サイエンス

世帯収入や飲酒量などに与える影響はIQと性向でそれぞれ異なるという研究結果


人の知能を数値化する際には知能指数(IQ)が一般的ですが、IQは好奇心や自制心、粘り強さなどの「成功に寄与する性向」が考慮されないとして、近年は性向に光を当てる研究も盛んに行われています。アメリカのテキサス大学オースティン校やアムステルダム公衆衛生研究所などの合同研究チームが、IQと性向(非IQ)が世帯収入や飲酒量などにそれぞれ与える影響についての調査結果を明らかにしています。

Investigating the genetic architecture of noncognitive skills using GWAS-by-subtraction | Nature Genetics
https://www.nature.com/articles/s41588-020-00754-2

Investigating the Genetic Architecture of Non-Cognitive Skills Using GWAS-by-Subtraction | by Paige Harden | Medium
https://medium.com/@kph3k/investigating-the-genetic-architecture-of-non-cognitive-skills-using-gwas-by-subtraction-b8743773ce44

What happens if you split the genetic effects on educational attainment into an IQ and non-IQ part?

Check it out in our new paper led by @PerlineDemange, @MarghMalanchini, @Danbelsky, @kph3k, and @michelnivard out now in @NatureGenet: https://t.co/TOUXGNtuvE pic.twitter.com/2KCoCgG82l

— Abdel Abdellaoui (@dr_appie)


合同研究チームが行った研究は、ゲノムワイド関連解析によって得られた遺伝子データから算出された人間の性向と、世帯収入や飲酒量、精神病発症率などの各種データの間に存在する相関関係の研究です。

以下が研究チームが調査の対象とした各概念と、IQ・非IQの間の相関係数です。相関係数は2つのデータの関係性を-1から1までの強さで表すという概念で、-1に近づくほど「片方が増加すると、もう片方は減少する」という関係になり、1に近づくほど「片方が増加すると、もう片方も増える」という関係になります。各概念と非IQとの相関係数は黄色の点で、IQとの相関係数は青色の点でプロットされています。


例えば、「Household income(世帯収入)」はIQ・非IQの両方と0.7ほどの相関係数を有しています。これは、世帯収入がIQと非IQの両方と強い関係性を持っていることを意味しています。世帯収入のほかに社会経済状態カテゴリに属しているのは「General risk tolerance(一般的なリスクに対する許容度)」、「Neighorhood deprivation(貧困地域に居住すること)」の2つで、この2つはIQよりも非IQとの関連性が強く表れています。


決断カテゴリは、「General risk tolerance(一般的なリスクに対する許容度)」「Delay discounting(待ち続ければ報酬が増加する場合に待つことができない度合い)」の2つ。Delay discountingとIQ・非IQは強い負の相関を持っており、IQ・非IQが高ければ高いほど忍耐力が高い傾向があることを示しています。


健康関連においては、「Risk behavior composite(複合的なリスク危険度)」はほぼIQ・非IQとは無関係ですが、「Speeding propensity(スピードを出すことを好む度合い)」はIQとの相関がやや高め。「Ever smoker(喫煙経験)」「Age at smoking initiation(初めて喫煙した年齢)」「Cigeratte per day(1日あたりの喫煙本数)」は非IQと関わりがより強いことが見て取れますが、「Alcohol use(普段から飲酒するかどうか)」「Drinks per week(1週間あたりの飲酒量)」はIQ・非IQの両方とほぼ無関係。アルコール関連では、「Alcohol dependence(アルコール依存症)」だけがIQ・非IQと負の相関を持っていることが特筆されます。そのほかは、「Cannabis use(普段から大麻を使用するかどうか)」「Age at menarche(初潮の年齢)」「Age at first sex(初性行時の年齢)」「Nyumber of sexual partners(経験人数)」「Age at first birth-woman(第1子を持ったときの年齢、女性対象)」「Age at first birth-man(第1子を持ったときの年齢、男性対象)」「Number children ever born-woman(子どもの数、女性対象)」「Number children ever born-man(子どもの数、男性対象)」「Age at menopause(閉経時の年齢)」。IQ・非IQが高いほど第1子を持ったときの年齢は遅くなる傾向があるようです。


人格関係では、「Openness(寛容さ)」「Conscientiousness(誠実性、自己コントロール力の高さ)」「Extraversion(外向性)」「Agreeableness(協調性)」「Neuroticism(神経症的傾向)」など。IQに比べて、精神面の良さを指す数値である非IQは、こうした人格関係の要素と関連性が強く現れています。


同様に、「Schizophrenia(統合失調症)」「Bipolar disorder(双極性障害)」「Obsessive-compulsive disorder(強迫性障害)」「Anorexia nervosa(拒食症)」「Attention deficit hyperactivity disorder(注意欠如・多動性障害:ADHD)」「Major depressive disorder(うつ病)」「Autism spectrum disorder(自閉症スペクトラム障害)」などの精神障害関係の要素は、統合失調症・双極性障害・強迫性障害・拒食症は非IQとより強い相関を持つ傾向がみられましたが、うつ病・自閉症スペクトラム障害はIQとより強い相関を持つ傾向がみられました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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