がん細胞が自らDNAを壊して進化している可能性が研究によって指摘される

がん細胞が増殖に必要な遺伝子を過剰に働かせた結果、自らのDNAに深刻な損傷を生じさせ、修復時のミスを通じて新たな変異を蓄積している可能性が示されました。DNA損傷の一部はがん細胞が増殖に必要な遺伝子を過剰に働かせることで生じており、腫瘍の変化や治療への適応につながる可能性があると指摘されています。
Superenhancers shape the landscape and repair dynamics of transcription-associated DNA breaks in cancer | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aeb6379

Cancer may be breaking its own DNA to keep growing | ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/07/260731034204.htm
遺伝子の情報を読み取ってRNAを作る過程は「転写」と呼ばれます。通常の細胞では遺伝子ごとに転写の強さが調整されていますが、がん細胞は増殖に関係する一部の遺伝子を過剰に転写します。転写の活性が高まりすぎるとDNAに転写ストレスがかかり、DNAを構成する2本の鎖がともに切れる「DNA二本鎖切断」が発生することがあります。DNA二本鎖切断はDNA損傷の中でも特に深刻なものです。

エルサレム・ヘブライ大学のオサマ・ヒドミ氏と、がん研究者のラミ・アケイラン教授らは、DNA二本鎖切断が起きた位置をゲノム全体から特定し、遺伝子の転写量やDNA修復に関わる目印と照らし合わせました。その結果、DNA損傷はゲノム全体に均等に分布せず、近くの遺伝子を強く働かせるDNA領域である「スーパーエンハンサー」に制御される遺伝子内に集中していました。該当する遺伝子ではDNAの切断だけでなく修復も活発に起きていたとのこと。
スーパーエンハンサーに制御される遺伝子では転写活性が高まり、遺伝子内にDNA二本鎖切断が生じやすくなると考えられます。DNA二本鎖切断は修復に失敗すれば細胞死につながるため、個々のがん細胞にとっては危険な損傷です。一方でDNAを修復して生き残った細胞には変異が残る場合があります。変異の一部が増殖や生存に有利に働けば、該当する細胞が腫瘍内で増えていくというわけです。

研究チームによると、DNAの切断と修復が繰り返される領域はがん細胞にとって弱点であると同時に、新たな性質を獲得する変異の供給源にもなり得ます。治療が効きにくくなったり別の組織へ広がったりする性質も、長期的には同様の過程から生じる可能性があるとのこと。
研究チームは、スーパーエンハンサーによる過剰な遺伝子活動やDNA修復機構が将来的な治療標的になる可能性があると述べています。将来の治療法につながるかどうかは、今後さらに調べる必要があるとのことです。
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