ベジタリアンは肉を食べる人よりも「達成」や「権力」を重視するとの研究結果

菜食主義者(ベジタリアン)は、さまざまな理由で動物性食品を避ける食生活を送っている人のことです。新たな研究により、ベジタリアンは肉などの動物性食品を食べる人々と比較して、個人的な「達成」や「権力」を重視する傾向があることがわかりました。
Rethinking vegetarianism: Differences between vegetarians and non-vegetarians in the endorsement of basic human values | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0323202

Vegetarians tend to value achievement and power more than meat-eaters, study finds
https://www.psypost.org/vegetarians-tend-to-value-achievement-and-power-more-than-meat-eaters-study-finds/
ベジタリアンの人々について、動物福祉への関心や環境への配慮といった具体的な態度を調べた研究は多々ありますが、より根本的で抽象的な価値観との関連に焦点を当てた研究は少ないとのこと。そこで、ポーランドのSWPS大学で社会心理学准教授を務めるジョン・ネズレック氏は、ベジタリアンとそうでない人々の価値観の違いを調べる研究を行いました。
これまでの研究では、単純に「動物性食品の消費量」でベジタリアンの人々を識別することが多かったそうです。しかし、ネズレック氏はベジタリアンが明確な社会的アイデンティティであり、単純に肉をあまり食べない人とベジタリアンとしての自認を持つ人のアイデンティティは異なると指摘。そのため今回の研究では、ただ肉をあまり食べないだけの人とベジタリアンを自認する人を、それぞれ異なるグループとして識別しました。

ネズレック氏は今回の分析に、アメリカとポーランドで行われた3つの調査データを用いました。1つはアメリカで行われた調査で、541人のベジタリアンと540人の非ベジタリアンを含みました。残る2つの調査はポーランドで行われ、片方は301人のベジタリアンと335人の非ベジタリアンを、もう一方はベジタリアン68人と非ベジタリアン1943人を含んでいました。
なお、ベジタリアンには動物性食品を一切摂取しないヴィーガンの人も含まれたほか、乳製品の摂取は認めるラクト・ベジタリアンや、乳製品と卵の摂取は認めるラクト・オボ・ベジタリアンの人も含まれました。一方、魚介類も認めるペスカタリアンは非ベジタリアンに分類されました。
被験者は、社会心理学者のシャロム・シュワルツ氏が提唱したシュワルツの価値理論に基づいた、「権力」「達成」「快楽主義」「刺激」「自己決定」「普遍主義」「博愛」「伝統」「調和」「安全」といった価値観について調査されました。価値観の測定には、提示されたさまざまな人物の描写について、自分とどの程度似ているかを答えるポートレート価値観質問票が用いられました。

分析の結果、3つの調査すべてに共通するベジタリアンと非ベジタリアンの違いが明らかになりました。ベジタリアンは、身近な人々の幸福を守ることに関連する「博愛」や、社会や人間関係の安全や安定に関わる「安全」といった価値観を一貫して低く評価していました。また、社会的な期待を守ったり、逸脱した行動を抑制したりすることに関連する「調和」も低く評価されましたが、アメリカのサンプルではわずかに有意な程度にとどまりました。
同様にベジタリアンは、非ベジタリアンよりも「伝統」の価値観をあまり強く支持していませんでした。伝統の価値観は、文化的または宗教的な慣習や思想に対し、敬意や献身を持つことに関連しています。しかし、「伝統」の価値を低く見積もる傾向は、ポーランドで行われた調査では明確にみられましたが、アメリカの調査では統計的に有意ではありませんでした。
反対にベジタリアンが重視した価値観には、人生における興奮や目新しさ、挑戦への意欲などに関連する「刺激」や、社会的な基準に沿って能力を発揮することや個人の成功を重視する「達成」がありました。また、社会的地位や名声、他人やリソースへの支配力に関連する「権力」という価値観も、ベジタリアンは一貫して支持する傾向がみられました。
国によって評価が異なる価値観は、独立した思考と行動を重視する「自己決定」でした。アメリカではベジタリアンよりも非ベジタリアンが「自己決定」を重視していましたが、ポーランドでは非ベジタリアンよりもベジタリアンの方が「自己決定」を重視していたとのことです。
なお、ベジタリアンと非ベジタリアンが持つ価値観の違いは、性別による違いをほとんど受けなかったことが報告されています。

一連の結果は、ベジタリアンを「博愛」や「調和」といった価値観と結びつける従来のステレオタイプとは真逆のものです。ベジタリアンは根本的な価値観において、「達成」や「権力」といったものに共感している可能性が示唆されています。
心理学系メディアのPsyPostは、「これらの研究結果は、ベジタリアン食を実践することは個性を重視する価値観と、大多数から一歩踏み出す意志の表れである可能性を示唆しています。西洋社会の多くでは一般的ではない食生活を選択することで、ベジタリアンは社会通念よりも個人的な信念を重視する姿勢を表明しているのかもしれません」と述べました。
なお、今回の研究に用いられたデータは特定の時点で収集されたものであり、ある価値観を持っていることが人々をベジタリアンへと導くのか、ベジタリアンを実践することが人々の価値観を変化させるのかは判断できません。また、被験者がアメリカとポーランドに限定されていたため、ベジタリアンが歴史的・社会的に異なる意味を持つ国や地域では、異なる結果が出る可能性があるとのことです。
・関連記事
33万人のゲノム解析により「ベジタリアン」になるかどうかは遺伝子に左右されることが判明 - GIGAZINE
ベジタリアンをやめて分かった「4つの教訓」とは? - GIGAZINE
「ベジタリアン」は異性にモテない可能性、出会い系アプリでベジタリアンとプロフィールに書くと惨敗するとの実験結果 - GIGAZINE
世界中の人間が菜食主義者・ベジタリアンになると何が起きるのか? - GIGAZINE
ベジタリアンや植物ベースの食事をとる人は新型コロナを発症するリスクが低いという研究結果 - GIGAZINE
「ヴィーガンや菜食主義者は肉を食べる人より健康で長生き?」を栄養の専門家が解説 - GIGAZINE
ベジタリアン食や植物肉の広まりに伴って見落とされがちな「負の側面」とは? - GIGAZINE
完全菜食主義者を風刺する「完全肉食主義者」が食肉の素晴らしさを説くムービー - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Research shows that vegetarians value ac….







