ガン化した白血病の細胞が無害な免疫細胞に変化することが偶然発見される

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「血液のガン」とも呼ばれる白血病は、白血球の細胞が成長過程でガン化したものが骨髄内で増殖することで、正常な血液細胞が減少して貧血や免疫力の低下、出血傾向といった症状を引き起こす疾病です。白血病には増殖する場所や、急性もしくは慢性といった性質の違いによって大きく分けて4つの種類があるのですが、その中の1つである「急性リンパ性白血病」を引き起こす原因となるガン化した白血球の細胞が、無害な免疫細胞に変化することが偶然発見されました。

Reprogramming of primary human Philadelphia chromosome-positive B cell acute lymphoblastic leukemia cells into nonleukemic macrophages
http://www.pnas.org/content/112/13/4074.abstract

Scientists discover how to change human leukemia cells into harmless immune cells | News Center | Stanford Medicine
http://med.stanford.edu/news/all-news/2015/03/scientists-discover-how-to-change-human-leukemia-cells.html

急性リンパ性白血病は、白血球の一種であるリンパ球が未熟な状態のまま悪性化して骨髄で猛烈な勢いで増加し、症状が急速に進行する疾患です。急性リンパ性白血病はさらに、悪性化するリンパ球の種類や成熟の度合などにより、種類が細分化されています。

By Gerolf Nikolay

スタンフォード大学医学部Ravindra Majeti教授が率いた研究チームは、複数ある急性リンパ性白血病の中でも「B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)」の調査を行っていました。その名前が示す通り、B細胞性急性リンパ性白血病は細胞の成熟期に成長が止まってしまったリンパ球の一種であるB細胞を原因としています。

成長過程で止まってしまった未熟なB細胞は、転写因子を失っているため正常な細胞に分化することができなくなります。転写因子とはDNAの配列を認識・結合して遺伝子の発現を制御する機能を持っていて、細胞内で発生する多くの反応において重要な役割があるタンパク質の一群です。

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B-ALLはガンの中でも治療による回復の見込みが少ない疾患であり、研究チームはその仕組みの解明のためにB-ALLの患者からB細胞のみを生かしたまま取り出し、特性を調べる調査を行っていました。するとその中で、研究員によって取り出されたB細胞が転写因子に接触した際、B細胞に今まで確認されなかった変化が生じました。B細胞はその大きさと形状を突如変化させたのですが、変化後の形状は体内に生じた変性物質や侵入した細菌を捕食する白血球の一種である免疫細胞のマクロファージに酷似するものとなっていました。

その後、研究チームが偶然とも言える形で変化したB細胞を調査したところ、マクロファージと非常に近い構造の遺伝子を有し、さらにはマクロファージが持つ「捕食」と同等の働きを持っていることも判明。また、B-ALLに対する免疫システムを持っていない実験用マウスに、転写因子に接触して特性が変化したB細胞を加えてみても、B細胞を原因とするガンは発症されませんでした。

By Rick Eh?

興味深い現象が発見された今回の研究結果ですが、研究チームを率いたMajeti教授によると、B細胞が突然変化した原因は不明とのこと。研究チームは次の目標として、B細胞に起こった変化のメカニズムを解明して同様の変化を人為的に作り出すことで、B-ALLの治療に効果のある薬を開発することを挙げています。

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