サイエンス

「ネガティブな記憶」を薄める方法を科学者らが発見


ネガティブな記憶やトラウマ的なフラッシュバックを消すことは、精神衛生の改善につながる可能性があります。香港大学のTao Xia氏らの研究により、ポジティブな記憶を活性化させ上書きすることで、ネガティブな記憶を弱めるという手法が発見されました。

Aversive memories can be weakened during human sleep via the reactivation of positive interfering memories | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2400678121


Researchers Have Found a Way to Help Erase Bad Memories : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/researchers-have-found-a-way-to-help-erase-bad-memories

Xia氏らは37人の参加者に協力してもらい、まず、研究用に生成されたランダムな単語をネガティブな画像と結びつけ、一晩かけて記憶に定着させました。


次の日はランダムな単語のうち半分をポジティブな画像と結びつけ直し、また一晩かけて記憶に定着させました。その際、記憶形成に重要と考えられているノンレム睡眠時に、ランダムな単語の音声を流し、脳波を測定しました。すると、脳の感情的な記憶処理に関連するシータバンド活動が、音声に反応して急上昇することが確認されました。

その後、実験開始から3日目および5日目に調査を行ったところ、参加者はネガティブな画像を思い出しにくくなっていて、ポジティブな画像の方が頭に浮かびやすくなっていることがわかりました。


なお、あくまで実験は制御された環境下で行われたものである点には注意が必要だと指摘されています。たとえば、実験ではポジティブな画像として「穏やかな風景や笑顔の子どもたち」、ネガティブな画像として「ケガした人や危険な動物」が含まれるデータベースが使用されましたが、こうした画像を見ることと、実際にトラウマを負うような出来事に遭遇することは同じではなく、「本当のトラウマ」を上書きして消せるとは限らないためです。

ただ、「ポジティブな画像でネガティブな画像を上書きすることができた」という結果は出ていることから、研究を行ったXia氏らは「非侵襲的な睡眠介入は、イヤな記憶と感情的な反応を改善する可能性がある」と述べ、トラウマ的な記憶の改善への幅広い道を広くものだという見方を示しました。

ちなみに、悪夢をポジティブな内容に置き換える「イメージリハーサル療法」は存在しており、さらに、ポジティブなイメージと結びついた音を用いることで、さらに悪夢の頻度を減らせることが実証されています。

睡眠中に音を流すことで夢を操作し悪夢を見る頻度を減らせるという実験 - GIGAZINE

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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