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日本動画協会(AJA)、東京国際アニメフェアが「実質的には実行不能な事態」と声明を発表


東京都の青少年健全育成条例改正案を巡って、石原都知事の不誠実な発言などに不信感を抱いた角川書店や講談社、集英社などのコミック10社会が東京国際アニメフェアへの参加拒否を発表したのは記憶に新しいところ。その後、12月14日には菅直人首相が同条例改正案に対して「日本のアニメを世界に発信することも重要」と懸念する声を挙げましたが、12月15日に都条例改正は可決されました。

本日、この話題で揺れる東京国際アニメフェアで実行委員会事務局を務める日本動画協会(AJA)が声明を発表しました。その内容はコミック10社会の表明を支持しつつも、アニメフェアの運営担当として、東京国際アニメフェアはこのままでは実質的には実行不能な事態にあることを憂慮したものとなっています。

声明全文と詳細は以下から。
以下は本日、一般社団法人日本動画協会(AJA:The Association of Japanese Animations)から東京都青少年健全育成条例改正に関する見解につきまして発表された声明です。

平成22年12月21日
 東京都青少年健全育成条例改正に関して
  一般社団法人日本動画協会(印)

 周知のとおり、東京都の青少年健全育成条例改正案が、今月15日、都議会本会議で可決、成立しました。
 本件都条例の改正においては、漫画・アニメーションの販売規制とともに、表現内容も規制対象とされています。
 ところが、その規制の対象や要件は曖昧であり、憲法で保障された表現の自由の精神に照らして大きな問題があるものと言わざるを得ません。
 しかも、本件都条例改正により規制表現の対象となったアニメーションの制作を行っている制作会社は、映像表現者として表現の自由を我が憲法上保証され、その業界団体である当協会に対して告知やヒアリングがなされることが、憲法の定める適正手続きの保障の見地からは必要であるにもかかわらず、かかる手続も一切なされることなく、一方的に法案が可決されてしまいました。
 従って、当協会としましては、本件都条例改正を極めて遺憾に思っております。

 そして、同じく本件都条例改正の規制対象とされた漫画に関しまして、コミック10社会他多くの団体が、本件都条例改正に抗議と反対の意を表明されています。
 これは、漫画家の表現の自由を守ろうという見地からのものであって極めて正当なものである上に、本件都条例改正の規制内容が曖昧であり、適正な手続も欠如している現況下においては、当協会としましては、コミック10社会による抗議・反対の意の表明に賛同し、これを支持するものであります。

 コミック10社会は「東京国際アニメフェア2011」への協力・参加を断固拒否する旨を発表されていますが、東京国際アニメフェアは、世界中に日本のアニメーションの価値を伝え、評価を高めた実績を持つすばらしいイベントであり、当協会は順当な開催を望むものであります。
 しかしながら、コミック10社会の不参加と協力拒否により、「東京国際アニメフェア2011」は参加社の大幅な出展撤回が避けられないことによって、これまでのようなクオリティを保つことが極めて困難であり、来場者の期待に応えうるものとなるか微妙な状況です。
 当協会は、東京国際アニメフェアの事務局を受任しているものであり、主催者ということではありませんので、イベントを実行するか中止をするかの判断を下す立場にはありませんが、運営に責任を負う者として、このままの状況で推移いたしますと、実質的には実行不能な事態になると言わざるを得ません。
 アニメーションを愛するファンの皆様の多くがこのような事態を大変残念に思われていることと同様に、長年東京国際アニメフェアの事務局を務めてきた当協会としましても無念でならないことを、皆様にご理解賜りたく存じます。
     以上


実際の声明文はこちら。


AJAはアニメーション産業全体の持続的発展を目指している団体で、アニプレックス、サンライズ、竜の子プロダクション、バンダイビジュアルなど正会員33社、キュー・テック、クランチロール、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンなど準会員27社の合計60社が加盟しています。協会の主な事業は「東京国際アニメフェア」で事務局として運営を行っているほか、杉並アニメーションミュージアムや東京アニメセンターの運営、アジア・パシフィック アニメ国際会議の開催が挙げられます。

AJAの布川郁司理事長(スタジオぴえろ代表取締役社長)は、都条例改正案の可決前に「東京都の条例案が可決されたら、映像表現者の私にとっては大変な懸念を表明せざるを得ません」とツイート。18日には「都の条例に関してはまだつぶやけません。今しばらくお待ちください。」とのツイートを行っていました。

上記の通り、AJAはコミック10社会の声明を支持しつつも、自身がアニメフェアの運営担当なため順当な開催を望んでいますが、コミック10社会が抜けることにより「来場者の期待に応えうるものとなるか微妙な状況」「このままの状況で推移いたしますと、実質的には実行不能な事態になると言わざるを得ません」と状況がかなり厳しいことを明かしています。

布川理事長によれば、AJAの立場としては条例には断固反対であり、その上でキャラクターのないアニメフェアを実行する事は不可能であるということを明らかにした、というわけです。

これについて、2ちゃんねるなどでは実際に東京国際アニメフェア2011のチラシに掲載されていた作品のうち、コミック10社会に関係する作品を消した画像が広まっており、その消える作品の多さに驚く声が上がっています。下記がその画像で、左がオリジナル版、右が修正版(コミック10社会の作品が原作のアニメを消したもの)。半数以上の作品が姿を消しています。


開催まであと3ヶ月に迫った東京国際アニメフェア2011、果たしてここからどのような動きを見せるのでしょうか……。

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in アニメ, Posted by logc_nt

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