【訃報】「ツイン・ピークス」「デューン/砂の惑星」などで知られるデヴィッド・リンチ監督が死去

by _titi

映画「イレイザーヘッド」「デューン/砂の惑星」やドラマ「ツイン・ピークス」で知られ、独特の世界観と映像美で「カルトの帝王」とも呼ばれた映画監督のデヴィッド・リンチ氏の死去が、2025年1月17日に発表されました。78歳でした。



David Lynch Dead: 'Blue Velvet,' 'Twin Peaks' Director Was 78
https://variety.com/2025/film/news/david-lynch-dead-director-blue-velvet-twin-peaks-1236276106/

リンチ氏は1946年にアメリカ合衆国モンタナ州に生まれました。父親が農務省の研究員だったことから、生後2カ月から幾度となく引っ越しを経験していたとのこと。学業は特に優秀というわけではなく、高校卒業後は絵画を学ぶべくワシントンD.C.のコーコラン・カレッジ・オブ・アート・アンド・ デザインに進学し、1964年にボストン美術館付属美術大学に転校しました。

その後、リンチ氏はオーストリアに2週間ほど留学。帰国後はペンシルベニア芸術科学アカデミーに入学し、同級生と結婚。治安の悪い工場地帯に一軒家を購入し、絵画制作に没頭しました。

リンチ氏はアカデミーでの課題として短編映画を作成し、これが高く評価されたことで映像制作にも興味を持つようになり、自宅の地下で最初の短編映画「Six Men Getting Sick (Six Times)」やアニメーションと実写を組み合わせた4分間の映像作品「アルファベット」を制作。また、アメリカ映画協会から助成金を受け取りながら、映像制作を続けました。

1970年、ハリウッドにある映画学校のAFIコンサバトリーに入学し、本格的に映画制作を学びます。そして、このAFIコンサバトリー在籍中に、自身の妻が妊娠・出産した時の経験を反映して制作した作品が「イレイザーヘッド」です。「イレイザーヘッド」はおよそ4年の歳月をかけて完成しましたが、難解な内容と衝撃的な映像からニューヨーク映画祭には上映を拒否されています。その後、ロサンゼルス映画祭で上映したところ、配給会社から気に入られ、全国の映画館で深夜上映されるに至りました。この深夜上映で、「イレイザーヘッド」はカルト的な人気を博します。

1980年、19世紀のイギリスに実在したジョゼフ・メリックの半生を描いた映画「エレファント・マン」を公開。この作品は高く評価され、アカデミー賞で監督賞や作品賞を含む8部門にノミネートされました。この時、「イレイザーヘッド」のファンだったジョージ・ルーカス氏から「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」の監督を打診されますが、リンチ氏は断っています。

1984年には同名のSF小説を映画化した「デューン/砂の惑星」が公開されますが、批評的にも商業的にも失敗に終わりました。その後に公開された映画「ブルーベルベット」は高く評価され、アカデミー監督賞にノミネートされました。そして、1990年にはテレビドラマ「ツイン・ピークス」を手がけます。この「ツイン・ピークス」は放送開始されると瞬く間に20％を超える視聴率を獲得し、世界中でブームになり、1992年には映画化もされています。

また、この「ツイン・ピークス」と並行して制作していた映画「ワイルド・アット・ハート」は、アメリカ国内ではそれほど高く評価されませんでしたが、1990年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得しました。

その後、「ロストハイウェイ」「ストレイト・ストーリー」「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」などの映画を監督。2006年には長編映画の監督からの引退を表明したものの映像制作は続け、2019年にはアカデミー名誉賞を受賞。2020年には、殺人事件の容疑者である猿に尋問を行うという内容の短編映画「ジャックは一体何をした？」がNetflixで公開され、話題となりました。

2024年、リンチ氏は肺気腫と診断されたことを公表しました。リンチ氏は「この肺気腫は長年の喫煙によるもので、今後は何らかの作品を直接監督することはできない」と述べており、制作中のプロジェクトも中断となりました。リンチ氏は「健康状態は良好で、引退する予定はない。既存のプロジェクトには可能な限り取り組んでいる」と発表していましたが、2025年1月16日にFacebookページで、リンチ氏が亡くなったことが発表されました。

リンチ氏の遺族は「リンチ氏がいなくなった今、世界には大きな穴があいています。しかし、彼は『穴ではなくドーナツに目を向けろ』とよく言っていました」とコメントしました。