セキュリティ

偽のオンラインストアを使ってマネーロンダリングする驚愕の手法が明らかに

By Hamza Butt

ロンドンで家庭用品を提供するふりをした偽のオンラインストアにより構成されるネットワークが、インターネット賭博の支払い用窓口として使われてきたことがロイターの調査により明らかになっています。

Exclusive: Fake online stores reveal gamblers' shadow banking system | Reuters
http://uk.reuters.com/article/us-gambling-usa-dummies-exclusive-idUKKBN19D137

ヨーロッパで運営されている生地・DVDケース・地図・ギフト梱包・機械テープ・ピンバッジなどを扱う7つのサイトが、実際には商品を取り扱っていない偽サイトであり、多くの国やアメリカの一部の州で違法とされているインターネット賭博の支払いを隠すためのシステムの一部として機能していることが明らかになっています。取り扱われている金額は400億ドル(約4兆4600万円)とも言われています。


これらの偽オンラインストアの存在は、インターネット上に匿名で掲載された文章より明らかになりました。2016年12月にはこれらのサイトのひとつである「My Fabric Factory」上で、ロイターの記者が商品をひとつ注文します。しかし、注文した商品が届くことはなかったそうで、しばらくしたあとに取り扱い元から「製品の在庫切れ」というメールが届き、支払いはキャンセルされたそうです。

偽オンラインストアのひとつである「My Fabric Factory」

My Fabric Factory


このことについてロイターの記者がMy Fabric Factoryのヘルプデスクに直接電話をかけて問い合わせたところ、決済代行のAgora Online Servicesで働くというアンナ・リチャードソンさんが電話に出たそうです。リチャードソンさんは電話越しに「(リチャードソンさんが働く)Agoraはポーカーの支払いを処理する業務を行っており、その顧客は数百のオンラインギャンブルサイトであること」「どんな種類のインターネット賭博サイトを使っていても、大抵の場合は我々(Agora)のもとで処理される」などと述べたそうで、オンラインストアが本来の目的とは異なる用途で利用されていることが明らかになります。

また、ロイターではその他6つのサイトでも商品を注文したそうですが、どのサイトで注文しても商品が届くことはなく、支払いは全てキャンセルされたそうです。なお、これらのサイトもドメイン名がAgoraの所有するドメインのひとつである「agrsupport.net」のメールサーバーを使用していました。なお、ロイターは調査を続けることでAgoraで働く3人の従業員と接触することに成功したそうで、その内のひとりは「ギャンブル人の大半はアメリカ人ですが、アメリカでは違法なため我々の拠点はドイツにある」と語ったそうです。

By Hamza Butt

VISAやMasterCardなどのクレジットカード会社は特定の国で違法であるとされる取引を識別できるように、どのタイプの購入処理が行われたのかを確認するために販売者のカテゴリーごとにコード化を行っています。例えばギャンブル取引には「7995」というコードが与えられており、このコードを持つ購入処理は厳重な調査の対象となりやすいというわけ。

今回ロイターが発見したネットワークは、インターネット賭博の取引をギャンブルではなく「その他の購入処理」として扱うことで、VISAやMasterCardなどのクレジットカード会社による調査の目をかいくぐっていました。7つの偽オンラインストアの決済代行はドイツのDeutsche Paymentが担当しており、同社は世界的なペイメントカードセキュリティ機関であるPCI Security Standards Councilの認定を受けています。また、ヨーロッパのVISAから2017年5月に承認された代理店リストにも含まれています。

銀行やクレジットカード会社と協力する金融コンプライアンス会社の「G2 Web Services」で製品責任者を務めるダン・フレッチリング氏は、「トランザクション・ロンダリングは重大な不正行為であり、犯罪であることが多い」「これは購入側と商人側の合意に違反しており、禁止された商品やサービスが支払いシステムに入ることを許してしまうことにもなります。さらに、マネーロンダリング防止法に逆らうことにもなります」と強く批判しています。

By Keith Cooper

ロイターは不正・詐欺の専門家から、オンライン商取引が「危険性が高い」と評価される地域におけるゲーム・ポルノ・薬物などの取引を支援することにつながっているとしています。専門家の中には、数千人のオンライン商人が同様の技術を使ってクレジットカード会社の調査をかいくぐっていると指摘する人もいます。

銀行と協力して疑わしいサイトを特定するサイバーインテリジェンス会社のEvercompliantでCEOを務めるロン・タイチャー氏は、「これはマネーロンダリングにおけるデジタル進化です。そして唯一わかるのは、これまでの手法よりはるかに簡単で捕まえるのはずっと難しいということです」と述べています。

また、専門家によればこのような偽オンラインストアは一般ユーザーには見つかりづらいように作られており、一般ユーザーによる取引が発生するのは非常にまれなことだそうです。なお、7つの偽オンラインストアはすでに支払いを受け付けなくなっているそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
タックスヘイブンの中心となっているイギリスこそが世界最悪の腐敗国家 - GIGAZINE

Bitcoinは通貨ではないため「マネーロンダリングには該当しない」とSilkRoad創設者が主張 - GIGAZINE

Bitcoinを簡単に盗み出すための3つのステップとは? - GIGAZINE

インドでクレジットカードを使うとほぼ確実に情報が盗まれるリスクが判明 - GIGAZINE

クレジットカード利用の買い物で小売業者が付加料金を自由に課せる新制度がアメリカで開始 - GIGAZINE

in セキュリティ, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.