サイエンス

科学者が老化に影響するかもしれない既存薬を調査、鼻づまり用の点鼻薬が長寿と関連している可能性も


人類は古くから長寿の鍵となるものを探し求めており、現代でも億万長者に「不死」を売りつけようとする長寿産業が活況を呈しています。そんな中、アメリカのノースイースタン大学とハーバード大学の研究チームが、既存の医薬品から「実は老化や寿命に影響を与える薬」を見つけ出す新たな方法を考案しました。

Network-driven discovery of repurposable drugs targeting hallmarks of aging | Nature Aging
https://www.nature.com/articles/s43587-026-01161-8

Longevity Research Reveals: Common Drugs Could Impact Aging
https://news.northeastern.edu/2026/06/26/longevity-research-drugs/

Scientists Searching 6,000 Drugs For Anti-Aging Properties Found One Hiding in Plain Sight : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/medications-already-in-pharmacies-may-slow-aging-and-scientists-are-narrowing-them-down

特定の疾患や健康問題を治療する薬を生み出す方法には、ゼロから新しい薬を開発するほかに、「既存の医薬品から有望なものを見つけ出す」という方法があります。既存の医薬品はすでに人間に対する安全性や副作用といった項目をクリアしており、量産体制も整っているため、既存薬の転用は新薬開発よりも時間やコストを抑えられるという利点があります。


ノースイースタン大学の物理学教授であるバラバーシ・アルベルト・ラースロー氏は、「数年前に白髪になった私としては、いつか老化の進行を遅らせる薬が開発されることを誰もが願っていると思います。課題は、どの薬を試験する価値があるのか​​を見極めることです」と語っています。

そこでラースロー氏らの研究チームは、加齢に影響する11種類の生物学的プロセスに関与する遺伝子に着目しました。これらの生物学的プロセスには、遺伝子のオン/オフを制御するエピジェネティックな変化や、細胞のエネルギーとなるアデノシン三リン酸(ATP)を産生するミトコンドリアの機能不全などが含まれるとのこと。

研究チームが最初に行ったのは、老化に関わるこれらの遺伝子を正しく理解することでした。まずは老化や長寿に関連する遺伝子情報を提供するOpen Genesデータベースを用いて、老化の特徴に関連する1250個の遺伝子を絞り込みました。そしてこれらの遺伝子を、タンパク質が他のタンパク質と持つ50万を超える相互作用を網羅した包括的カタログにマッピングし、遺伝子の相互作用ネットワークを作りました。


作られたネットワークを分析した結果、老化に関連する遺伝子は相互作用ネットワークの特定の領域に位置しており、老化の特徴を中心に独自のモジュールを形成していることが判明しました。論文の筆頭著者であるノースイースタン大学の博士研究員ブナヤ・グロス氏は、「遺伝子がランダムに分布している場合、薬が特定の遺伝子に作用することは不可能です。しかし私たちは、老化に関わる遺伝子が非常に特定の領域、つまり特定の地域に集中していることを発見したため、その領域に作用する薬を見つけることができます」と述べています。

続いて研究チームは、薬剤や薬剤標的に関する情報が蓄積されているDrugBankデータベースから6442種類の薬剤リストを作成し、薬剤の治療標的がこれらの老化遺伝子ネットワークにどれだけ近いのかを調べました。疾患や健康問題を治療するために開発されてきた従来の薬剤は、特定の遺伝子やメカニズムに特異的な効果を発揮するように設計されてきました。しかし、新たな老化遺伝子ネットワークは、薬剤が老化の複数の特徴にまとめて与える影響を予測するために利用可能だとのこと。

さまざまな薬剤を調査したところ、すでに人間や動物を対象に寿命を延ばす可能性が示されている複数の薬剤が、老化遺伝子ネットワークに影響を与えることが確認されました。そのうちの1つが、人間を対象とした臨床試験で長寿効果の有無が検証されているアスピリンです。アスピリンは、加齢とともに低下する細胞間コミュニケーションや、体がエネルギーを必要とするタイミングの感知にも影響を与える可能性があると報告されています。

また、老化の特徴に影響を与える可能性がある新たな370種類の薬剤も特定されました。これらのうち14種類は寿命を延ばす可能性がある一方で、別の14種類は逆に老化を加速させてしまう可能性があるそうです。

寿命を延ばす可能性がある薬剤の1つが、鼻づまりを治療するための点鼻薬や充血を抑える点眼薬、肌の赤みを抑える外用クリームなどに含まれるオキシメタゾリンです。今回の研究ではオキシメタゾリンに細胞間コミュニケーションを改善する可能性があると示されたため、研究チームはこの予測を検証するためにさらなる実験を行っています。


ラースロー氏は、「この研究は老化の治療法を提供するものではなく、特定の薬剤が人間の寿命を延ばすことを証明するものでもありません。細胞や動物、そして最終的には人間で試験できる、実行可能な介入策への道筋を示すものです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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