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主要メーカー250台以上のガソリン車・ディーゼル車を実際に走行させて基準をクリアしたかどうかをまとめた表「Equa Index」、規制の10倍でも合格する現行試験の問題点が白日の下に

By Frank Derks

フォルクスワーゲンがディーゼル車の排ガス試験をパスするために、排ガス検査中であることを察知すると特別なモードに切り替えてNOx値を下げる特別なプログラム(チートプログラム)を使用していたことが発覚し、アメリカを中心に世界中で大問題となりました。このフォルクスワーゲンの排ガス問題を契機として、ヨーロッパではディーゼル車の排ガス試験のあり方についてさまざまな議論が行われています。

Revealed: nearly all new diesel cars exceed official pollution limits | Business | The Guardian
http://www.theguardian.com/business/2016/apr/23/diesel-cars-pollution-limits-nox-emissions

ヨーロッパでは過去20年にわたって、アメリカや東アジアとは異なり排ガス中の二酸化炭素濃度を重要視して環境性能を決定する方針を採り、ハイブリット車ではなくディーゼルカーを「環境に良い自動車」として打ち出す独自戦略を進めててきたという経緯があります。そのため、現在もハイブリッドカー以上にディーゼルカーが環境に優しいクルマとして高い支持を集めています。

そして、ヨーロッパでは自動車を販売する条件として、各メーカーはEURO5や2015年から導入されたEURO6などの厳しい排ガス規制をクリアすることが義務づけられており、厳しい排ガス基準をクリアする高性能なディーゼル車(いわゆる「クリーンディーゼル車」)を競って開発してきました。しかし、排ガス試験は実際の走行状態で行われるのではなく、車両を検査台に固定して行われることから、実走行時の状態を反映していないため、検査の有効性に疑問符がついていました。これにフォルクスワーゲンのチートプログラム問題が合わさって、より実効性のある検査方法を求める声が上がっています。

そんな中、自動車の排ガスに関するデータを提供するEmissions Analytics(EA)が、ヨーロッパで販売されている主要メーカーの250台以上のガソリン車・ディーゼル車について、実際に走行した状態で測定する試験を行いその結果「Equa Index」を発表しています。

Equa Index
http://equa.emissionsanalytics.com/


Equa Indexでは実走行時にEURO5、EURO6の規制値をクリアしている場合を「A」、規制値から1.5倍以内に収まっている場合を「B」、規制値から2.25倍以内に収まっている場合を「C」というようにしてグレードが決められています。例えば、Audi A8(2013年モデル)の場合、なんと規制値の12倍以上というとんでもない値が記録され、最低評価の「H」が与えられています。


メーカー別の成績を見ると、メルセデスベンツの場合、12車種のうち、規制値をクリアしたのはわずかに4車種のみ。


マツダは規制値の3倍以内の「D」、規制値の6倍以内の「E」のみで規制値をクリアするものはなし。


EAによると、皮肉なことに実走行時に排ガス規制を最もクリアできていたのは、チートプログラムでやり玉に挙げられているフォルクスワーゲンで、13車種中12車種で実走行でも規制値をクリアしていたそうです。


Equa Indexの結果について、EAのニック・モルデン代表は、「ヨーロッパでは大気汚染の問題に高い関心があり、積極的にその対策に取り組んだ自動車メーカーがある一方で、最低限のことしかしてこなかったメーカーもあるようです。しかし、重要なことは、ディーゼル車は技術的にクリーンにできるということです」と述べています。

ぜんそく患者を支援するAsthma UKの調査では、イギリス国内のぜんそく患者の3分の2が、自動車による排ガスによってぜんそくの症状が悪化しているとのこと。Equa Indexの結果を見てイギリスのマルコム・グリーン医師は、「自動車メーカーは大規模かつ意図的に排ガス規制を免れており、このような行為は詐欺的でぞっとするようなものです」と厳しく批判しています。

毎日新聞によると、EUの自動車政策を担当するエルジュビエタ・ビエンコフスカ欧州委員は、排ガス不正問題に対する規制強化策として、2017年秋以降、新型車に公道での排ガス検査を義務づける方針を明らかにしたとのこと。

EU:排ガス公道で検査 来秋から、VW不正受け義務化 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160424/k00/00m/020/081000c


今後は、ヨーロッパだけでなく世界的により実態を反映した形での厳格な検査基準によって、ディーゼル車をはじめとする自動車の排ガス抑制が義務づけられることになっていきそうです。

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