サイエンス

「子どもをたくさん産んだメスほどバカな鳥」が報告される

by Derek Keats

子どもを産むことは人間を含むさまざまな動物の母親にとって、非常に多くのエネルギーを消耗する一大事です。Proceedings of the Royal Society B(英国王立協会紀要)に掲載された新たな論文では、アフリカ大陸南部のサバンナに生息するSouthern pied babbler(Turdoides bicolor/シロクロヤブチメドリ)は子どもを多く産んだメスほど認知能力が低いことが報告されました。

General cognitive performance declines with female age and is negatively related to fledging success in a wild bird | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://doi.org/10.1098/rspb.2022.1748

Female Southern Pied Babblers Seem to Get Stupider as They Have More Babies : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/female-southern-pied-babblers-seem-to-get-stupider-as-they-have-more-babies

シロクロヤブチメドリはボツワナ・ナミビア・ミナミアフリカ・ジンバブエといったアフリカ大陸南部のサバンナに生息するスズメ目の一種で、群れで協力して子育てを行う習性を持っています。西オーストラリア大学の進化生物学者・Camilla Soravia氏らの研究チームは、グループ内における認知能力の変動について調査するため、人間に慣れている野生のシロクロヤブチメドリ38羽を対象に認知テストを実施しました。

テストは報酬としてエサを与える3つのタスクで構成され、各タスクでは関連性の学習や実験の変化に対する適応、するべきでない行動の学習といった個々の項目について測定されました。一般に、1つのタスクで好成績を残した個体は別のタスクでも成績がよく、general cognitive performance(GCP/一般認知能力)が高いことが示唆されたとのこと。


実験の結果、シロクロヤブチメドリの一般認知能力はオスとメスの両方で個体ごとに違いが見られましたが、全体的に年齢の高いメスにおいて比較的低い傾向がみられることがわかりました。さらに関連する要因を調査したところ、メスは年を経るごとに繁殖力が高くなる傾向があったと研究チームは述べています。

以下の図は、シロクロヤブチメドリの年齢と性別による認知能力の変動を示したもの。縦軸が認知能力の高さで横軸が年齢を示しており、黒く塗りつぶされた点がメス、白く塗りつぶされた点がオスの個体を表しています。全体的に、メスは年齢が高いほど認知能力が低い傾向が見て取れます。


また、1年間に産む子どもの数と認知能力の関係を表した図が以下。縦軸が産んだ子どもの数で横軸が認知能力を示しており、出産数が多い個体ほど認知能力が低いことがわかります。


科学系メディアのScience Alertは、シロクロヤブチメドリは繁殖に多くのエネルギーを使うため、メスが年齢を重ねるにつれて認知能力よりも繁殖能力に多くのエネルギーを割くようになる可能性があると主張しています。

研究チームは、「10年以上にわたるシロクロヤブチメドリの繁殖データを分析した結果、一般認知能力が低い個体ほど年間により多くの子どもを産むことがわかりました。この結果は、認知能力が生殖能力とトレードオフの関係にあることを示唆しており、自然選択が認知能力にどのように作用するのかを理解するためには利益だけでなく、そのコストも考慮する必要があることを示すものです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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