Googleが支援する遺伝子解析サービス「23andMe」が顧客の遺伝子情報で新薬の開発へ

by Health Gauge

Googleが多額の出資を行っている遺伝子解析サービスの「23andMe」が、新たにユーザーから送られてきた膨大な遺伝子情報を元に、新薬の開発を行っていくことが判明しました。

23andMe Turns DNA Data Into Drugs in Startup’s Latest Twist - Bloomberg Business
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-03-12/23andme-to-turn-dna-data-into-drugs-in-startup-s-latest-twist

23andMeは、Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏を夫に持つアン・ウォジスキ氏が創設したDNA解析サービス。23andMeが提供するサービスの1つである「Personal Genome Service(PGS)」は、ユーザーが23andMeから送られてきた遺伝子検査キットで唾液を採取して返送すると、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)や糖原病を始めとする全120種の遺伝子項目について検査してくれるというもの。23andMeの特筆すべき点はその価格で、1項目あたり約161円という、従来の約50分の1という安さで病気の潜在的リスクを調べられるようになっていました。

しかし、23andMeは2014年11月22日にアメリカ食品医薬品局(FDA)から「基準を満たしていない」として遺伝子検査キット販売の禁止を命じられます。

Googleが支援する遺伝子検査キット「23andMe」に出荷停止命令が下る - GIGAZINE



その後23andMeは2015年2月にブルーム症候群に限定してFDAの認可を取得。これを足がかりとして、その他の遺伝子検査も認められる可能性が出てきました。

その23andMeが、新たにバイオベンチャー企業のパイオニアであるジェネンテックで15年間研究を行ってきたリチャード・シェラ-氏を最高科学責任者として迎え、次のフェーズに入ったとのこと。これまでは遺伝子キットを販売してきたのですが、製薬会社と手を組み、ユーザーから送られてきた遺伝子情報をもとに、新薬を開発することになるそうです。

「我々の取り組みの一つに『より効率的な方法で新薬を見つけ出す』ということがあります。製薬会社は顧客と直接的な関係を持っていませんが、その製薬会社と手を組むことで、彼らとは別の方法でよりよい薬の開発を実現できると考えています」とウォジスキ氏。23andMeは85万人のユーザーから送られてきた膨大な遺伝子情報を持っていますが、これからは遺伝子データの中から病気の原因を発見することに加え、それを治療する薬を作ることまで視野に入れているようです。そんな壮大な計画を考えているウォジスキ氏は「私は限界を超えたいのです」と心境を言い表しました。

by nirbhao

ヘルス・データ会社が新薬の発見に取り組むのはまれなことですが、ライフサイエンス関係のコンサルト会社BioBrit LLCの創設者であるダン・ブラッドリー氏は「23andMeはこれまで数々の製薬会社とパートナーシップを結んでおり、この分野での信頼性があります。しかし、技術を確立するには数年の時を必要とするでしょう」と語りました。

23andMeはまだ、どの分野の新薬開発を行っていくかというターゲットを絞っておらず、新薬開発について手を組んでいく製薬会社も決まっていません。シュラー氏は今回の引き抜きに関して「私が知っているのは、しばらく自分が引退できないということです。厳密にどんなことに携わっていくのかは分かっていませんが、人類遺伝学の分野であることは確かです」と語っています。

2006年の創業時に1億2600万ドル(約153億円)の出資金を集めた23andMeは、2012年にFacebookに膨大な投資を行う投資家ユーリ・ミルナー氏やNew Enterprise Associatesから5000万ドル(約61億円)を、2015年の1月にはジェネンテックから1000万ドル(約12億円)の資金を集めました。ジェネンテックからの出資は今後さらに5000万ドル(約60億円)が追加されるとのこと。また2015年の春には新薬開発のためにGoogleなど多くの企業がさらなる出資を行う予定です。

過去の研究で精神病や統合失調症統合失調症と関りのある遺伝子の変異が創造力に影響を及ぼすということが判明しており、また後天的な「恐怖体験」は子孫に遺伝していくなど、食事や喫煙習慣を始めとする祖先のライフスタイルや経験が自分の遺伝子に影響を与えているといわれています。遺伝子情報の研究によって、人が生まれた瞬間にこのような遺伝子を解析し、最適な投薬が可能になることも十分に考えられます。

by Venkataramesh Kommoju

また、ある研究では母親・父親・赤ん坊の唾液から採取した遺伝子を解析し、未熟児の遺伝子を明らかにして胎児の時点で特別なケアを行えるようにできるようにする試みも行われています。がんやアルツハイマーなど個々の病気を治す薬を開発するのではなく、「老いそのものを遅らせることで病気の発生を防ぐ」というアプローチも取られていますが、一方で遺伝子のデータそのものが病気の予防ではなく「新しい薬」と呼べるようになる日も遠くなさそうです。

・関連記事
手軽にDNAを判別できるリアルタイムPCRサーマルサイクラー「Open qPCR」 - GIGAZINE

「DNA検査」を3つ同時に受けてみたら明らかになった興味深い事実とは? - GIGAZINE

3人の親からDNAを受け継ぐ子どもを生み出す技術の問題点とは? - GIGAZINE

最速の競走馬はDNAで判別可能か、競馬界における遺伝子検査とは? - GIGAZINE

DNAの塩基配列を入力するとすぐに何の生き物かを検索して表示する「Helix I/O」 - GIGAZINE

ジョギングやサイクリングは遺伝子レベルで筋肉の代謝機能に影響を与える - GIGAZINE

75歳の男性の肌からDNAを採取しクローン細胞を作ることに成功 - GIGAZINE

精神疾患を発症させる共通の遺伝的特性の発見で汎用の治療薬ができる可能性 - GIGAZINE

79

in サイエンス, Posted by logq_fa