サイエンス

ゲノム編集でマラリア原虫に耐性を持つ蚊が誕生、マラリア克服の決め手になる可能性

By Peter Stevens

地球上で最も人間を殺す生き物はマラリアを媒介する「蚊」だと言われています。現代社会においても人間の大きな脅威であるマラリアを克服するために、遺伝子操作技術「ゲノム編集」を用いて、抗マラリア耐性遺伝子をほぼ100%の確率で遺伝させる技術が発表されました。

UC scientists create malaria-blocking mosquitoes | University of California
http://universityofcalifornia.edu/news/uc-scientists-create-malaria-blocking-mosquitoes

マラリアに感染する仕組みは、マラリア原虫を蚊が媒介することでマラリア原虫が人間に寄生するというものです。マラリア原虫は蚊の唾液に集まる性質を持ち、蚊が人間を刺す時にマラリア原虫が人の体内に侵入してマラリアを発症するのが原因です。このため、マラリア原虫を媒介する蚊が人類の敵として忌み嫌われてきたというわけです。


マラリア予防のためにマラリア原虫を媒介する蚊を根絶させよう、という研究も一部では進められています。例えば、メスの蚊をオスの蚊に変更して蚊の個体数を激減させるという遺伝子研究なども行われています。しかし、蚊を生態系から抹殺することは、他の動植物に予想できない影響を与えかねないため、危険であるとの指摘もあります。

さまざまな蚊の遺伝子研究が進められる中で、カリフォルニア大学アーバイン校のアンソニー・ジェームス博士らの研究チームは、マラリア原虫を無害化する抗マラリア耐性遺伝子の研究を行い、マラリア原虫の抗体をつくる遺伝子をみつけました。ジェームス博士は、この抗マラリア耐性遺伝子をCrispr-Cas9によるゲノム編集で、マラリアを媒介するハマダラカのDNAに挿入することに成功しています。

なお、遺伝子操作技術のゲノム編集とは何かについては、以下の記事を見れば分かります。

遺伝子を自在に設計して生物の特性を変えられる神の領域の技術「ゲノム編集」とは? - GIGAZINE


ところで、遺伝の情報は父、母それぞれから受け継がれるため、マラリア耐性が子に遺伝する確率は通常は50%です。しかし、カリフォルニア大学サンディエゴ校のイバレンティノ・ガンツ教授との共同研究によりこの確率を高めるゲノム編集を行うことで、ジェームス博士はほぼすべての子に抗マラリア耐性を引き継がせることに成功したとのこと。実験では、マラリア抗体を持つ蚊の目が赤色に蛍光する酵素を組み込むことで、子孫への抗マラリア耐性の遺伝状況について調べたところ、99.5%という極めて高い確率で遺伝することが確認されたそうです。


今後、ジェームス博士は抗マラリア耐性を持つ蚊の繁殖に取り組むとのことで、将来的にマラリア原虫を媒介する蚊の撲滅が期待されます。ジェームス博士は、抗マラリア耐性遺伝子をもつ蚊の有効性についてさらに実験を重ねる必要性があるとしつつ、マラリア対策の決め手になる手法として研究分野を切り開く可能性を示唆しています。

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