サイエンス

インクジェットプリンタのように皮膚を「印刷」して火傷を治療する装置が実用化間近


アメリカでは、移植待ちの患者がこの10年で倍増しているにもかかわらず、手術数はほぼ横ばいとなっているなど、ドナー不足が深刻な問題となっています。

これを解消するため、外部から組織を移植するのではなく、自分の細胞を利用して回復する「再生医学」分野の研究が近年盛んに行われていますが、アメリカの研究チームが火傷などの治療のため皮膚に細胞を印刷し再生させるという、まるでSFのような治療方法を開発、実用化に近づけました。

詳細は以下。
Inkjet-like device 'prints' cells right over burns | Reuters

Inkjet Cell Fabricator Prints Healing Flesh Directly Onto Wounds | Popular Science

「バイオプリンティング」と名付けられたこの方式を開発したのは、アメリカ・ノースカロライナ州のウェイクフォレスト大学の研究チーム。


治療では、まず皮膚の一部を採取し、線維芽細胞ケラチノサイトなどといった諸細胞に分離。培養地で増殖させた後、インクジェットプリンタによく似た散布装置にセット、レーザーで火傷の深さ・大きさをスキャンしながら、適切な量の皮膚細胞を吹き付けます。

吹き付けられた皮膚細胞には分化能力をもつ幹細胞も混じっているため、患部の毛包皮脂腺など、皮膚を構成する様々なパーツもまた回復していきます。

実際の使用を想定したデモ。


火傷の深度や大きさをレーザーでスキャンし、適切な場所に適切な量の細胞を吹き付けます。


アームを延ばすことで全身の火傷にも対応、装置はベッドサイドまで移動させることができるので患者を移動させる負担も軽減されます。


マウスを使った比較実験では、通常の皮膚移植手術では5週間かかるサイズの傷が2週間ほどで全治、3週間で完全に傷がふさがったとのこと。次のステップはより人間の皮膚に似た組織をもつ豚、そしてアメリカFDA(食品医薬品局)の認可を待って人体での実験も行われます。また、米軍の再生医療研究所と合同での研究も進行しているとのことです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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