「クリエイティブな人を生み出すオフィスとは?」を体感する宿泊施設予約サイト「Booking.com」オランダ本社の写真集まとめ
片手で足りるほどだった従業員を10年余りで1万3000人にまで増やした宿泊施設予約サイトが「Booking.com」です。オランダに本社を持ち、創業当初はオランダ国内の宿泊施設10軒しか登録されていなかったのですが、2016年には世界220カ国・100万軒以上の登録数に達し、1日あたりの予約可能な客室数は2300万となっています。日本でもテレビCMが流れ始め知名度を上げているBooking.comオランダ本社がどんなところなのかを見てみるべく潜入&ギリアン・タンズCEOに創業秘話などを聞いてきました。
国内も海外も!ホテル・旅館の予約はBooking.com
http://www.booking.com/index.ja.html
Booking.com本社があるのはオランダ・アムステルダム。レンブラント広場にある銅像の後ろにそびえ立っています。
建物には「Booking.com」の文字。もともとは銀行だった建物を利用しているそうです。
入り口はこんな感じ。
入ってすぐに受付があります。
古さと新しさが入り交じった雰囲気です。
コーヒーメーカーなども置いてあり、1人で時間をすごす人や話し合う人々など、絶えず入れ代わり立ち代わり誰かがいました。本社オフィスでは1400人従業員が働いているそうです。
テーブルに置いてある果物はデリバリーで会社に届けられるらしく、いわば日本のオフィスグリコ的存在だそうです。
エレベーターで移動し、さっそく中へ。建物は6階建てで、3階は別の会社が入っているそうですが、後はBooking.comのオフィスとなっています。
簡易キッチンには「Booking.com」と表示されたコーヒーメーカーや果物、ジュースの入った冷蔵庫などが置かれています。
「若い人々にインスピレーションを与えるような場所でなければならない」ということで、ここが最近現代的なデザインに改装されたというエリア。広いスペースにいくつかテーブルやソファが置いてあり、自由に作業できるようになっています。よりプライバシーがあり、静かな場所が欲しいという時はガラスで仕切られた部屋に入ればOK。仕事のやり方や内容やによって柔軟な働き方ができるオフィスになっているというわけです。
ガラスで仕切られたミーティングルームにはそれぞれテーマがついています。以下の写真に写っているのは「Greenery(緑)」という部屋。自然をテーマにした部屋なので回りには植物が植えられています。
部屋の中には大きなテーブルとイスが10脚。インテリアもオフィスにありがちな無機質なものではなく、暖かみのあるモダンなデザインです。
それぞれの部屋の壁には巨大な写真が掲げられています。これは世界各地に存在するチームによって撮影されたもの。以下のアメリカヘラジカはフィンランドのチームによって撮影されたとのこと。
写真の隅っこには「写真のアメリカヘラジカのように、私たちフィンランドチームは一見するとシャイで内気です。しかし内面は温かく、オープンで、誠実です」と書かれていました。
カフェテリアを通りつつ移動します。
カフェテリアの中には小さなコーヒーバーが2つ。
カフェテリアは全面ガラス張り。アムステルダムには建築物の高さ制限があるので、オランダの首都であるにも関わらず高層ビルが立ち並ぶことなく、カフェテリアからは美しい景色を一望することができます。
黄色い壁には世界中の写真が並べられていて、ちょっとした展示会のよう。
カフェテリアの奥には食べ物が用意されるスペースがあります。
訪れた時はまだ午前中だったので、準備中でした。のちほどランチの様子もレポートするのでお楽しみに。
カフェテリアを出てさらに進みます。建物の真ん中は吹き抜けになっていました。
共有スペースだけでなく、PCの置かれたそれぞれのデスクがあるオフィスももちろん存在します。オフィスもガラス張りなので、外部からスタッフが仕事する様子は丸見え。かなりオープンです。
以下は、もともと上記のようなオフィスだったところを共有スペースに改装した部分。従業員の約半数が女性とのことで、カジュアルな服装をした女性社員や男性社員が作業したり談笑したりしている様子を見ると、ここがオフィスであることを忘れてしまいます。公私をわけ、仕事とプライベートで服装が異なる会社も多く存在しますが、Booking.comでは働くことがライフスタイルの一部になっているような印象を受けました。
イスの下にはコンセントなどが設置されています。テーブル・イスのデザインは3パターンありましたが、ぼっち席がないのが印象的。
「卓球台の売上げからテクノロジー業界の盛衰がわかる」とさえ言われていますが、Booking.comにもその他のIT企業にもれず、卓球台やビリヤード台が置いてありました。
フーズボールや……
アーケードゲームも置かれていました。午前中ということもあってか、訪れた時には無人でしたが、いつもは大抵誰かが遊んでいるそうです。
そして、最上階である6階へ。
6階にはなぜかアムステルダム市内のように赤い自転車専用レーンが敷かれています。
「外に出た?」と思ってしまいますが、ちゃんと室内です。
扉を開けて中に入るとこんな感じ。
「長時間座っていることは喫煙並に人の寿命を縮める」ということで、スタンディングデスクを使用している人もいました。
実はこれ、普通のデスクとスタンディングデスクがあるのではなく、デスクの高さが自由に変えられるようになっています。以下のムービーからボタン1つで自動的にデスクの高さを調整する様子を見ることが可能。
「Booking.com」オランダ本社オフィスにスタンディングデスク - YouTube
また、ここにもガラスで仕切られたミーティングルームが存在しました。以下は日本の姫路を名前に掲げたミーティングルームですが、表記は「HEMEJI」になっています。
中はこんな感じ。カーペットなどもテーマに沿った形でそれぞれの部屋で異なり、見ているだけで楽しいです。ここは大きなテーブルがなく、ソファと小さなテーブル、モニターが設置されていました。
ソファの後ろには美しい桜の写真。
「日本の国花の1つである桜は、有名な国立公園などに行かなくとも、春になるとあちこちで見ることができます。この写真はお花見パーティーを友人と自宅の近所でした時に撮影したものです」というコメントが添えられていました。
ミャンマーにあるバガンの名前を冠された部屋は使用中でした。赤いテーブルや独特な模様のカーペットがオリエンタルな雰囲気を醸し出してます。
さらに、屋上に出ることも可能。
屋上は以下のような感じ。
屋上があっても従業員に使う余裕なんてないのではないか……?と思っていましたが、実際に屋上で外の景色を長めながら話をしている人も。昼休みでもなく、就業後でもないタイミングで利用される屋上やカフェテリアなどを見ると、好きな場所で自分にあったスタイルで働いているというのがよくわかります。
大きな時計塔があり……
柵の外をのぞくと、レンブラント広場を一望できました。
ぐるりとオフィスを見たところで、会議などに使われるボールルーム「Olympus」へ。
Booking.comの本社がオランダにあるということも、あまり知られていないということで、Booking.comがどんな会社なのかCEOのギリアン・タンズ氏にいろいろ聞いてきました。
Booking.comが設立されたのは1996年、まだインターネット上にウェブサイトが10万ほどしかない黎明期でした。オランダ人は旅行好きということで、当時オランダのトゥウェンテ大学の情報工学部を卒業したところだったGeert-Jan Bruinsma氏によってオランダの宿泊施設予約サイト「Booking.nl」として開設されました。現在のCEOであるギリアン・タンズ氏は片手で足りるほどの従業員しかいなかった2002年からBooking.comで働きだし、プライスライングループへの買収などを経て、会社が1万3000人のスタッフを抱える世界的企業になるまでを見てきた人物です。
Bruinsma氏によって運営されていた「Booking.nl」は当初、ウェブサービスの収益だけで生活ができるような状態ではありませんでした。タンズ氏はホスピタリティを勉強していたため、自分の知識が役に立つのではないかと一緒に仕事を始めたそうです。
オランダは小さな国なので、オランダの宿泊施設のみを扱うには限界がありました。そのため国外に目を向けるまでに時間はかからなかったのですが、2002年ごろは宿泊施設予約サイトに対する関心が少なく、投資を受けることもままならなかったとのこと。一方で、ヨーロッパの方でビジネスを成功させたかったプライスライングループはパートナーを探しており、両者の目的が合致したことでBooking.comは2005年に買収されるという形を選択したそうです。そして、創業時は10軒ほどしか登録がなかった宿泊施設を100万軒以上に、片手で足りるほどだった従業員は1万3000人にまで増えたわけです。
Q:
タンズCEOがこれまで行った決定の中で最も影響力の大きかったものは何でしょうか?
ギリアン・タンズCEO(以下、タンズCEO):
Booking.nlの時代から「アムステルダムだけではやっていけない」と思っていましたので、外に出て現地の人々とやりとりをしていこうと決めたことが最も大きな決定と言えます。Booking.comの創業者はExcelシートで事業ができると考えていたのですが、私は接客業で働いていたので、「宿泊施設はカスタマーと直接面している」と考え、コンピューターを越えてスタッフを宿泊施設にまで送るようになりました。
Q:
Booking.comがここまで成長してこれた競合優位性は何でしょうか?
タンズCEO:
たくさんあります。まず、地元に存在しながらも世界に広がっていけること。行きたい場所に合わせて世界規模でスケールを拡大していけることです。また、情報入手や予約の方法をできるだけ簡単にしたというところが強みだと思います。予約した宿泊施設と実際に行った宿泊施設が同じであることも求められるので、コンテンツは常にアップデートされ続けています。
そして、会社内の文化、「起業家精神」も重要です。Booking.comには世界100カ国の従業員がいますが、彼らは「起業家精神」を好みます。若者が学べ、失敗してもいいという環境の中で、多くの従業員が決定権を持ち、日々イノベーションを起こしているのです。
Q:
1996年というとエクスペディア設立の年でもありますが、Booking.comがアドバンテージを得た最大の要因は何だと考えていますか?
タンズCEO:
エクスペディアは飛行機やレンタカーの予約を含めた総合的な旅行予約サイトです。一方、Booking.comは宿泊施設のみにフォーカスを当てています。宿泊施設だけでもかなりの時間を要したので、やるべきことが多いエクスペディアはもっと大変だったと思います。Booking.comは1つのものにフォーカスしたことで、より速いスピードで拡大することができたのが最大のアドバンテージだと考えています。
Q:
プライスライングループに飛行機やレンタカーを予約するサービスがありますが、それらと連携して新しいサービスを始める予定はありますか?
タンズCEO:
同じくプライスライングループのアゴダ(Agoda.com)がBooking.comの宿泊施設を取り入れているように、カスタマーに利益があるならば、その可能性もあります。
Q:
その時に、Booking.comの中でレンタカーなどを含めたトータルな予約ができるという方法は取らないのでようか?
タンズCEO:
もちろん、他の企業との連携を行ってはいくのですが、カスタマーにとって、レンタカーの予約などは宿泊施設を決めた「後に」起こすアクションです。Booking.comはそれよりも、口コミなどの情報を提供して、旅行者が「これからどこに行こうか?」ということを決定する手助けに力を入れていきたいと考えています。
Q:
日本では宿泊施設から航空券からレンタカーまで、全てを丸ごと予約してしまうタイプの予約方法を好む人も多いのですが、国ごとにサービスの内容を変えていくということは考えられますか?
タンズCEO:
可能性はあります。ただ今の日本ではまず、宿泊施設を増やすということに取り組んでいます。今、ニーズとして増えているのは直前予約です。つまり、その時点では飛行機はもう予約していると考えられるので、飛行機の予約をしなければいけないというニーズはまだ届いていないという状況です。
Q:
今後、ウェブサイトを使った予約ではなく、Siriといった人工知能を用いるなど「ウェブサイトを使わない予約方法」を行うことは考えていますか?
ギリアン・タンズCEO:
そうですね。これからどのように進んでいくかの方向はいろいろあります。現在は旅行者と宿泊施設のメッセージをリアルタイムで翻訳して、両者が直接やりとりできるようにするブッキング・メッセージという機能がありますが、これが音声化することも考えられます。ニーズに合わせて進化をしていくと考えられます。
・つづき
【1日230円の食べ放題ランチ編】「クリエイティブな人を生み出すオフィスとは?」を体感する「Booking.com」オランダ本社潜入レポート - GIGAZINE
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