電気自動車が重すぎるせいでガードレールをあっさり突き破ってしまう衝撃映像が公開される
ガソリン車よりも環境に優しいとして注目されている電気自動車(EV車)は、車載の大容量リチウムイオンバッテリーが非常に重たいため、同サイズのガソリン車と比べて200kg~500kgも車両重量が増える傾向があります。車両が重くなると衝突時のエネルギーも大きくなるとのことで、アメリカのネブラスカ大学リンカーン校と陸軍工兵司令部が、実際にEV車をガードレールに衝突させた実験動画を公開しています。
Nebraska experts weigh highway safety and electric vehicles | Nebraska Today | University of Nebraska–Lincoln
https://news.unl.edu/newsrooms/today/article/nebraska-experts-weigh-highway-safety-and-electric-vehicles/
Crash tests indicate nation's guardrail system can't handle heavy electric vehicles | AP News
https://apnews.com/article/electric-vehicles-crash-test-guardrails-nebraska-3ec299a7ad87d0f63a6dd9357f663fce
Watch a 7,000-LB Rivian R1T Destroy a Guardrail in Eyebrow-Raising Test
https://www.thedrive.com/news/rivian-r1t-destroys-guardrail-ev-safety-crash-test-video
ガードレールは車両が歩道や路肩に飛び出すのを防ぐために設けられているため、車が衝突してもそう簡単に突き破られないようになっています。しかし、EV車はバッテリーのせいで車両重量がガソリン車よりも重い傾向があり、重心も低くなっているため、既存のガードレールはEV車の暴走を防ぐのに十分ではない可能性があるとのこと。
そこでネブラスカ大学リンカーン校などの研究チームは、電気自動車メーカーのリヴィアンが2022年に発売した電動ピックアップトラック・Rivian R1Tをガードレールに衝突させる実験を行いました。実験の様子は以下の動画で確認できます。
EV Crash Test by UNL's Midwest Roadside Safety Facility - YouTube
画面奥から手前のガードレールに向かってR1Tが走ってきます。R1Tの重量は7100ポンド(約3.2トン)を超え、走行スピードは時速60マイル(約96km)です。一方、ガードレールは波形の鋼製で、上部の高さは31インチ(約78cm)あり、地中6インチ(約15cm)の鋼製支柱に固定されています。
ガードレールの直前に迫るR1T。
衝突した瞬間、ボンネットがひしゃげたものの車両の勢いはそのままにガードレールを突き破りました。
ほぼ減速しないまま、ガードレールの後ろにあったコンクリート製の防御壁に激突。
最初の防御壁をジャンプするように乗り越えて、2つ目の防御壁にぶつかってようやく止まりました。
最初の映像を見るとR1Tがガードレールに対して垂直に突っ込んだようにも見えますが、別のカメラで撮影した映像を確認すると、実際は斜めの角度から衝突していることがわかります。
ガードレールに斜めの角度でぶつかったR1Tは、ガードレールを突き破った後も進路を変えることなく、減速もほとんどせずに爆走していました。もし、歩行者がいる公道でこのような事故が起きたら、大惨事は避けられません。
ネブラスカ大学リンカーン校の中西部道路安全施設で助教を務めるコーディ・ストール氏は、「路上の安全システムのテストが非常に厳しいものになることはわかっていました。このシステムは、5000ポンド(約2.3トン)を超える車両に対処するようには作られていませんでした」「これまでのところ、EV車とガードレールの互換性は良好ではありません」と述べています。今後、公道を走るEV車の数が増えるにつれて歩道や路肩に突っ込む事故のリスクが高まるため、ストール氏はガードレールなどの防御設備の改善を進める必要があると主張しました。
なお、今回の実験ではR1Vの内部にはそれほど大きな損傷がなかったそうで、乗員が重傷を負う可能性は低いと研究チームは指摘しています。しかし、ガードレールは歩道や路肩の人間を保護するだけでなく、車両が道路外の危険な場所に突っ込まないようにする役目も担っています。たとえば、ガードレールの外側が崖になっていたり、険しい岩肌だったり、あるいは道が海や湖を渡る橋の上だったりした場合、EV車の内部が安全でも乗員が死亡するリスクがあるとのことです。
自動車産業における消費者保護を目的とする非営利団体・Center for Auto Safetyのエグゼクティブディレクターを務めるマイケル・ブルックス氏は、「ガードレールは最後の安全装置です。この実験で示されているのは、EV車の重量が本当に懸念されるということだと思います。7000ポンド(約3.1トン)級の大型EV車が続々登場しており、これは心配です」とコメントしました。
もちろん、車両重量が5000ポンドを超える車はEV車だけではなく、フォードF-350やシボレー・シルバラード2500HDなどのフルサイズピックアップトラックは、ガソリン車ですが7000ポンドを超えています。しかし、リチウムイオンバッテリーのせいで全体的にEV車の方が重い傾向があるのは確かで、すでに5000ポンドを超えている車両が多いのも事実です。
EV車がガードレールを突き破る重大事故を防ぐ方法のひとつが、ガードレールをより重い車両の衝突にも耐えられるように再設計することです。1990年代にピックアップトラックなどの従来より重い車が人気になった際も、ガードレールの強度を増すために再設計が行われました。ストール氏は、「現時点では、EV車が新車販売台数に占める割合は10%前後です。しかし、EVが販売され続けて普及するにつれて、この問題はより広く浸透していくでしょう。この問題への対応は急務です」と述べました。
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