MITが選ぶ2016年に注目すべき革新的技術10選まとめ


マサチューセッツ工科大学(MIT)が出版している技術誌MIT Technology Reviewは毎年、注目すべき革新的な技術トップ10についてまとめる「10 Breakthrough Technologies」を発表しています。2016年度版の10 Breakthrough Technologies 2016で発表された期待の次世代技術をGIGAZINEの過去記事を中心にまとめるとこうなります。

10 Breakthrough Technologies 2016
https://www.technologyreview.com/lists/technologies/2016/

◆01:Precise Gene Editing in Plants(植物のゲノム編集)
人間に都合のよい植物や動物を遺伝子操作によって"デザイン"するゲノム編集によって、例えば砂漠のような過酷な環境でも育てられる植物を作り出すことで、人口爆発に伴う食糧危機に対抗できることが期待されています。

「ゲノム編集」とはどのような技術なのかは以下の記事を見ればよく分かります。

遺伝子を自在に設計して生物の特性を変えられる神の領域の技術「ゲノム編集」とは? - GIGAZINE


また、ブタの臓器を人間に移植する異種移植や、ブタや羊に人間の臓器を作らせる「キメラ技術」確立に向けた鍵となる技術としてゲノム編集は注目されています。

ブタ遺伝子の一挙改変に成功、ブタ臓器を人間に移植する道が大きく開ける - GIGAZINE


豚や羊の中で人間の臓器を作る「キメラ技術」とは? - GIGAZINE


ただし、ゲノム編集によって人工的に作り出した蚊によって、ジカ熱が流行した可能性も指摘されるなど、利用方法を巡っては大いに議論があるところです。

ゲノム編集でマラリア原虫に耐性を持つ蚊が誕生、マラリア克服の決め手になる可能性 - GIGAZINE


ジカ熱がセックスで感染した事例が見つかる - GIGAZINE


◆02:Immune Engineering(免疫工学)
ゲノム編集を人間にも応用する試みも行われています。イギリスでは生後3カ月で急性リンパ性白血病と診断された少女の血液から免疫細胞であるT細胞を採りだして、ゲノム編集によってがん細胞を攻撃するようにプログラム。このゲノム編集で遺伝子操作されたT細胞を血液に点滴によって投与することで、赤ちゃんは白血病から回復することに成功しています。

世界で初めてゲノム編集が白血病の少女の命を救う - GIGAZINE


人間の免疫系に遺伝子操作を加えることで病気を克服したり、健康増進を助けたりする技術は、免疫工学として盛んに研究が進められています。しかし、ゲノム編集を含めて人間の体に遺伝子操作を加えるような「人間を人工的に作ること」がはたしてどこまで許されるのかという倫理面の問題が表裏一体であり、議論が分かれています。

ヒト遺伝子操作のガイドライン策定に向けて動き、タブーの領域に踏み込んだ「ヒトの遺伝子操作」に歯止めか - GIGAZINE


◆03:Conversational Interfaces(対話型インターフェース)
音声による操作や生体認証技術などの対話型インターフェースは今後、モバイル端末の利用シーンを中心にますます進化すると期待されています。

iOSのSiriやGoogleのGoogle Now、Windows 10のCortanaなど、モバイル端末やPCは、音声認識技術の向上によって「パーソナルアシスタント」というコンテンツが確立しました。

Siriの機械音声はどのように作られて会話を可能にしているのか? - GIGAZINE


思わぬ利用方法もアリ。

「死体をどこに隠したらいい?」とSiriに隠し場所を尋ねた殺人事件が発生 - GIGAZINE


競争によって音声認識の精度も高められています。

「Siri」対「Google Now」対「Cortana」、質問に正しく回答できるかどうか対決の勝者は? - GIGAZINE


Windows 10には生体認証機能「Windows Hello」が採用されました。

Microsoftが顔を見せるだけでログインできる生体認証「Windows Hello」を発表 - GIGAZINE


一卵性双生児を見分けられるほどの高い精度を誇ります。

Windows10の顔認証ログインは一卵性双生児を見分けることができるのかを検証実験 - GIGAZINE


◆04:Reusable Rockets(再利用可能ロケット)
使い捨てでなく何度も打ち上げることができる「再利用可能ロケット」は、ロケット打ち上げコストの大部分を占めるロケットの製造費用を大幅に削減できるため、宇宙への移動コストを劇的に下げる技術として大いに期待されています。

手頃な宇宙旅行を実現すべくロケットを開発するAmazonのジェフ・ベゾスCEOが投資するスタートアップ「Blue Origin」は、垂直状態でピタリと地上に着陸させる実験に成功。

打ち上げたロケットを垂直に「着陸」させる事にAmazonのベゾスCEOの宇宙企業が成功 - GIGAZINE


また、NASAと提携して国際宇宙ステーションへの物資を運搬するSpaceXも、輸送用ロケット「Falcon 9」を地上に無事帰還させることに成功。さらには、洋上着陸成功に向けて、あと一歩のところまで技術を高めています。

Falcon 9の洋上着陸失敗は紙一重と判明、マスクCEOは次回以降の成功に自信アリ - GIGAZINE


なお、SpaceXの究極の目的は火星への移住で、火星で使えるインターネットの構想もあります。

民間の宇宙開発ベンチャー「スペースX」は数百の通信衛星を使って火星でも通信可能なインターネット環境の構築を計画中 - GIGAZINE


有人の宇宙飛行船「Crew Dragon」についても着々と計画は進行中です。

民間の有人宇宙船「Crew Dragon」の乗組員カプセル内部が公開、2017年の初飛行へ - GIGAZINE


◆05:Robots That Teach Each Other(ロボットによるロボットの教育)
プログラミング通りに動くロボットから、他のロボットの得た知識経験を共有して進化するロボットの開発が進められています。このような自己学習型ロボットの研究開発は、情報を共有するクラウドの技術とめざましい進化を遂げる人工知能技術の発展が下支えしています。

ロボットや人工知能が自分で学習するスピードは人間のプログラミング能力をはるかに凌駕するため、ひとたび学習スキルを身につけたロボットは加速度的に進化すると予想可能。

ゲームを自ら学んで人間以上に上達できる人工知能「DQN」が人間を脅かす日はいつくるのか? - GIGAZINE


自己学習する「人間のような」次世代人工知能を開発するカギとなるものは? - GIGAZINE


ロボットが進化すれば人間の職業を奪うのではないかと危惧する声も聞こえ始めています。

ロボットや人工知能の進化は人間の仕事を2025年までに奪い尽くすのか? - GIGAZINE


さらにはスティーヴン・ホーキング博士のようにロボットの進化が人類の脅威になるという指摘も挙がっています。

人工知能は核兵器よりも潜在的に危険、ホーキング博士が「100年以内に人工知能は人間を超える」と警告 - GIGAZINE


◆06:DNA App Store(DNAアプリストア)
遺伝子情報をオンラインで情報として販売する「DNA App Store」というビジネスモデルが登場しています。

あらゆる生き物のDNA情報を検索できるサービスが登場。

DNAの塩基配列を入力するとすぐに何の生き物かを検索して表示する「Helix I/O」 - GIGAZINE


遺伝子に応じたオーダーメイドの医療も登場する予定。

Googleが支援する遺伝子解析サービス「23andMe」が顧客の遺伝子情報で新薬の開発へ - GIGAZINE


しかし、遺伝子情報という極めてセンシティブな情報の管理は大きな課題になりそうです。

DNA検査を行うと広告のため遺伝子情報が使われてしまう可能性 - GIGAZINE


遺伝子情報によって受けられないサービスもできてきそうです。

遺伝子検査の結果で生命保険の加入が拒否されるかもしれない - GIGAZINE


◆07:SolarCity’s Gigafactory(SolarCityのギガファクトリー)
アメリカでは低価格で発電効率の高い太陽光発電パネルを作るメーカー「SolarCity(ソーラーシティ)」が有名です。ちなみに、ソーラーシティはイーロン・マスク氏のいとこのリンドン・ライブ氏とピーター・ライブ氏が創業した企業で、巨大な太陽光発電パネル製造工場「ギガファクトリー」をアメリカ・ニューヨーク州に建設中です。

たった66円で1Wの電力を生み出す低コスト・高効率のソーラーパネルが発表される - GIGAZINE


また、エネルギー需要の高まりとともに太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用する試みが注目を集めています。再生可能エネルギーで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておいて、電力供給がひっ迫するときに活用することで、全体では電力コストを大きく下げられると考えられており、巨大な蓄電施設の建設構想が持ち上がっています。

電気代を劇的に減らし未来の生活を大きく変え得る「エネルギー貯蔵」技術の展望とは? - GIGAZINE


なお、テスラのマスクCEOはEVや家電の電力をまかなうための家庭用蓄電器を販売しています。

テスラがエネルギー革新企業へと飛躍する家庭用バッテリー「Powerwall」はどこがどうすごいのか? - GIGAZINE


◆08:Slack
写真共有サービスflickr創業者のスチュワート・バターフィールド氏が作ったメッセージツール「Slack」は、2013年8月にリリースされて以来、北米を中心に利用が広がっています。

Slack: Be less busy
https://slack.com/


メッセンジャーサービスに加えてSkypeのような音声チャットも可能で、ファイルやドキュメントの送信もできるSlackは、個人間での利用だけでなく、企業の社内コミュニケーションツールとしても人気があり、Adobe、Airbnb、eBayなどで活用されています。

SlackはPC、モバイル端末を問わずに利用でき、送られた画像をローカルにダウンロードすることなく閲覧でき、Googleカレンダーなどの他社製サービスをアプリ内で管理でき、グループをまたいだ投稿の検索などが可能、気になる投稿をピン留めしてあとでチェックできるなどの多機能ぶり。とくに、メールのような形式にとらわれない簡単かつ即時のコミュニケーションが可能なツールとしての使い勝手が評価されています。

オフィスを持たずに遠隔で勤務するリモートワークにもSlackは活用されています。

特定のオフィスを持たない勤務スタイル「リモートワーク」のための完全ガイドブック「The Ultimate Guide to Remote Work」 - GIGAZINE


◆09:Tesla Autopilot(テスラの自動運転機能)
テスラモーターズは2015年10月にモデルSをソフトウェアアップデートして、自動運転モードを追加しました。

ついに「自動運転(オートパイロット)」を搭載したテスラ「モデルS」実車レビューいろいろまとめ - GIGAZINE


テスラのイーロン・マスクCEOは、ゆくゆくは自動運転カーが当たり前になり、ハンドルを握ることが許されなくなるという未来について青写真を描きます。

「全自動運転カー以外の車両が違法になる未来が来る」とテスラのマスクCEOが語る - GIGAZINE


自動運転カーの開発にはテスラを始めとしてテクノロジー企業が続々参戦。中国のBaiduは公道走行試験に成功。

Baidu開発の全自動運転カーが北京市内の公道走行試験に成功 - GIGAZINE


凄腕ハッカーも公道試験に成功。

伝説的ハッカーが自動運転カーをわずか1カ月で自作、すでに公道走行済み - GIGAZINE


もっとも、マスクCEOはハッカー自作の自動運転カーを疑わしいと評価しています。

伝説的ハッカーが自動運転カーをわずか1カ月で自作した件で「疑わしい」とテスラが声明を発表 - GIGAZINE


そんな中、圧倒的な技術で一歩先を行くのがGoogleで、Googleの自動運転カーにはハンドルやペダルすらありません。

Googleのハンドル・ペダルがない自動運転カーの性能に圧倒されるムービーまとめ - GIGAZINE


なお、Googleの自動運転カーは毎日480万kmを仮想走行することでとてつもないスピードで安全に走行する能力を獲得しています。

Googleの自動運転カーは毎日480万kmを仮想空間でドライブし安全性をチェック - GIGAZINE


◆10:Power from the Air(空中給電)
スマートフォンやIoT端末などのモバイル端末が進化すればするほど、電力に対する要求は厳しくなっています。このような要求に応える技術としては、消費電力が著しく小さい端末や巨大な蓄電性能を持つバッテリーだけでなく、空中を飛び交う電波から電力を得るという空中給電技術が期待されています。

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空中給電は、Wi-Fiや携帯電波、テレビ、ラジオなどの近くで発生する電磁波をエネルギーとして取り込んで、通信に利用する技術で、ワシントン大学の研究者は、自らは電波を発することなく他の端末からの電波を活用してデータを送る端末の開発に成功しています。

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空中給電技術が進化すると、充電不要の携帯電話が誕生する可能性があります。

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in ソフトウェア,  ハードウェア,  乗り物,  サイエンス,  生き物,  メモ, Posted by logv_to