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忘れるのは脳の正常な機能なので心配はいらないと専門家、心配すべき物忘れのラインはどこから?


リモコンやカギの場所がわからなくなったり、スマートフォンを手に取った瞬間に何を検索しようとしていたのか忘れてしまったりした経験がある人は少なくないはず。自分でも驚くような物忘れを経験すると不安になりますが、忘れることは脳がスペースを確保するための正常な働きなので問題はないとして、専門家が記憶と忘却の仕組みについて解説しました。

Why forgetting is a normal function of memory – and when to worry
https://theconversation.com/why-forgetting-is-a-normal-function-of-memory-and-when-to-worry-223284

◆記憶の仕組み
イギリス・ダーラム大学の心理学者であるアレクサンダー・イーストン教授によると、人が何かを記憶するのは「物事を学習(エンコード)し、それを脳に保管(記録)し、必要に応じて復元(検索)する」というコンピューターのようなプロセスを経るとのこと。この時、どのプロセスに問題が生じても記憶を思い出せなくなってしまう可能性があります。

そもそも、脳は入ってきた情報をすべて処理することができないので、情報の中から重要なもの、特に自分が関心を払っているものを取捨選択してエンコードします。飲み会や食事会の席で、他のことに気を取られている時に自己紹介されてもその人のことを覚えていないのは、これが理由です。


自己紹介されたのに覚えていないのはある意味では記憶障害と言えますが、これはまったく正常なことで、同様のことは実際によく起きているとイーストン氏は指摘します。

とはいえ、カギの在りかのように大切なことまで覚えられないのは問題です。カギの置き場所をあらかじめ決めておく習慣には、最後にカギを置いた場所をエンコードし損ねて忘れるのを回避する意味合いがあるというわけです。

記憶にはリハーサルも大切で、時々それを思い出さなければ忘れてしまいます。逆に、何度もリハーサルして繰り返し覚え直した記憶は、いつまでも残ります。


1880年代、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスは、無意味な音節を人に覚えてもらい、いつまでそれを記憶しているかを調べる実験を行いました。その結果、リハーサルしなければ大抵1日か2日で記憶が薄れてしまうことが確認されました。しかし、一定の間隔でリハーサルすると、1日以上覚えていられる音節の数が大幅に増加したとのことです。

リハーサルしなければすぐ忘れてしまう現象は、日常生活の中でも発生しています。例えば、車でスーパーに買い出しに行った際、店に入る時には車を止めた位置を覚えていますが、買わなくてはならないもののリハーサルで脳が忙しいと、店を出る時には車の場所を忘れてしまっているかもしれません。

このような物忘れには、具体的な情報を忘れても要点は覚えているという特徴があります。先ほどの例に置き換えると、車の正確な位置がぱっと思い出せなくても、駐車場のどの辺りに止めたのかは覚えているので、駐車場全体を歩き回って探さなくても済むということになります。


◆加齢の影響
年を取ると物忘れが激しくなるのは事実ですが、必ずしも問題があるとは限らないと、イーストンは述べています。なぜなら、長生きするということは経験を積み重ねるということなので、その分だけ記憶も増えるからです。

例えば、生涯に一度だけスペインのビーチでバカンスを過ごしたことがある人は、いつになってもそのことを鮮明に思い出せるはずです。しかし、毎年のようにスペインに旅行し、バルセロナを訪れたりリゾート地に行ったりしている人は、スペインでの思い出が最初のバカンスの時か、その次の旅行の時かを思い出すのが難しいかもしれません。


こうした記憶の干渉で情報が取り出しにくくなる現象は、PCに保存したファイルの場所がわからなくなるのに似ています。

文書ファイルをPCに保存する際、きちんとフォルダを分ける人もいれば、特定のフォルダに全部入れる人もいます。どちらの場合でも、ファイルが少ないうちはすぐに見つけることができますが、数が増えてくるとどのフォルダに入れたのかわからなくなったり、フォルダの中にあるファイルが多すぎてどれが目的のものかわからなくなったりしてしまいます。


物忘れが問題になることがある一方で、忘却が役立つこともあります。うつ病などで、ネガティブな出来事を忘れにくくなっているようなケースがその一例です。また、どんなに忘れたくても忘れられず、しばしば日常生活にも支障が出てしまう心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDといったケースもあります。

◆物忘れが決断力を損なうとは限らない
記事作成時点で81歳を迎えているアメリカのジョー・バイデン大統領は、エジプトとメキシコを混同してしまうなど、しばしばリーダーの資質が疑問視されることがありますが、物忘れが激しくなっても意思決定の能力が損なわれるわけではないとのこと。「高齢者は深い知識と優れた直感力を持っており、これが記憶の欠落を補うのに役立ちます」とイーストン氏は述べています。

その一方で、物忘れが大きな問題のサインになる場合があるのは確かで、例えば何度も同じ質問をするような場合は医師に相談した方がいいそうです。同様に、よく知っているはずの場所で道に迷ってしまうようなことがあれば、周囲の手がかりを使って移動する方法がわからなくなっている証拠です。また、家族と夕食をとっている際、会話の中で人の名前がなかなか出てこない程度ならまだしも、フォークとナイフの使い方を忘れるのは明らかな異常です。


イーストン氏は最後に、「要するに、自分の物忘れや他人の物忘れ自体は、それほど恐れるべきものではないということです。しかし、そのせいで生活に問題が起きている場合は、なにか尋常ではないことが起きているかもしれません」と締めくくりました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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