サイエンス

脳の記憶力の低下は脳波のリズムのわずかな「ズレ」によって生じている可能性が判明


人は誰でも年齢を重ねると記憶力が低下するものですが、そのメカニズムには脳波の「ズレ」が関連していることが研究によって明らかにされています。

Older Adults' Forgetfulness Tied To Faulty Brain Rhythms In Sleep : Shots - Health News : NPR
https://www.npr.org/sections/health-shots/2017/12/18/571120472/older-adults-forgetfulness-tied-to-faulty-brain-rhythms-in-sleep

この研究を行ったのは、カリフォルニア大学バークレー校のマット・ウォーカー教授らによる研究チームです。発表された論文によると、人間の脳が短期記憶を長期記憶として定着させるプロセスには、脳の中で生みだされている複数の「脳波」のリズムが重要な鍵となっていることが示されています。そして、複数の脳波のリズムに「ズレ」があるとその機能が満足に動作せず、短期記憶が長期記憶にうまく移動されず、そのまま失われてしまっていることを示す結果が判明しています。

研究チームは2度の実験を行って脳波と記憶力の関連について調査しています。20人の若者を被験者とした最初の実験ではまず、被験者に単語のペアを120個覚えさせました。次に、頭部に脳波センサーを取り付けた状態で一晩眠りにつかせ、睡眠中の脳波を記録しました。そして翌朝、被験者に対して昨日覚えさせた単語のペアをいくつ覚えているかをテスト。そしてその結果を、一晩記録した脳波のデータと照らし合わせることで、記憶力と脳波の関連を調査しました。


その結果、脳波と記憶の間には一定の関連があることが判明したとのこと。特に研究チームが注目したのが、深い睡眠の時に現れるデルタ波睡眠紡錘波という2つの脳波です。デルタ波は周波数が1Hz~4Hzほどのゆっくりとしたもの、そして睡眠紡錘波は14Hz程度の比較的速い波で、この2つの脳波が同期する「リズム」が脳の記憶力に関連があるということを研究チームは浮き彫りにしています。

ウォーカー氏によると、この2つの脳波がきれいに同期している人は記憶力が高かったとのこと。また逆に、脳波のリズムにズレが生じている人は、翌朝の記憶力テストで良い結果を出せていなかったことが判明しています。


次に研究チームは、同じ調査を60歳から70歳の32人の被験者に対して実施。すると同様に、脳波と記憶力の間には関連があることがわかりました。論文執筆者であるランドルフ・ヘルドリック氏は、「脳波のタイミングが50ミリ秒早かったり、50ミリ秒遅かったりするだけで、脳の記憶保存メカニズムは機能しなくなります」と語っています。

研究チームはまた、加齢による記憶力の衰えが生じる原因についても発見しています。脳の中には深い睡眠を作り出す部位があり、この部位が加齢によって老化することで、脳波の同期がうまく取れない状態につながっていることが明らかになっています。また、この部位の老化が進んでいるほど、脳波にも悪い影響が及んでおり、さらにこの変化はアルツハイマー病を患っている人ほど顕著に見られるとのことです。

この結果はつまり、程度の差こそあれ人間は加齢による記憶力の減退からは逃れられないことを示しています。しかし一方で、人為的に脳波を整えることで、記憶力を復活させる可能性があるということもできます。ウォーカー氏のチームでは今後、脳に電極を取り付けて脳波のリズムをコントロールすることで、記憶力にどのような変化が現れるのかを調査する予定とのことです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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