人々の知能が徐々に低下する「逆フリン効果」とは?

20世紀には世代を重ねるごとにIQテストの平均得点が上昇する「フリン効果」が確認されていましたが、近年は反対に得点が低下する「逆フリン効果」が一部の国で報告されています。アメリカの成人約39万4000人を対象とした研究でも、2006年から2018年にかけて複数の認知能力テストで得点の低下が確認されました。
Looking for Flynn effects in a recent online U.S. adult sample: Examining shifts within the SAPA Project - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289623000156
Are People Actually Getting Dumber? Introducing The Reverse Flynn Effect : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/are-americans-actually-getting-dumber-heres-what-we-know-about-the-reverse-flynn-effect
20世紀には、後の世代ほどIQテストの平均得点が高くなる現象が各国で確認されていました。この現象は、1984年に研究成果を発表したジェームズ・フリンにちなんで「フリン効果」と呼ばれ、平均得点は10年当たり約3~5ポイント上昇していたとされています。
フリン効果が生じた理由については、栄養状態の改善、教育開始年齢の低下、兄弟姉妹の減少、日常生活や仕事を取り巻く環境の複雑化など、さまざまな仮説が提案されてきました。しかし、近年はフィンランドやフランスなどで新しい世代のIQテスト得点が以前より低くなる例が報告され、従来とは逆方向の変化を示す「逆フリン効果」が注目されるようになりました。

ノースウェスタン大学のエリザベス・ドウォラク氏らは、逆フリン効果がアメリカの成人にも起きているのかを調べるため、オンライン調査プロジェクトであるSynthetic Aperture Personality Assessment(SAPA)Projectのデータを分析しました。対象となったのはアメリカで育った18歳から90歳の39万4378人で、2006年4月から2018年12月までに収集された回答が用いられました。
参加者は、オープンソースの認知能力テスト「International Cognitive Ability Resource(ICAR)」の問題に回答しました。研究チームは総合得点に加えて、図形の規則性を見抜く「行列推理」、文字や数字の並びから次の要素を予測する「文字・数列推理」、語彙や一般知識を使う「言語推理」、立体を頭の中で回転させる「3次元回転」の4分野を個別に分析しました。
分析の結果、35問で構成されたテストの総合得点は2006年から2018年にかけて低下する傾向を示しました。この傾向は年齢、教育水準、性別で分けて分析しても確認され、行列推理と文字・数列推理でも調査期間の後半に参加した人ほど平均得点が低くなるパターンが見られました。
低下幅が特に大きかったのは18歳から22歳の参加者でした。また、逆フリン効果はすべての教育水準で確認されたものの、4年制大学の学位を持たない層では得点低下の傾きが比較的大きく、教育水準によって変化の程度に違いがあることも示されました。

ただし、すべての能力が低下していたわけではありません。言語推理の変化は研究チームが有意と判断する基準に達しなかった一方、3次元回転の得点は測定開始した2011年から2018年にかけて1年あたり平均0.030標準偏差ずつ上昇し、多くの年齢層で従来型のフリン効果が確認されました。
この結果は「現代人が単純に愚かになった」ことを意味するものではありません。IQテストや認知テストの得点変化が、そのまま人間の根本的な知能の上昇や低下を表しているとは限らず、テストへの慣れ、教育環境、文化、使用する情報技術などの影響を受けている可能性があります。研究チーム自身も、今回の研究から得点変化の原因を特定することはできないとしています。

さらに、SAPA Projectは無作為に選ばれた全米代表サンプルではなく、自らオンライン調査を見つけて参加した人々のデータです。参加者の65%以上が女性であるなど人口構成にも偏りがあるため、結果をアメリカ全体にそのまま一般化するには注意が必要です。
研究チームは、逆フリン効果が年齢や教育水準を問わず一様に起きる現象ではない可能性を指摘しています。今回の結果から、認知能力全体が一方向へ変化しているのではなく、抽象的・論理的な推論では得点が下がる一方、空間認識では得点が上がるなど、現代の文化や生活環境に応じて能力の構成が変化している可能性があるといえます。
・関連記事
全人類がバカになった2006年の映画「26世紀青年」に現実がどれほど近づいているかを追跡する「愚民政治近接度指数」 - GIGAZINE
IQが「騒がしい場所で声を聴き取る能力」に影響しているかもしれない - GIGAZINE
インフルエンサーから若者が「ガスライティング」で受ける悪影響とは? - GIGAZINE
人類のIQは年々上がっている、では「実際に賢くなっていると言えるのか?」を専門家が解説 - GIGAZINE
世帯収入や飲酒量などに与える影響はIQと性向でそれぞれ異なるという研究結果 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 教育, サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article What is the 'reverse Flynn effect,' wher….







