サイエンス

クリエイティブな人は精神疾患になりやすいがマジシャンは一般人より精神疾患的な傾向が低い


ミュージシャンや作家、画家、コメディアンなどのクリエイティブな職業に就いている人は、統合失調症や双極性障害などの精神疾患を持っていることが多いといわれています。ところが、人前で魅力的な手品を見せる「マジシャン」は他のクリエイティブな職業や一般人と比較して、精神疾患的な傾向が低いことが新たな研究で判明しました。

Psychotic and autistic traits among magicians and their relationship with creative beliefs | BJPsych Open | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/bjpsych-open/article/psychotic-and-autistic-traits-among-magicians-and-their-relationship-with-creative-beliefs/A404241D8126664D0EDD1989288F431D


Creative minds are vulnerable to mental illness – but magicians escape the curse
https://theconversation.com/creative-minds-are-vulnerable-to-mental-illness-but-magicians-escape-the-curse-216319

Magicians' Minds Have One Surprising Thing in Common With Scientists', Study Discovers : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/magicians-minds-have-one-surprising-thing-in-common-with-scientists-study-discovers

これまでの研究から、創造性が必要とされる分野で活躍する人は双極性障害を発症する可能性が一般人よりも8%ほど高く、特に作家では121%も双極性障害のリスクが増大することがわかっています。また、アイスランドに住む8万6000人の遺伝子サンプルを分析した研究では、ビジュアルアーティスト、ダンサー、ミュージシャン、作家、俳優といったクリエイティブな仕事に就いている人は、統合失調症や双極性障害になる遺伝的リスクが高いことも示されています。

クリエイティブな人は精神的な病みやすさが他の人より高いのか? - GIGAZINE


イギリスのアベリストウィス大学で心理学講師を務めるギル・グリーングロス氏は、「臨床的に統合失調症と診断されていない人、たとえば精神疾患としての症状がそれほど強くない人でも、時々マインドワンダリングや無秩序な思考を経験します。これは集中する上では障害となりますが、創造性を育む上では有益かもしれません」と説明しています。つまり、精神疾患的な性質は時にクリエイティビティを増大させることがあり、結果としてメンタルヘルスに問題を抱える人がクリエイターとして成功する可能性があるというわけです。

作家やミュージシャンの他にも、人々を笑わせるコメディアンも統合失調症や双極性障害などにみられる特徴を持っていることが判明しています。その一方で、コメディアンと同様に人前で創造的なショーを見せるマジシャンについては、これまであまり研究されてこなかったとのこと。

そこでグリーングロス氏らの研究チームは、マジシャンの精神疾患的な性質を他のクリエイティブな集団や一般人と比較する研究を行いました。グリーングロス氏は、マジシャンは自分自身でショーを作って演じるという点でコメディアンと似ている一方、コメディアンはジョークが不発に終わっても挽回のチャンスがあるのとは異なり、マジシャンは1つの失敗も許されないシビアさがあると指摘。マジシャンには極めて高度な技術力が要求されるため、「このようなユニークな仕事環境とスキルセットが、マジシャンを研究対象として興味深いクリエイティブ集団としているのです」とグリーングロス氏は述べています。

研究チームは195人のマジシャンを対象に、自閉症や統合失調症にみられる特性の傾向を評価するアンケート調査を実施して、その結果を一般人やその他のクリエイティブな集団サンプルと比較しました。マジシャンは主にアメリカとイギリスで活躍しており、マジシャンとして活動した平均年数は35年で、クローズアップマジシャンやメンタリスト、カードマジックの専門家、大舞台でショーをするマジシャンなどその内訳は多様だったとのこと。


分析の結果、マジシャンは自閉症的な傾向や幻覚などの異常体験において、一般的な人々と同等のスコアを示しました。また、クリエイティブな人々でスコアが高い統合失調症的な指標(認知的混乱・内向的な快感消失・衝動的な不適合性)といった項目で、一般人よりも低いスコアを示すことがわかりました。研究チームによると、マジシャンの「統合失調症的プロファイル」は、他のクリエイティブな集団ではなく数学者や科学者のプロファイルに類似しているそうです。

マジシャンの精神疾患的な性質が他のクリエイティブな集団と異なる理由について、グリーングロス氏は「これらのマジシャンは集中力が非常に高く、社会不安のレベルが低く、異常な体験やゆがんだ思考、幻覚などの体験が少なかったのです。これらの特性はすべて、気を散らさず自分の技術に集中することが必要なマジシャンの仕事にとって非常に有利なものです」と述べています。


マジックのショーでは失敗せずに正確な動作を人前で行うことが重要であり、集中力と繰り返しの訓練が必要とされます。その一方、自らがゼロから新しいトリックを生み出さなくても、既存のマジックに調整を加えることで独創的なショーを作りだすことができます。

グリーングロス氏は、「私たちの研究は、クリエイティブな個人がすべて同じように作られているわけではなく、創造性と精神病理学の関連性は以前考えられていたよりも複雑であることを示しています」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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