クリエイティブな人々は「他にやることがない時間」を嫌がらない傾向がある

忙しいときや仕上げたいタスクがあるとき、「何もやらない時間」をもったいなく感じてしまうことがあります。しかし、クリエイティブな人ほど何もすることがない時間を嫌がらず、退屈を楽しんでいる傾向にあると研究で示されています。

Full article: Creative Minds at Rest: Creative Individuals are More Associative and Engaged with Their Idle Thoughts
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10400419.2023.2227477

Creative people enjoy idle time more than others | University of Arizona News
https://news.arizona.edu/story/creative-people-enjoy-idle-time-more-others

Creative People Do Something The Rest of Us Usually Avoid : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/creative-people-do-something-the-rest-of-us-usually-avoid

アメリカのアリゾナ大学、アーカンソー大学、ミネソタ大学の心理学者による共同研究では、「他に何もすることがない」という時間に創造性がどのように発揮されるのか理解するために、2つの調査を実施しました。アリゾナ大学の認知神経科学者で論文の主著者であるジェシカ・アンドリュース・ハンナ氏は、研究の意義について「心理学や神経科学では、人間の思考に関するほとんどの研究で、参加者に特定の方法で考えるように促すか、経験した思考について報告するよう求めるかのどちらかです。思考がどのように自然に生じ、促されずに時間の経過とともに展開するかについてはあまり知られていません。私たちの研究はここで役に立ちます」と語っています。

まず最初の研究では、90人のボランティアを順番にネット環境のない部屋に10分間待機させ、「輪ゴムが100本あったら、どのようにお金を稼ぐことができるか？」などの質問に対して、自由に浮かんだことを口に出してもらいました。固定観念にとらわれずに考える人の能力を測定する口頭ベースのテストは「発散的思考テスト」と呼ばれており、多くの場合、よい成績を見せる参加者ほど、「これを思い出した」「そういえば」などのフレーズで関連付けた思考を見せる傾向にあります。

最初の実験では、クリエイティブな人々は、携帯電話やインターネットなどの気を散らすものなしに一人でいるとき、より自分の考えに集中できることがわかりました。アリゾナ大学の心理学大学院生であるクエンティン・ラファエリ氏は「多くの参加者は一見無関係な思考の間を飛び回る傾向がありましたが、クリエイティブな人々はより連想的に考える兆候を示しました。また、参加者はアイデアの自由な流れを見つけたらより多く話し、『退屈な部屋でも、アイデアについて積極的に話している間は退屈しなかった』と最終的に評価しています」と述べています。

次に、オンライン上で2612人に対してアンケート調査が行われました。アンケートでは、クリエイティブな自覚があるかどうかと、新型コロナウイルスでロックダウンが実施された際に、「長い間拘束された時間がどのくらい退屈だったか」を聞き取っています。結果として、クリエイティブな自覚が高い人ほど、終わりの見えない長い期間のロックダウン中でも、退屈を感じた度合が低いことが判明しました。

論文では、「この研究結果は直感に近く、驚くべき発見とは言えません。しかし、この発見は何もしていない状態で人によって思考が違うということを強調しており、安静時の脳スキャンの比較等に依存する研究に影響を与える可能性があります」と指摘しています。またハンナ氏は、「なぜ人によって考え方が異なるのかを理解することで、健康と福祉を改善するための有望な介入につながる可能性があります。過重労働やスケジュール過多、そしていつでもやることが増えるデジタル機器への依存がますます高まる中、私たちは家庭や職場、学校でもっと工夫をして、ただ考え事をしながらリラックスする時間を増やす必要があると思います」と語っています。