「健康にいいコーヒー」の作り方を科学する
by Carolina Ponce
「コーヒーは体にいい」という研究結果がしばしば発表されますが、コーヒーには種類がたくさんあるわけで、ひき立て豆でいれたエスプレッソとインスタントコーヒーは同じように体に影響を与えるのか?という点を疑問に思った人もいるはず。ニュースメディアのArs Technicaは、そんな人の疑問に答える、「どんなコーヒーが体にいい影響を与えるのか?」という科学を明らかにしています。
The science behind a good cup of coffee | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/01/how-to-science-up-your-coffee/
「コーヒーは心疾患・肝臓病・糖尿病を防ぎ、寿命を延ばす効果もある」など、現在ではコーヒーの効能をうたうさまざまな研究結果が発表されています。しかし、一口に「コーヒー」といっても、豆の種類・ロースト具合・ひき方・水・抽出法などは多岐にわたり、その種類はさまざま。現在発表されている研究の多くは、コーヒーの種類には着目せず、デカフェを含めた全ての「コーヒー」について論じていますが、細かく見ていくと、どのようなコーヒーの効能が高いのでしょうか。
◆コーヒーはどんな化学物質が含まれているのか?
by Niall Kennedy
コーヒーが健康に与える影響には、コーヒーに含まれる化学物質が大きな役目を果たしていると考えられています。コーヒーに含まれる化学物質のうち、代表的なものは以下の通り。
・カフェイン
カフェインの効能には覚醒、疲労を取ること、長期記憶力と認知能力の向上などが挙げられます。また、代謝速度やエネルギーの消費量を上げることから、メタボリックシンドロームの予防にもよいとされています。ダイエットに効果的なカフェインの量は1日400mgで、ひき方にもよりますが、3~5杯のコーヒーに当たるとのこと。なお、それ以上のカフェイン摂取は不安・過敏症・胃腸の不調・筋肉のふるえなどを引き起こす可能性があるので注意しましょう。
・クロロゲン酸
クロロゲン酸はポリフェノールの1種で、心疾患や2型糖尿病の予防に役立つと考えられています。また、抗炎症や抗菌の性質も持つとのこと。
・トリゴネリン
トリゴネリンは脳の老化や認知症を予防する効果があると言われています。また、がん細胞の活性化を抑えたり、バクテリアの駆除、血中のコレストロール値・血糖値を下げることにも役立ちます。
・カーウェオールとカフェストール
クロロゲン酸とカーウェオールはジテルペンの1種でコーヒーの苦みを作り出す化学物質。がん細胞と戦ったり、がんを予防したりする効果がありますが、一方でコレストロール値を上げるとも言われています。
◆豆の種類
by RVCTA Imágenes
市場に出回っているコーヒー豆は大きく分けてロブスタコーヒーノキとアラビカコーヒーノキという2種類の木から採られます。アラビカ種はアロマとバランスの取れた味が特徴で、トリゴネリンとジテルペンをより多く含んだもの。一方、ロブスタ種はカフェインとクロロゲン酸の含有量が多いのが特徴です。
アラビカ種とロブスタ種でどれほど化学物質の含有量が違うのか?ということを示すグラフがコレ。ロブスタ種におけるクロロゲン酸の多さが目を引きます。
◆ロースト方法
by Daniel Hoherd
豆をローストするのに決まった方法はありませんが、多くの豆は180~250度で大体2~25分ほど焼かれています。始め豆は緑色でですが、ローストされることで茶色に変わり、私たちがよく知るおいしいコーヒーを作れる状態になるわけです。ローストされることによって豆の内部では脂肪や糖が減少し、アミノ酸と糖が反応、そして分解生成物が連鎖反応を起こします。これによってコーヒー独特の香りが発生します。
「深いり豆はカフェインの量が少し少ない」という研究結果も存在しますが、「豆のいり方によってカフェインの量は変わらない」という研究結果もあり、全体的に見ると深いりか浅いりによってカフェインの量は大きく変わらないと見てよさそうです。
一方で、心疾患や2型糖尿病の予防に役立つとされるクロロゲン酸について言えば、深いりすると量が減ってしまうということが2013年の研究で明らかになっています。以下がロースト具合によってクロロゲン酸がどう変化するかを示したグラフ。緑色のグラフはネスレのインスタントコーヒーですが、オリジナル・デカフェ共にクロロゲン酸の量はやや高め。クロロゲン酸の含有量が高い日本では販売されていないネスカフェ・グリーンは、生豆なみに効能があるといわれているインスタントコーヒーです。
◆水
by f∞lish kamina
「蒸留水を使った方がおいしいコーヒーをいれられる」と考えている人もいますが、近年の研究では陽イオンを含む硬水を使った方が、コーヒーの味が豊かになると分かっています。特に、カルシウムやマグネシウムがコーヒーの味を変えずに風味を引き出してくれるそうです。
◆ひき方と抽出方法
by Øystein Alsaker
一般的に豆を細かくひくとコーヒー1杯に含まれるカフェインの量は多くなり、家庭用のミルで38秒間ひいたコーヒーと、5秒しかひかなかったコーヒーを比較したところ、前者は後者の2倍のカフェインを含んでいたとのこと。
また、コーヒーの入れ方にはトルコ式、フレンチプレス、ドリップ式、エスプレッソなど、さまざまな方法がありますが、ポイントとなるのは「圧力」「時間」「水の流れ」の3要素。
エスプレッソは容器につめ平らにならしたコーヒー豆を、91~96度のお湯で加圧しながらこす、という方法が採られます。カフェインが凝縮されており、2012年に発表された研究によるとカフェイン含有量は100mlあたり141~253mgとのことですが、基本的にエスプレッソは1杯あたり30~40mlなので、一度に摂取するカフェイン量はそこまで多くない様子。一方で、ドリップ式の場合、100mlあたりのカフェイン含有量は57~115mlとやや少なめですが、1杯あたり8オンス(約240ml)で提供されるため、カフェインの量は135~271mgとエスプレッソよりも多くなります。また、クロロゲン酸についても同じ事が言えるとのことなので、コーヒーに含まれる化学物質を多く採ろうと思ったら、エスプレッソよりもドリップ式のコーヒーが向いていると言えます。
なお、カフェインやクロロゲン酸といった化学物質はコーヒーメーカーから出る最後の1滴に最も多く含まれるそうなので、上記の研究では実験されていませんが、化学物質をたくさん採ろうと思ったらフレンチプレス式がベストなのかも。
そして、注意すべきはコーヒーを作ったらそこに余計なものを加えないこと。コーヒーそのもの自体はカロリーが低いのですが、牛乳やクリーム、砂糖を加えすぎると、カロリーと脂肪の塊になってしまう可能性もあります。
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