ソフトウェア

NVIDIAの「CUDA」とIntelのGPUをつなぐソフトウェア「ZLUDA」がAMD向けとして転身復活するも今後の開発は絶望的


NVIDIAのコンピューティング向けGPU活用技術「CUDA」をIntel GPUで実行できるようにしたソフトウェア「ZLUDA」が復活しましたが、IntelではなくAMDのGPUで動作するよう改変が加えられていました。

AMD Quietly Funded A Drop-In CUDA Implementation Built On ROCm: It's Now Open-Source - Phoronix
https://www.phoronix.com/review/radeon-cuda-zluda

Software allows CUDA code to run on AMD and Intel GPUs without changes — ZLUDA is back but both companies ditched it, nixing future updates | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/pc-components/gpus/software-allows-cuda-code-to-run-on-amd-and-intel-gpus-without-changes-zluda-is-back-but-both-companies-ditched-it-nixing-future-updates

ZLUDAは2020年に初めて登場したソフトウェアです。ZLUDAはIntel GPUをCUDAと互換性のあるものにするという役割を担っていましたが、2021年2月にGitHubから削除されてしまいました。

開発者のAndrzej Janik氏はIntelで働きながらZLUDAを開発していた人物であり、ZLUDAを公式に採用するよう働きかけるなど裏でいろいろな活動を行ってきたとのことですが、Intelは「IntelのGPU上でCUDAアプリケーションを実行するビジネスケースはない」と反対し、IntelがZLUDAプロジェクトを評価する間はプロジェクトを非公開にするよう要請したとのこと。


その後、Janik氏はIntelを離れてAMDと接触し、ZLUDA開発に関する契約を結びました。しかしながらAMDもIntelと同様にZLUDAの評価に時間をかけ、ZLUDAを非公開にするよう要求。結局、AMDはIntelと同じ「AMDのGPU上でCUDAアプリケーションを実行するビジネスケースはない」との結論を下し、Janik氏との契約を解除しました。

契約が解除された結果、2024年に復活を果たしたZLUDAですが、IntelではなくAMDをサポートするように切り替わっています。ZLUDAはCUDAの対抗としてAMDが開発を進めているソフトウェア「ROCm」をベースにしており、AMDのRadeon GPUのみをサポート。さらにjanik氏は、「ZLUDAは私が個人的に興味を持っているワークロード(DLSS)を実行するためのアップデートを施す可能性があるだけ」と述べており、プロジェクトの開発をおおむね終了したことを示唆しています。

IntelとAMDが、自社のGPUをNVIDIAのCUDAエコシステムと互換性を持たせることに興味を持っていないことは明らかであり、むしろ真っ向勝負したいようだとテクノロジー系メディアのTom's Hardwareは指摘。ただ、ROCmやIntelの同型製品「oneAPI」はまだ新しく開発が遅れているものの、オープンソースであるという利点があると評価しました。


テクノロジー系メディアのPhoronixはZLUDA復活を歓迎し、Janik氏の協力の下で実際に使用してベンチマークテストを行っています。

PhoronixがLinux上で行ったベンチマーク結果は以下のようなもの。いくつかのRDNA2およびRDNA3対応のRadeonグラフィックカードをNVIDIA RTX 30/40シリーズグラフィックカードと比較して性能を検証したところ、BlenderなどでZLUDAを介したRadeonがNVIDIAのGPUに匹敵する性能を発揮することが示されたとのこと。


より負荷の高いClassroomシーンでは、Radeon RX 6000/7000シリーズのCUDAバックエンドでZLUDAを使用することで、ネイティブのRadeon HIPコードパスよりもわずかに速いパフォーマンスが得られたそうです。


Phoronixは「NVIDIA OptiXが完全にはサポートされておらず、PTXアセンブリコードを使用しないソフトウェアなどの一部の機能が現在処理されていないため、100%安全というわけではありません」と指摘しつつ、「大部分において、この実装は一人の開発者の努力にしては驚くほど有能」と評価。

注意点として、記事作成時点ではROCm 5.xのAPIのみを対象としており、新しくリリースされたROCm 6.xのリリースには対応していないなどいくつかの制限事項があることが挙げられています。また、ROCm 5.7シリーズが最新であるため、ROCm DKMSモジュールを使用しても、例えばUbuntu 22.04 LTS HWEスタックに搭載されているLinux 6.5カーネルではビルドできないといった点を上げ、今後サポートが継続されるようコミュニティの十分な支援があることが望ましい、と付け加えています。

Phoronixは「前述したデバイス選択の問題や、制限のためにOctaneBenchのようないくつかのソフトウェア・アプリケーションが動作しない問題以外の点ではうまく動作しています。どうやらAMDのビジネス上の決断でZLUDAのサポートを中止することになったようですが、残念でなりません。2024年現在、ROCm/HIPをネイティブにサポートするソフトウェアパッケージは数年前よりも増えているのですから、ある意味では理解できますが。長年にわたるNVIDIA CUDAの普及を考えると、CUDAをターゲットとしながらもメンテナンスされていない、または非推奨のレガシー・ソフトウェア、あるいは開発者リソースが不足しているためにAMD GPUをネイティブ・ターゲットとしないソフトウェアがいつまでも存在することは避けられないため、ZLUDAの取り組みにはまだ価値があります」と指摘し、ZLUDAの存在を「素晴らしい」と評価しました。

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in ソフトウェア, Posted by log1p_kr

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