サイエンス

たった3日間スマホの使用を制限するだけで脳の活動に変化が生じるという研究結果


スマートフォンは現代人にとって生活に欠かせないツールであり、仕事の連絡からプライベートの娯楽に至るまで広く使っているため、もはや必要があるから使っているのか習慣になっているから使っているのかすら曖昧です。一部では「スマートフォンの過度の使用が依存症につながるのではないか」と懸念されている中で、ドイツの研究チームはスマートフォンの使用を制限した人の脳活動がどのように変化するのかを調べる実験を行いました。

Effects of smartphone restriction on cue-related neural activity - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563225000573


Taking a break from your smartphone changes your brain, study finds
https://www.psypost.org/taking-a-break-from-your-smartphone-changes-your-brain-study-finds/

Giving Up Your Phone For Just 3 Days Can Reshape Your Brain Activity : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/giving-up-your-phone-for-just-3-days-can-reshape-your-brain-activity

これまでの研究では、スマートフォンを多く使用する人はあまり使用しない人と比較して、脳の構造や機能に多少の違いを示すことがわかっています。新たな研究では、スマートフォンの使用を制限することが脳の反応にどう影響するのかを調べることで、脳の違いが固定化されているのか変化するのかに焦点が当てられました。

論文の共著者であり、ハイデルベルク大学病院の一般精神科副科長を務めるロバート・ウルフ氏は、「スマートフォンは現代生活に欠かせないものとなっていますが、メンタルヘルスや脳機能に与える潜在的な影響についての懸念が高まっています。私たちは、特にスマートフォンの短期的な制限が、報酬処理と注意に関連する脳活動に及ぼす影響に興味を持っていました。デジタルウェルビーイングに関する議論が高まっていることから、スマートフォンの使用を一時的に控えることが、神経反応の測定可能な変化につながるかどうかを探りたいと考えたのです」と述べています。


実験には、定期的にスマートフォンを利用する18~30歳の若者25人が集められ、インターネットゲーム障害やその他の重大なメンタルヘルスの問題を抱えていないことが確認されました。その後、スマートフォンの使用習慣や渇望のレベル、気分を評価するアンケートに回答してもらい、血流の変化を検出して脳活動を測定する機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳をスキャンしました。

最初の脳スキャンの後、被験者は今後72時間にわたってスマートフォンの使用を大幅に制限するよう求められました。これはスマートフォンや代替となるデバイス、アプリの使用を最小限に抑え、重要な仕事や日常業務、密接な連絡先とのコミュニケーション以外のことを可能な限り控えることを意味しています。なお、この制限期間中、被験者のスマートフォン使用が直接監視されたわけではありませんでしたが、デバイス上でスマートフォンの使用や生活、健康状態に関する簡単なアンケートに毎日答えたとのこと。


72時間後、被験者は再びスマートフォンへの渇望のレベルや気分についてのアンケートに回答し、fMRIによる脳スキャンを受けました。

2回にわたる脳スキャンの最中に、被験者はさまざまな画像を見せられました。画像には花や船といった中立的なものに加え、画面の消えたスマートフォンや画面のついたスマートフォンなど、スマートフォンに対する反応を引き出すために設計されたものも含まれていました。これらの異なるタイプの画像を見た時の脳活動を、スマートフォンの使用制限前と後で比較することにより、使用制限がどのように脳活動へ影響したのかを評価できるというわけです。


分析の結果、スマートフォンの画像を見た時の被験者の脳活動が、画面のオン/オフにかかわらず使用制限の前後で変化していることが確認されました。具体的には、スマートフォンの使用を制限した後の脳スキャンでは、前帯状皮質側坐核と呼ばれる部位の活動が増加していることがわかりました。

前帯状皮質や側坐核は脳の報酬系にとって重要であり、多くの場合は渇望や衝動的な行動に関与しています。これらの脳領域の活動が増加したということは、使用制限後の被験者がスマートフォンを連想する画像を見ると脳が高揚したことを示しています。

また、画面のついたスマートフォンの画像を見せられた被験者の脳では、使用制限後に中前頭回上頭頂小葉など、注意や視覚処理などに関与する領域の活動が低下していることも判明。これは、スマートフォンの画像がもたらす注目や刺激が、スマートフォンの使用制限後に減ったことを示唆している可能性があるとのことです。

興味深いことに、一連の脳活動の変化は、報酬や依存症に関連する神経伝達物質であるドーパミンセロトニンを用いる脳のシステムに関連していることも示されました。一方でアンケート結果からは、72時間の使用制限の前後で、被験者の気分やスマートフォンへの渇望に大きな変化がみられませんでした。


ウルフ氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「私たちの研究は、スマートフォンから少し離れるだけでも、特に報酬と自制心に関する領域で脳活動に変化をもたらす可能性があることを示唆しています。これらの発見は、スマートフォンの過度の使用が、他の報酬行動と同様に脳機能に影響を与える可能性があることを示しています」と述べました。

今回の研究で確認された変化はあくまで神経的なものであり、大きな心理的影響を生み出すには長期的な使用制限や介入が必要になる可能性があります。研究チームは今後、スマートフォンの使用が脳活動に及ぼす長期的な影響を理解したいと考えているとのこと。

なお、研究チームは今回の研究について、スマートフォンを「悪者」として扱う意図はないと強調しています。ウルフ氏はPsyPostに、「私たちの研究はスマートフォンを否定的に描くものではなく、スマートフォンが脳に与える影響を理解するものです。テクノロジーには多くの利点がありますが、私たちの習慣が神経活動や幸福をどのように形成するのかを認識することが重要です。バランスを取ってデジタルデバイスを慎重に使用することが、テクノロジー全般、特にスマートフォンと健全な関係を育む鍵になるかもしれません」と述べました。

◆フォーラム開設中
本記事に関連するフォーラムをGIGAZINE公式Discordサーバーに設置しました。誰でも自由に書き込めるので、どしどしコメントしてください!Discordアカウントを持っていない場合は、アカウント作成手順解説記事を参考にアカウントを作成してみてください!

• Discord | "もはや現代人に欠かせないスマホ、1日何時間使ってる?" | GIGAZINE(ギガジン)
https://discord.com/channels/1037961069903216680/1346777937080352808

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
スマホのインターネットアクセスをブロックすることで幸福度が増して注意力も高まることが判明 - GIGAZINE

インターネットやスマートフォンから離れる「デジタル・デトックス」を行うためにするべき準備とは? - GIGAZINE

スマートフォンによるストレスに人々はどのように対処すればいいのか? - GIGAZINE

「スマートフォンの普及に伴ってヨーロッパの若者のメンタルヘルスが危機にひんしている」との指摘 - GIGAZINE

科学的に裏付けされた「生産性を爆上げするスマホとの付き合い方」の3つのポイント - GIGAZINE

スマホで退屈をまぎらわせることが退屈を増大させている - GIGAZINE

インターネットの使用は精神的健康に悪影響を及ぼさないことが研究で判明 - GIGAZINE

in モバイル,   サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article Research shows that limiting smartphone ….