日本の万歩計から生まれた「1日1万歩」という目標には科学的な根拠があるのか?

スマートウォッチや健康管理アプリでは「1日1万歩」が毎日の目標として示されることがあり、これまでには「毎日よく歩く人ほど死亡リスクが低い」という研究結果も出ています。オーストラリアのアデレード大学で運動科学を研究するハンター・ベネット氏が、医学的な基準のように定着した1万歩という数字の由来と、健康のために歩数や歩く速さをどう考えればいいのかを説明しています。
Do we really need 10,000 steps a day?
https://theconversation.com/do-we-really-need-10-000-steps-a-day-285161

ベネット氏によると「1日1万歩」というのは医学研究から導かれた目標ではなく、その由来は1964年の東京オリンピック後に日本で運動不足への懸念が高まる中で売り出された歩数計「万歩計」とのこと。メーカーの山佐時計計器は1965年に日本初の歩数計となる「万歩計」を発売しており、「万歩計」は同社の登録商標となっています。
1万という数字が選ばれた主な理由は、覚えやすく宣伝に使いやすかったからでした。また、「万」の字が歩いている人の姿に少し似ていることも、数字の決定に影響した可能性があるとベネット氏は述べています。つまり、1日1万歩は科学的根拠に基づく基準ではなく、歩数計を売るための覚えやすいキャッチコピーとして始まったというわけです。
ただし、由来に科学的根拠がなかったからといって1日1万歩歩くことが無意味なわけではありません。ベネット氏は「1万歩歩くことは健康に良い影響をもたらす可能性がある有用な目標」だとしつつ、より少ない歩数でもメリットを得られると指摘しています。
2025年に学術誌「The Lancet Public Health」で発表された論文では、57件の研究から16万人を超える成人のデータをまとめたシステマティックレビューが行われ、このうち31件の研究がメタ分析に使われました。その結果、「1日7000歩」が多くの健康上のメリットをほぼ最大限得られる目安であることが判明。また、1日7000歩は1日2000歩と比べてあらゆる原因による早期死亡のリスクが47%、心血管疾患のリスクが25%、2型糖尿病のリスクが14%、認知症のリスクが38%、抑うつ症状のリスクが22%、転倒のリスクが28%低いことと関連していました。さらに、歩数と健康リスクの関連を見ると、1日約2000歩から4000歩にかけてリスクが大きく低下し、4000歩から7000歩にかけてもさらに少し低下した一方、7000歩を超えると多くの項目で低下幅が小さくなっていました。
「1日1万歩」より少なくても心血管疾患や死亡リスクが減るとの研究結果、速く歩くと効果的との結果も - GIGAZINE

ウォーキングは心拍数を上げ、呼吸器系・筋肉・心血管系に負荷をかける有酸素運動です。定期的に歩くことで心臓や代謝の状態が改善し、体重の減少につながる可能性があります。また、自尊心や「自分はやり遂げられる」と自分の力を信じられる自己効力感が高まることを通じて、ストレスの軽減やメンタルヘルスの改善につながる可能性もあるとベネット氏は説明しています。
歩数に加えて考えるべきなのが、どれほど速く歩くかです。多くの人が自然に選ぶ歩行速度は中強度の運動に当たる一方、運動は強度が高いほど短い時間で大きな健康上のメリットを得られるとされています。会話を続けるのが難しいほど速く歩けば高強度に近づき、世界保健機関(WHO)の運動指針では高強度の運動75分が中強度の運動150分とほぼ同等に扱われています。
そのためベネット氏は歩数だけにこだわるより、「1週間に合計何分の運動をしたか」にも目を向ける方がよい場合があると述べています。歩く時間を増やせない人にとっては、同じ時間の歩行でも速度を上げることがより多くの健康上のメリットを得る簡単な方法だと締めくくりました。
・関連記事
たとえ1日2000~4000歩でも「歩けば歩くほど死亡リスクを減らせる」ことが判明 - GIGAZINE
座りがちな生活習慣を相殺するのに必要な歩数が判明、1日1万歩にはやはり意味があったとの研究結果 - GIGAZINE
ウォーキングとランニングではどちらが効率的に運動できるのか? - GIGAZINE
「1日1万歩」でなく「7000歩」から長生きする可能性は高くなるとの研究結果 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1b_ok
You can read the machine translated English article Does the goal of '10,000 steps a day,' w….






