山のように積まれていました。
中に入っているのは入浴剤「バスボム」の型。これを見ると、「本当に手で作られているのだな……!」ということが実感できます。
マッサージバーの型もありました。まるで、お菓子作りの時にチョコレートなどを流し込む型のようです。
そして、洗浄され、分別されたゴミは1箇所に集められます。
大量のドラム缶は製品に使われるグリセリンが入っていたもの。
巨大な青いボトルにはバスボムなど、製品の残りかすが入っているとのこと。これらの残渣物は1日あたり100~150kgも生まれるそうです。
「混合プラ」の張り紙の下には、靴などがぎっしり入った巨大ボトル。これら、細かく分別ができないものは最終的にアスファルトの下に敷かれる資材として生まれ変わります。
製品には蜂蜜が使われているので、蜂蜜の入っていた缶も大量にありました。
プラスチックは「有価プラ」「廃プラ」に分けられています。
左側にあるのはエッセンシャルオイルが入っていた容器。かなりきっちりと秩序を持って分けられているゴミは、たしかに見た目からも「ゴミ」という印象を受けません。「ゴミがただのゴミとして終わるか資源に生まれ変わるかは分別で決まります」というラッシュの中の人の言葉が非常に印象的でした。
さらに、生鮮食品を原料とするラッシュからは大量の生ゴミも出るのですが、これは堆肥として生まれ変わっているそうです。
倉庫の中をてくてくと歩いていると……
荷物を置く台を発見。実はこれも、ラッシュ従業員がDIYで机の材料にすることがあるとのこと。
場所を移動して、実際の製造現場の様子を見せてもらいました。
製造現場には「どこの八百屋さんかな?」というような、大量の果物が置かれています。取材で訪れた時にはパイナップル・マンゴー・キウイなど、夏らしい果物がたくさんありました。
キウイの皮を手作業で剥いていくスタッフさん。
そして、これらの果物からは、当然のことながら皮や芯など大量のゴミが生まれます。
バナナの皮・パパイヤの皮と種・卵の殻など。これらが、先ほど見せてもらった堆肥へと変化していくわけです。
また、ラッシュキッチンの入り口にはたくさんラベンダーとローズマリーが植えられていましたが、実はこれは、上記の堆肥を使って育てられたもの。
さらに同じ堆肥によってブルーベリーも育てられていました。こっちは社員が夏になるとむしゃむしゃ食べるそうです。
そして、倉庫にあった台を再利用した机がコレ。表面に「LUSH」という文字が黒いスプレーで吹きかけてあり、果てしなくオシャレでした。
ということで、ラッシュのリサイクルを担当する草野さんに、ラッシュの取り組みについていろいろ聞いてみました。
GIGAZINE(以下、G):
ではまず、ラッシュが行っているリサイクルの取り組みについてお聞きします。取り組みが始まったのはいつ頃からですか?
草野さん(以下、草野):
5年ほど前です。その頃はリサイクルの数値自体を算出するような状況ではなかったですね。後から算出してみたら、リサイクルが最高で40%前半も行っていなかった時代。それで、ちょっとその辺のところを意識するようになって、最初の1年は、ラッシュキッチンで働いている人たち全員に、「廃棄物の分別の仕方」というレクチャーをしました。
G:
社員研修から入ったんですね?
草野:
はい。3カ月ぐらい掛けて1人1人に分別のレクチャーをすることによって、「分別をより良くすることによって、リサイクルというのはすごく数字になって出てくる」ことを理解してもらいました。
G:
社内の取り組みから始まったと。
草野:
そうです。元々イギリスの方でカップのリサイクルは行っていましたが。
G:
イギリスで行われているリサイクルの取り組みと、日本の取り組みはまた別なんですか?
草野:
はい。日本の場合、「製造から出る廃棄物を何とかしようね」というのが始まりでした。「イギリスがやっているからやろうね」というよりは、独自性が強かったかもしれませんね。でも後から、イギリスの会社で行っていることと私たちがやっていることはリンクしている、というのが見えてきて、だからここまで来れたのかなというのもありますね。
G:
草野さんが担当されている部署は何にあたるのでしょうか?
草野:
アースケアチームです。
G:
アースケアチーム。アースケアチーム自体も5年前頃にできたんですか?
草野:
アースケアチーム自体は、できたのが最近なんです。
ラッシュ広報・小山さん(以下、小山):
リサイクルの取り組み自体は存在したのですが、組織としてのファンクションができたのは最近ですね。
草野:
アースケアチームの前はクリーンチームと呼ばれる部署にいました。
G:
アースケーチームの前身がクリーンチームなのですね。
小山:
そうですね。クリーンチームがアースケアチームになることで、より広がった考え方が行われるようになりました。例えば、うちはベジタリアンの会社なんですけれども、会議などのランチやディナーで肉を食べなかったことでどれぐらいの水が削減できたかとか、そういうものをちゃんと算出したりとか。
G:
数字として算出できるんですね。算出したものは社員が確認できるように、公開されるのですか?
草野:
そうですね。定期的にレポートを作成をするようになりだしたのが、ちょうど去年の暮れぐらいからです。今は電力の自由化に伴い、自然エネルギーを使った電力をどのようにして僕たちの業務の中に取り入れるか、ということに取り組もうとしています。そのために、「今どれだけ僕たちは自然エネルギーを使用しているのか」という調査をしたり、それを毎月データとして集めたり、そういう作業もやっていますね。
G:
アースケアチームは、電力など、今の実情を分析して、「何ができるのか?」を考える部署ということですか。
草野:
そうですね、はい。何ができるかというか、「よりエコな、クリーンな地球にしていくために、次のアクションはこれだよね」と提案するところまで。
G:
今、具体的に提案されていることはありますか?
草野:
まず、電力の方向では、お店の方が手つかずの状況でいました。なので、自分たちで電力会社を見つけてきて、そこを探していこう、というのをやっています。
小山:
電力自由化が大きく報道されましたが、そのタイミングで工場や店舗を使って、電力を自分たちで選択する重要性について、キャンペーンを通じてお客様にお伝えすることもありました。実際に商品とは全く関係無い部分があるんですけれども。
G:
具体的にはどのようなキャンペーンだったのでしょうか?
小山:
お客様がお買い物をしに来られるときに、商品の価値だけではなくて、ショップのスタッフがそういうお話をさせていただくんですよ。例えば電力であったり、LGBTであったり、動物実験であったり、その時その時でテーマを変えて、お買い物に合わせてお話をしていくんです。それによってお客様に考えていただくという。うちはそういう、ちょっと変わった会社なんですけれども(笑)
ラッシュ広報・佐々木さん:
あとは動物実験反対のマークも全商品にデザインしてあり、「このマークを見たことはありますか?」みたいな感じで、そこからお客様とコミュニケーションを取ることもあります。
G:
ちょっと話が変わるんですが、草野さんは、そもそもどういう経緯でチームに入ったんですか?
草野:
昔、「もったいない」というのが流行りましたよね。もともと環境とか廃棄物を、そういうスタンスで、そういう視点で物事を見るのがすごく好きだったんです。「これってもしかして、捨てるのはもったいないのでは?」みたいな。それが業務として付いてきたという感じです。ラッシュへは知り合いの紹介で、ご縁があって来たので、もう、たまたま偶然、という感じなんですけれども。
G:
何か、人生にぴったりフィットしたという感じですね。
草野:
そういうことですね。その前にいっぱい紆余曲折あるんですけど(笑) まぁ、本当に偶然と言っていいぐらいマッチしたんです。自分で意識した訳じゃないんですけど。ちゃんと自分の意見を日々のルーティーンの業務に活すことができたので、物事がトントン拍子に進みました。
G:
ラッシュの信念である「ハッピーな人がハッピーなソープを作ることを信じています」じゃないですけど、自分と仕事がフィットしたんですね。
草野:
もう、本当にそうですね。そういうことが、あり得たんですよ。
G:
ありがとうございました。
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