サイエンス

「視力が低下すると認知症を患うリスクが高くなる」傾向が3000人以上の高齢者を対象にした調査で示される


人間が持つ5つの感覚のうち、視覚は特に認知に対して大きな影響を及ぼすといわれており、物をはっきりと見る能力を失うと、思考や記憶に悪影響を及ぼすことが指摘されています。アメリカで約3000人の高齢者を対象に視力と認知能力について調査した研究論文が発表され、視力が低下すると認知症を患うリスクが高くなる傾向が示されました。

Objectively Measured Visual Impairment and Dementia Prevalence in Older Adults in the US | Ophthalmology | JAMA Ophthalmology | JAMA Network
https://doi.org/10.1001/jamaophthalmol.2023.2854


Study shows dementia more common in older adults with vision issues | Michigan Medicine
https://www.michiganmedicine.org/health-lab/study-shows-dementia-more-common-older-adults-vision-issues


この研究はミシガン大学の学術医療センターであるミシガン大学医学部ケロッグ眼科センターによって発表されたものです。研究の被験者は全員71歳以上の高齢者で、平均年齢は77歳でした。被験者は、近くのものと遠くのものを見る視力、背景に対してコントラストが弱い文字を読む能力、記憶力と思考能力を検査されました。また、アルツハイマー病を含めた認知障害の診断を含む健康情報の提供も指示されました。

調査の結果、被験者全体の12%強が認知症を患っていました。しかし、近くを見る視力に問題があるグループに限定すると、認知症を患っている割合は22%近くに達したとのこと。また、遠くを見る視力に軽度の問題がある人の19%、中程度あるいは重度の問題がある人の33%に認知症の兆候が見られました。遠くを見る視力に中程度あるいは重度の生涯がある人は、視力に問題がない人と比べて認知症になる可能性が72%高かったそうです。


同時に、背景に対してコントラストが弱い文字を読むのに苦労した人の場合、認知症の兆候が見られたのは26%でした。また、視力に複数の問題を抱える人は、正常な視力を持つ人に比べて認知症になる可能性が35%高かったそうです。

さらにこの研究では、白内障手術を受けて視力が回復した人の認知症発症率が時間の経過とともに低くなることにも言及しています。論文著者で眼科医のオリビア・キリーン氏やジョシュア・エールリッヒ氏は「目の健康を優先することが、視覚だけではなく全体的な健康と幸福の両方を最適化する鍵となる可能性があります。視覚の最適化が認知機能の低下を遅らせ、認知症のリスクを軽減するための実行可能な戦略であるには、さらなる試験が求められます」と述べています。


ジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼科研究所の研究員であるシーラ・ウェスト氏は「失明を予防したり治療したり、あるいは少なくとも進行を食い止めるためのケアサービスへのアクセスは、認知症への潜在的な影響とは別に価値のある目標であり、認知機能の低下を経験する人には特に重要である可能性があります」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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