コーヒーには発がん性物質が含まれている、という話は本当なのか?

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アメリカ・カリフォルニア州で、コーヒーに発がんリスクを表示するべきか否かということが法廷で争われています。2010年に始まった訴訟は2018年前半にも判断が示される予定ですが、実際のところコーヒーに発がん性物質は含まれているのか、複数の研究結果がその見解を示しています。

Does Coffee Contain a Carcinogen? Here's What the Science Says
https://www.livescience.com/61598-lawsuit-warns-of-coffee-cancer-risk.html


アメリカ・カリフォルニア州には、がんや先天性欠損症、そのほかの生殖危害を引き起こすとが知られている化学物質が製品に含まれる場合に、その化学物質の相当量を警告表示しなければならないということが「プロポジション65(1986年安全飲料水および有害物質施行法)」によって定められています。人体に対して重大なリスクがない場合には通知・警告を免除されるのですが、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、警告表示は「ありとあらゆる場所にある」とのことです。

この警告表示をコーヒーに対しても適用すべき、として2010年に弁護士のラファエル・メッツガー氏らがコーヒーの製造・販売を手がける数十社を提訴。訴えられたスターバックスやキューリグ・グリーン・マウンテンは、コーヒーに含まれるアクリルアミドは無害で、コーヒーがもたらす健康上の利点の方が大きいと主張しています。

アクリルアミドは発がん性が強く疑われる物質で、2005年には国際連合食糧農業機関(FAO)とWHOからなる合同委員会が「食品中のアクリルアミドは健康に害を与える恐れがあり、含有量を減らすべき」と勧告しています。

日本の農林水産省のウェブサイトではアクリルアミドが含まれている食品のリストが公開されており、それによるとインスタントコーヒーのアクリルアミド濃度の中央値は0.58mg/kg、豆から入れたコーヒーの場合は0.24mg/kgで、ほうじ茶(茶葉)は0.33mg/kg、ポテトスナックは0.55mg/kgとなっていました。

アクリルアミドが含まれている食品:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/about/syokuhin.html


アクリルアミドはアミノ酸の一つであるアスパラギンと糖類のメイラード反応によって生成されると考えられており、日常の食生活で摂取するアクリルアミドの量を減らすためには油で揚げたものや茶色く焼けたでんぷん質の多い食品を減らす必要があると2004年2008年の研究から判明しています。また、喫煙者は非喫煙者に比べて3~5倍のアクリルアミドを摂取しているため、禁煙によってもアクリルアミドの摂取量を減らすことが可能です

アメリカ国立がん研究所(NCI)によると、体内でアクリルアミドはDNAに損傷や変異をもたらすグリシダミドと呼ばれる化合物に変換されます。また、マウスの実験でがんのリスクを増加させたことも知られていますが、人間に与える影響についてはまだ証拠が不十分であるとNCIは示しています。

研究者の中にはアクリルアミドが人間においても発がんリスクを上げると主張する人もいますが、一方で人体には大きく影響しないと考えている研究者も。これは、人間の食事に含まれるアクリルアミドの量を測定するのが難しいことに加え、人間とマウスではアクリルアミドを吸収・代謝する速度が異なるためです。

しかし、マウスでの実験でがんとの関連性が認められているため、アクリルアミドは国際がん研究機関(IARC)のリストの中に「発がんの可能性があるもの」として記されています。このリストを理由として、カリフォルニア州の訴訟で原告となった人々はコーヒーを製造・販売しているスターバックスやセブン-イレブンなどを訴えたというわけです。

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ただし、アクリルアミドはIARCのリストに名を連ねているものの、コーヒー自体はリストに含まれません。2016年にはWHOがコーヒーはがんの原因にならないことを発表しており、コーヒーを飲む人は心血管疾患や神経性疾患、糖尿病のリスクが低いことのほか、肝臓がん子宮内膜癌といった特定のがんのリスクを下げることと関連性があるという報告もあります。

ただし、「熱すぎる飲み物を摂取すること」は食道がんとの間に関連性があると見られているため、コーヒーを飲む時は適温になるまで冷ますことが推奨されています。

by Karl Fredrickson

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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