乗り物

アメリカの自動車基準を受け入れることはヨーロッパの人々の命を危険にさらすことになるとの警告


2025年7月下旬から8月にかけて、EUとアメリカは広範な品目を対象とした通商協定の枠組みで合意を発表しました。そこには自動車の安全・環境基準についての「相互承認(mutual recognition)」が明記され、アメリカ向けの車両をそのままEUでも認められる方針が示されました。この方針について、欧州の主要都市を含む市民団体が共同で「アメリカの緩い基準を受け入れると、これまでの欧州の命を守る取り組みが水の泡になる」と強く批判しています。

Accepting US car standards would risk European lives, warn cities and civil society - ETSC
https://etsc.eu/accepting-us-car-standards-would-risk-european-lives-warn-cities-and-civil-society/


2025年夏に合意されたEUとアメリカの通商枠組み合意では、「自動車については、アメリカとEUは互いの基準を受け入れ、相互承認する意向を持つ」との文言が盛り込まれていました。しかし、欧州における自動車安全規則は2010年から2025年までの交通事故死者数を37%減少させたと報告されている一方で、アメリカでは同時期に交通事故死者数が30%増加しており、基準に大きなギャップがあることが懸念されています。


また、EUは2026年以降、ブレーキとタイヤが摩耗することによって発生する有害な汚染物質への規制を導入する予定である一方、アメリカは自動車の大気汚染規制を緩和する方向で動いています。

そのため、パリやブリュッセル、アムステルダムなどのヨーロッパの主要都市を含む75以上の市民社会団体は共同で、欧州議会議員宛に署名を含めた書簡を送りました。書簡では「欧州基準をアメリカのより緩い規則に合わせることは、道路安全、公衆衛生、気候変動政策、そして競争力におけるEUの世界的なリーダーシップを損なうことになります」と警告しています。加えて汚染物質への規制についても、アメリカのより緩い基準を受け入れることで、「ぜんそく、がん、その他多くの心血管疾患や神経疾患に関連する汚染物質へのリスクが高まる可能性がある」と指摘しました。


なぜアメリカの安全基準を受け入れることが懸念されているのかは、ヨーロッパの都市計画などについて伝えるYouTubeチャンネルのNot Just Bikesによる以下のムービーを見るとよく分かります。

Keep these Stupid American Trucks out of Europe - YouTube


ヨーロッパの安全性評価には、車の耐久性や運転者の安全性だけではなく、歩行者への影響も含まれています。これらの安全性テストでは、車両が人体にどのような衝撃を与えるかについて採点されており、衝突時にボンネットがクッションとなるような工夫などが考えられています。


しかし、Not Just Bikesによると、アメリカのSUVとピックアップトラックは、極端な重量と硬いフレームを持ち、衝突時に他の車両にとって危険であるそうです。見た目だけを重視して設計されたSUVのフロントエンドは、歩行者が正面からぶつかった際にボンネットの上に倒れず車の下敷きになってしまう可能性が高く、死亡率が全体で44%、子どもの場合は82%、10歳未満の子どもの場合は130%高くなっていると過去の記録が示しています。


また、典型的なSUVは重量が重く重心が高く設計されていることで転倒しやすいため、転倒時に車内の人が押しつぶされにくいように車両の柱を大きくすることで頑丈なフレームにしています。その副作用として視界が悪くなっており、NBCが過去に実施した調査では、車両の前方に複数の子どもが並んで座っていても運転席からは視認できないケースが確認されました。このような車両はEUの安全基準に合格できず、ヨーロッパでは違法となっていますが、「規制の抜け穴により、毎年何千台ものアメリカ製SUVやトラックがヨーロッパに輸入されて道路の安全性を低下させている」とNot Just Bikesは指摘しています。


さらに、仮にアメリカの衝突試験がEUの試験とほぼ同等の基準で行われていたとしても、アメリカとEUの基準には根本的な違いがあるとNot Just Bikesは述べています。EUでは、自動車メーカーが特定の車両モデルを市場に出す前に、独立した公的機関による承認プロセスで合格して認証を受ける必要があります。一方でアメリカでは、すべての安全性試験が自動車メーカーによって自己認証されており、第三者機関による承認プロセスはありません。

BMW、メルセデスといったヨーロッパに本拠を置く主要ブランドは、アメリカの自動車工場でもEU基準に準拠した車両を生産しています。しかし、アメリカの低い車両基準がヨーロッパで受け入れられると、これらの生産ラインがEUよりもアメリカの低い基準に準拠した車両生産にShiftする可能性があり、ヨーロッパの自動車工場とサプライチェーン全体で大規模な雇用喪失のリスクをもたらす可能性も懸念されています。

署名者および市民団体は、EU議員に対し、アメリカの車両基準の引き下げを受け入れるという協定に反対し、「EUの車両基準は交渉の余地がない」ことを明言するよう求めています。

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in 動画,   乗り物, Posted by log1e_dh

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