脳の活動をリアルタイムに追跡し患者ごとに最適な電気刺激を与えてうつ病を克服しようとする研究


うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのなどの「心の病」を治療するために、脳に電気刺激を与える治療法が研究されています。オーストラリアの研究者は、患者の脳波をリアルタイムに検出し、その瞬間に最適な電気刺激を探求することで、うつ病を効果的に治療しようとしています。

Brain-stimulation trials get personal to lift depression
https://www.nature.com/articles/d41586-018-03864-4

オーストラリアのモナシュ大学のポール・フィッツジェラルド博士の研究チームは、頭に直接電極を取り付けることで脳の活動を監視して、電気刺激を与えることでニューロンの活動を調整してうつ病患者の精神状態を回復させる研究を進めています。このような脳に電気刺激を与える手法自体はありふれていると言えますが、フィッツジェラルド博士の研究は、検出した脳波に合わせて電気刺激を与えようとするものだとのこと。これまでの研究では、「被験者に応じた電気刺激を与える」という方法は採用されておらず、被験者たちには一律に同じ刺激が与えられていました。しかし、ある被験者に非常に効果的な電気刺激が別の被験者にはあまり効果的でないことは往々にしてあるそうで、被験者ごとに最適な電気刺激のパターンが探られています。

さらに、フィッツジェラルド博士の研究では、被験者の脳の活動を検出した脳波と「Transcranial Alternating Current Stimulation(tACS)」と呼ばれる脳波の変化への追随性の高い電気刺激発生装置を利用することで、被験者のそのときの脳波パターンに応じて電気刺激を変え、より高い効果を引き出そうとするリアルタイムの電気刺激治療が試みられているとのこと。浮き沈みの激しい躁鬱(そううつ)状態に合った刺激を探すことで、気分障害を緩和しようとしているそうです。


共同研究者のケイト・ホイ准教授は、うつ病患者個人個人のその時々の状態に合わせた「パーソナライズされた治療法」は、まだまだ研究が始まったばかりの分野ではあるものの、パラダイムシフトになる可能性を感じているとのこと。モナシュ大学の研究チームは、今後9カ月の間に約80人の健康な被験者で電気刺激治療の安全性と有効性を確認した後に、うつ病患者を被験者にしたテストを行う予定だそうです。

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