クリエイティブなマンネリから抜け出すための3つの型破りな戦略
創作やデザインなどに取り組んでいる際、アイデアがどうしても浮かばなかったり、作品がありきたりなものに見えてしまったりと、構想や作業が停滞してしまうことがあります。そのようなクリエイティブなマンネリから抜け出すための方法として、作家であり執筆や編集に関する助言を行うディレクション会社に務めるハーバート・ルイ氏が3つのヒントを提案しています。
Unconventional Strategies to Get Unstuck from a Creative Rut — Holloway
https://www.holloway.com/s/cd-three-exercises-for-getting-unstuck
創造性に行き詰ったクリエイターの多くは、「ひらめき(インスピレーション)」を求めます。しかし、20世紀後半から2020年ごろまで活躍した画家のチャック・クローズ氏は「インスピレーションを求めるのはアマチュアです。私たちはただ仕事に取り掛かるだけです。仕事を通して、ただアイデアを探してインスピレーションを求めている時には決して思わなかった他の可能性にぶつかり、新しい扉を開くことができます」とインタビューで述べました。また、パブロ・ピカソも「インスピレーションは存在しますが、すべては創作活動の中に見つかる」という言葉を残しています。
創作に行き詰った場合はインスピレーションを求める以外に何をすればいいのかというヒントを、ルイ氏は3つ提案しています。
・1:サイコロを転がす
創造性を切り開くためにルイ氏が提案する1つ目の方法は、「サイコロに委ねてみる」こと。ルイ氏は「コントロールを手放してカオスを導入することは、創造性を養うための鍵の1つです。自分の決断に閉塞(へいそく)や行き詰まりを感じたことがある場合は、創造的な仕事をサポートするために、チャンスへの扉をサイコロで開いてみてください」と語っています。
具体的には、執筆する手が止まった時、辞書をランダムに開いてみたり、ランダムな単語を生成するツールを使ったりして、何かしら自分では思いつきにくいような単語を発見してみます。近しい文学のテクニックとしてウリポという文学グループが実施する執筆方法があり、ウリポでは特定の文字を使わないで文章を書く「リポグラム」、とある文章の単語を辞書の7つ後ろの文字で置き換えていく「S+7」などを行うことで、語彙や表現力の自己増殖を促しています。
また、何かしらの選択で迷ったときには、ダイスロールやコイントスの他、他の人の意見を採用するなどするのでもOK。偶然は創造性において大きな役割を果たし、迷った時の決定方法になれるだけではなく、作品の可能性を広げることも可能です。
・2:結果を気にしない
多くの人はたいていの場合、物事をうまくやることで少しでも良い結果を目指しています。そうしなければ自分の状況が悪くなると思い込んでいますが、ルイ氏によると、このような信念はすべて「進歩は直線的である」という誤った過程に基づいているとのこと。
創造性のために「結果を気にしない」というヒントの例として、ルイ氏はノーベル賞受賞者のリチャード・ファインマンのエピソードを引用しています。ファインマンは学生時代に美術の授業で「紙を見ずに絵を描く」と指示されたことをしばしば思い出しているそうです。紙を見ずにキレイな線や上手な絵が描けるわけがないので、「上手く描こう」と意識しなかった結果、自分の作品に「まるでピカソのような強さがある」と気づきました。ファインマンは「『力を抜く』というのは『いい加減な絵を描く』という意味だと思っていましたが、実際は絵の仕上がりを気にせずにリラックスするという意味でした」と話しています。
本を執筆したい場合には、まずはノートに1文書いてみることが重要です。絵を描きたい場合には、まずスケッチの線を引いてみなければ始まりません。完成した結果のイメージにとらわれすぎると、それにふさわしい始まりが思い浮かばなかったり、理想から離れていく道中に絶望してしまったりします。しかし、あまり難しく考えず、まず思い浮かんだことに従って、やりたいと思ったことをやってみることが大事だとルイ氏は述べています。また、目標を「何かを終わらせる」ことにはせず、「何でもいいから始める」とすることも重要です。
・3:ドラフト、デモ、スケッチ
文章の執筆では、プロットや下書き、計画段階の書面などを「ドラフト」と呼ぶことが多いです。音楽やソフトウェアの未完成段階は「デモ」。絵やデザイン系の作品は、ラフ画やフレームワークなどを含めて「スケッチ」とされ、それぞれすべて最終的な作品の作成を支援します。
これらの予備作業は、制作過程でオマケとして生まれるものではなく、今作成中の作業を改善するために非常に重要です。ルイ氏によると、予備段階の作品は「結果に対する期待を低く保つ」ものであり、未完成で欠陥も多い段階のため「自己批判を抑え」、まだ間違いがあっても大丈夫だという「心理的安全性」をサポートしてくれるとのこと。
さらに、プロジェクトのそれぞれの段階やバージョンを一旦完成とみなして次の段階へ移ることはできますが、最終的に発表したりリリースした作品でさえも、全体として完成とみなす必要はありません。パブロ・ピカソは「キャンバスには『完成した』というものは存在せず、ただ1枚の絵画の様々な状態が存在するだけです」という言葉を残しています。「ドラフト、デモ、スケッチの意識」というのは、「作品は常に完成ではないため、完璧主義のような精神に押しつぶされなくてよい」という教えであるのと同時に、逆に言えば「まだ制作段階であることが明らかな作品であっても、人の眼に晒すことを怖がる必要はない」という教訓です。最も多くの人の共感を呼ぶ作品は、作者が究極だと宣言する作品ではないかもしれません。
ルイ氏の書籍「Creative Doing」には、この3つのヒントのほか、クリエイティブプロセスについてのガイドやメンタルモデル、実例などが収録されています。
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